気軽に墓参、増える「改葬」 「守りたい」思いを形に

加齢で体力的に厳しくなった墓参りを、より身近にできるようにと、墓を家の近くに「改葬」する人も出てきた。

改葬は一見、先祖代々の墓を継承しない選択とも取れそうだが、経験者に話を聞くと、先祖や亡くなった家族を手厚く供養したいとの思いがあってのことだった。

もうすぐ秋の彼岸。墓参をきっかけに、将来の墓について、考えてみては。

「夫が眠る墓のある霊園は、駅からのバスが1時間に1本しかなく、頻繁に行くことができなかった」

こう話すのは、7月に千葉県内の大規模霊園から都内に改葬した、東京都葛飾区の山崎秋子さん(85)=仮名。

墓の手入れが十分にできないことを気にしていた山崎さんは、定期的な清掃の代行などを依頼することなども考えた。

しかし、「(墓を)人まかせにするのは、かえってさびしい」と考え直し、自宅から電車と徒歩で10数分の町屋光明寺(東京都荒川区)の室内墓所「東京御廟」に墓を移した。

「近くなり、散歩するような感覚で夫のお墓に通えるようになった。頻繁にお参りできてうれしい」と山崎さん。暑さが厳しかったお盆も墓前を訪れ、穏やかに手を合わせた。

山崎さんのように、墓を別の場所に移すことを改葬といい、その数は年々増えている。

改葬は、もとの墓があった自治体に申請し改葬許可を取る必要がある。

その件数を集計した厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、墓の改葬数はこの20年間にじわりと増え、平成29年度は10万4493件と20年前の約1・5倍になった。

特にシニア層の関心は高く、仏事サービス会社「メモリアルアートの大野屋」(東京都新宿区)が今年3月に行った調査では、70代以上(285人)の12%が「改葬したことがある」と答えた。

毎年約60件の改葬を受け付ける町屋光明寺では、都内を含む首都圏からの改葬が地方からの改葬数の2倍近くにのぼる。

「遠方ではない都市部でも、駅から遠くにある霊園へはお参りするのに体力が必要。そんなことも都内や首都圏からの改葬理由にあがっている」と、同寺広報の和栗由美子さん。

とりわけ、真夏の霊園へ墓参は体力的にも厳しいとの声は根強い。

2年前、町屋光明寺の室内墓所に移した東京都板橋区の女性(73)は「暑い日に霊園でお墓の掃除をするのは正直なところ大変だった」と振り返った。

「よりお参りしやすいようにと、親の墓を自宅の近くに移す改葬は今後も増えそうだ」と話すのは、滋賀や東京に寺のある「佛心寺」の新田崇信(たかのぶ)副住職だ。

「お盆に墓参りをした人から、改葬した方がいいのか、との相談が目立った」という。頻繁に墓参りができないことで、木や草が伸びて手入れができないことを、気にかけている人は多いという。

「墓を別の場所に移すことを継承をないがしろにしているのでは、と見る向きもあるが、そうではない。自分の手で大事に墓を守りたいという思いを形にする方法の一つとして、改葬を考える人が増えているのだと思う」と新田さんは話した。

■「自宅から遠い」35.3%

墓が遠くて、思うようにお参りできない−。そんな墓への不満が、霊園・墓石販売会社、ヤシロ(大阪府箕面市)の調査で浮かび上がった。

調査は5〜6月、関西在住の40〜79歳の男女534人を対象に実施。

家族・先祖の墓に関する不満を複数回答で聞いたところ、最も多かったのが「自宅から遠い」の35・3%で、「墓を継承する人が少ない(いない)」の24・8%が続いた。

また、墓までの移動時間については約半数が「30分未満」が理想と答えたものの、実際に「30分未満」で通える人は27・9%にとどまり、3時間以上かかる人も19・7%いた。




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