空ペットボトルはどこへ? 高知発・再生ビジネス追跡記

1万3000本の塊に→福岡で業者が破砕→化学繊維原料

暑い夏、冷たい飲み物で喉を潤すのに欠かせないペットボトル。一方でプラスチックは海洋汚染などで世界的な問題となっている。私たちが飲んだ後はどこへ行くのか。ペットボトルの行く道を、高知発で追いかけた。

白くて分厚い大理石のような壁が目の前にそびえ立った。壁の正体はペットボトル。ぎゅっと押し固めた1メートル四方の塊が4段に積み重ねられている。

ここは高知県南国市奈路にあるリサイクル業者「大前田商店」の処理施設だ。

スーパーの店頭で回収されたペットボトルの多くが集められ、仕分けられ、専用の機械でプレスされる。塊一つ当たりが1万3千本。年間680トンが一つ一つの塊に変身するという。

■赤字同然の時も

17日午前8時。大前田商店で作られた塊は北九州市にあった。

20トントレーラーにびっしりと詰め込まれた48個の塊は、約400キロを走り、豊後水道を渡って中国系リサイクル業者「金峰(きんほう)貿易」の敷地内に積み上げられた。

荷台から塊を下ろすフォークリフトが走り回る中、担当者が「あまり近づかないで。一つ400キロもあるんで落ちてきたらひとたまりもないですよ」とカメラを構えて前のめりになる記者を制した。

大前田商店の前田薫社長(70)によると、現在の販売価格は400キロで数千円。「去年は赤字同然の時もあったが、今年は何とか黒字」という。

金峰貿易は2011年創業。この塊を主に中国に輸出してきた。

ところが昨年1月、汚染ごみの流入などによる環境破壊に悩んだ中国が、プラスチックごみの輸入を禁止。日本国内は価格低下で売り場を失った廃プラスチックがあふれ、業界に混乱を来した。

しかし、ごみは出続ける。

金峰貿易には、高知や広島の業者からペットボトルが入り続けた。この始末をどうするか。金峰貿易の採ったアイデアは、「ごみを洗って工業原料に変え、中国に輸出する」作戦。

自前での加工には大規模な設備投資がいるため、近隣にある中国系の業者に転売することとした。

中国禁輸 再生ビジネスに変化

■ふわふわの

「分業が大事。専門業者にはかないません」と話す金峰貿易の周龍社長(36)の案内で訪れたのは、北九州市の隣、中間市の「大発日本」。親会社は、中国の大手化学繊維メーカーだ。

薄暗い建屋の中、1センチほどに砕かれたペットボトル片がざーっと音をたてて機械からはき出されていた。

あの四角い塊とは見違えるほどキラキラとしていて、かき氷のよう。特殊技術で洗浄、破砕したペットボトル片は「Aフレーク」と呼ばれ、再生原料の中でも最高品質だという。

林斉前(りんさいぜん)社長(45)が「きれいでしょう? 私たちはごみの中から価値を見いだすんですよ。ここまで加工すれば立派な原料として中国に輸出できます」と自慢げに両手ですくい上げた。このフレークから、親会社がふわふわの繊維をつくりだし、世界各国の企業に販売する。

「日本の『ユニクロ』との取引もありますよ」

■もっともっと

大発日本は今年6月に稼働したばかり。中国のプラごみ輸入禁止を「ビジネスチャンス」ととらえ、日本に進出した。林社長は「汚れていても、異物が交じっていても、うちの技術力があれば問題ないよ。もっともっと持ってきて」と鼻息が荒い。

廃棄物ビジネスに長年携わってきた前田社長は「相場が安いときにこそ攻めなければ。中国ショックの後しばらくは苦しかったが、大発さんの日本進出はありがたかった」と明かす。

「プラスチック自体に罪はない。世界的に問題になった今こそ、一人一人が捨てた先を意識して、リサイクルできるように分別してほしい」

ペットボトルは繊維の他、卵パックやトレーなどにも生まれ変わる。半面、高知県内でどれだけ使われ、どれだけ再利用されているかという全体像は行政も把握していない。

見渡す限りの壁壁壁…。「ここにあるのもごく一部にすぎない」と林社長。私たちの生活の残骸のすさまじさに衝撃を受けながら“ペットボトルロード”を後にした。




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