基礎からわかる幼児教育・保育の無償化

幼児教育・保育の無償化が10月にスタートした。

消費税率の10%への引き上げで増える税収を活用し、子育て世帯の経済的な負担を軽減する。対象になる子ども、施設やサービスの範囲、必要な手続きなど、ポイントや注意点を整理する。

無償化の対象や範囲は、子どもの年齢や、子どもが通っている施設の種類などによって異なっている。

大前提として、3~5歳児は全員が無償化の対象になるが、0~2歳児は所得の少ない住民税非課税世帯に限られている。

非課税世帯の基準は、地域や家族の人数などによって異なる。

例えば、東京23区に住む夫と専業主婦、子ども1人の3人家族なら、所得が年126万円以下だと非課税世帯だ。

利用料が一律で無料になるのは、自治体の認可を受けた「認可保育所」、幼稚園と保育所が一体となった「認定こども園」、小規模保育、家庭的保育などの「地域型保育事業」だ。

ただ、保育で無料になるのは3歳になった後の4月からとなるため、今年度に3歳になった子どもの場合は、無料になるのが来春からになる。

一方、自治体の認可を受けていない「認可外施設」に通う子どもが無償化の対象となるためには、市区町村から「保育の必要性がある」と認められなければならない。

親の仕事や妊娠、親族らの介護といった理由がある場合に認定される。

利用料も一律無料ではなく、上限額までが無料になる。3~5歳児の場合は月3万7000円、非課税世帯の0~2歳児は月4万2000円が上限だ。

ベビーシッターやベビーホテル、病児保育、ファミリー・サポート・センターなども対象で、それぞれの利用料を合計し、上限額までは無料になる。超過した利用料については、自己負担になる。

認可外施設のうち、企業が国の補助を受けて、主に従業員向けに整備している「企業主導型保育施設」は、年齢ごとに決まっている標準的な利用料(月3万7100~2万3100円)を上限に無料になる。

さいたま市の認可保育所「うらわポポロ保育園」に、5歳と2歳の姉妹を通わせている会社員女性(29)は、「習い事にはお金がかかるので、無償化はとても助かる。長女の利用料が無料になるので、その浮いた分を使って、姉妹一緒に、ピアノ教室に通わせたいと思う」と喜んでいた。

幼稚園では、満3歳になった日から無償化の対象となるが、通う幼稚園の種類によって無料となる範囲は異なる。

国の「子ども・子育て支援新制度」が適用される公立園と一部の私立園は、利用料の上限が月2万5700円だった。

この額が無償化の上限となったため、公立園と一部の私立園は全額無料になった。このほかの私立園は上限額までが無料で、超えた分は自己負担となる。

また、独自の補助金を上乗せする自治体もあり、住む地域によって保護者の負担に差が生じる。

東京都新宿区では、新制度が適用されない私立園に通っていても月3万2000円までが無料となる。

幼稚園の標準的な教育時間(4時間)を超えて子どもを預かる「預かり保育」は、市区町村が「保育の必要性」を認定すれば、月1万1300円まで無料となる。

多くの園で預かり保育を行っており、文部科学省の2016年度調査によれば、全体の85%、私立園で97%が実施していた。

共働き世帯の増加で預かり保育の需要は増えており、園児の獲得に苦労している幼稚園の中には、預かり保育の拡充を目指す園もある。しかし、保育所と同様、地域によっては人手の確保が難しく、需要増に対応できない園もでてくるとみられる。

1日平均50人を預かる都内の幼稚園では、「預かり保育の希望者が増えれば、利用制限も考えなければならないだろう」と話す。

無償化で入所希望者が増加することで、政府が掲げる「2020年度末の待機児童ゼロ」の達成が遅れるとの懸念も出ている。

認可保育所などへの入所を希望しながら入れない待機児童は、今年4月時点で全国で1万6772人。保育の「受け皿」整備が進み、2年連続で減少した。

しかし、今後を不安視する自治体は少なくない。

4月時点で353人の待機児童がいた岡山市は、来年度の入所申込数が、見込み数よりも最大約4000人増える可能性があると試算した。

市の担当者は「利用希望は確実に増えるだろう。今年度末に市内の待機児童の解消を目指しているが、保育士不足もあり厳しい状況だ」と打ち明ける。

一方で、待機児童数には大きく影響しないという見方もある。

待機児童の約9割は0~2歳児が占めているが、無償化の対象になる0~2歳児は、住民税非課税世帯に限られている。このため、入所申込数の急増にはつながらないのではないかというものだ。

「保育園を考える親の会」の普光院(ふこういん)亜紀代表は「希望しても認可保育の利用ができない家庭がまだ多くある。無償化だけでなく、待機児童の解消や保育士の待遇改善に積極的に取り組むべきだ」と指摘する。

一律で利用料が無料になる認可施設に対し、認可外保育施設は種類が多く、一部の自治体では、無償化の対象にならない施設もあるので注意が必要だ。

認可外施設は、開設前に自治体の審査がある認可施設と違い、基本的に届け出だけで開設できる。

自治体が独自に補助する施設、補助金なしで運営する施設、深夜や宿泊に対応するベビーホテルなどがある。

さらに、認可外施設の中にも、保育士の配置数や面積などを定めた国の指導監督基準を満たしている施設と、満たしていない施設がある。こうした施設について、無償化の対象に含めることを不安視する声もある。

政府は当初、無償化の対象は、認可施設や幼稚園などに限る方向で検討していたが、待機児童が深刻な都市部では、やむを得ず認可外施設を利用する家庭も多いことから、経済的な支援が必要と判断。

指導監督基準を満たしていない施設も、10月から5年間に限って、無償化の対象とした。

ただし、市区町村は条例で、指導監督基準を満たしていない認可外施設やベビーシッターを無償化の対象から除外することもできる。すでに東京都杉並区や武蔵野市、埼玉県朝霞市など一部の自治体では条例を制定し、無償化の対象から外している。

保育施設などで子どもを亡くした遺族の団体「赤ちゃんの急死を考える会」の藤井真希さん(39)は「事故が起きた施設は国の基準を満たしていないケースが目立つ。

行政の指導監督が不十分な中、基準を守れない施設を無償化の対象にすることは反対」と話している。

無償化の対象となるために、施設によっては、親が手続きをする必要がある。

認可保育所や認定こども園、地域型保育事業、国の「子ども・子育て支援新制度」が適用される幼稚園は、特別な手続きは不要だ。

一方、幼稚園の預かり保育や認証保育所などの認可外保育施設、企業主導型保育施設の場合、市区町村から、「保育の必要性の認定」を受ける必要がある。自治体に申請するか、幼稚園を通じて認定を受ける。

過去に認可保育所に申し込んだ際、今でも有効な認定を受けている場合や、企業主導型施設に通う従業員の子どもの場合は、新たな認定は不要だ。

また、新制度が適用されない幼稚園の場合は、幼稚園を通じて、市区町村から無償化の対象になるための認定を受ける必要がある。

無償化といってもすべて無料になるわけではない。

認可保育所や認定こども園の場合、早朝や夕方以降の延長保育の利用料は、保護者の負担。

臨時で認可外の病児保育やベビーシッターなどを使っても、無償化の対象にはならない。

また、幼稚園も含めて実費で払うものに、遠足などの行事費や文房具などの教材費、送迎バス代、制服代などがある。

認可保育所などの3~5歳児の給食費は、これまでと支払い方が変わる。

ごはんなどの主食費を実費で施設に払うのは同じだが、おかずやおやつといった副食費も実費で払うことになった。

また、給食費を補助する自治体があるほか、所得が低い世帯などでは給食費が減額されるため、確認が必要だ。




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