夏バテなのに「キノコ」「ワカメ」を欲しがる理由 健康志向で脚光を浴びるのは、この3社

連日の記録的な猛暑で、どうしても食欲は減退しがち。食材選びにはいっそう気を配りたい時期が続く。そんな悩ましい夏場の食品売り場では、ちょっとした”異変”が起きている。

キュウリやナスが高騰し手が届きにくくなった一方、安値圏のヘルシー食材である「キノコ」類が手頃で調理も簡単と、想定以上に売れ行きを伸ばしているからだ。

また中食・外食市場では、三陸沿岸で採れたてを冷凍した冷凍「ワカメ」が旬の食材として、人気を博している。

これらを手がけるのが、ホクト、雪国まいたけ、理研ビタミンの主要3社。

数年前から地道な販促キャンペーンを続け、人口減で縮小する市場に立ち向かっている。その企業努力が今期、ついに報われたかもしれない。

健康意識の高まりで落ちないキノコの需要

首都圏を中心に118店舗のディスカウント・スーパーマーケット(DS)を展開するオーケー。本社ビルの1階にあるみなとみらい店(神奈川県)の青果売り場では、キノコ類が棚に整然と陳列されている。

同社の高信司・青果バイヤーによれば「キノコは夏場にかけて需要が落ちるので、陳列棚を狭めて値段を下げるのが業界の常套手段だった。ところが、健康意識の高まりを受け、ウチはキノコの陳列スペースを狭めたりしない」と語る。

各家庭では気温が高くなりすぎると、火を通す手料理をする回数が減ってしまう。

「炒め物野菜の需要は減るが、キノコは調理の仕方に汎用性があるので、需要が落ちない。例えばアルミホイルで包んで蒸らせば温野菜となり、冷製パスタの具材として手軽に味わえる」(高信氏)。

オーケーは食品メーカーと組んだ夏場のメニュー提案で、積極的にキノコの活用をすすめていく。

「追い風が吹いている」

キノコ専業大手であるホクトの森正博・専務営業本部長はほくほく顔だ。

月次売上高(速報)は、2019年4月から7月に4カ月連続で、前年同月比と会社計画比ともに、実績を上回っているからだ。

同社の今2020年3月期の第1四半期は、売上高が157億円と前年同期比14%増で、営業赤字6億円と前年同期17億円から大きく減少するという、好スタートを切った。

数量も価格もマイタケが前年を上回る状況で推移したのが大きい。ただ売上高の水準は不需要期なので依然低く、採算上では赤字が残ってしまった。

ホクトの主力品であるブナシメジの市場価格推移を見ると、2016年度から2018年度まで、4月から8月は価格が底ばい状態にある。

秋冬の需要期にならないと高値で取引されないのが毎年のパターンだ。

森氏は「野菜相場が堅調だったので、当社のブナシメジは前年比で価格が約1割アップした」とするが、それでも高止まりする人件費や運送費の負担増を吸収するのがやっと。第2四半期も数量は伸びが期待できるものの、価格は抑えられるので、営業赤字は避けられまい。

ホクトは今期、通期で営業利益27億円を会社計画として公表しているが、これを上回る可能性もある。

需要期である秋・冬にブナシメジなどの既存製品に加え、昨年9月に発売した初のシイタケ製品「生どんこ」の出荷をいかに増やしいくかにかかっている。

ところでホクトは、通年で安定的にキノコを消費する、食習慣キャンペーン「菌活プロジェクト」を展開している。

合計14億円近くの広告宣伝費と販促費を年間で投入。不需要期はその重点シーズンだ。7月から8月の2カ月、TOKYO FMなどで冠番組を放送、NEXCO東日本とタイアップし、一部のPAやSAでキノコメニューを振る舞っている。

食事制限せずにダイエット効果も?

そのホクトの第1四半期を牽引したのはマイタケだが、このマイタケで市場シェア5割を超える専業が雪国まいたけだ。

同社は経営混乱から、アメリカの大手投資ファンドであるベインキャピタルに経営支援を仰ぎ、2015年6月、ベインキャピタルの傘下ファンドを通じて株を100%保有され、東証2部上場は廃止された。以降は経営再建に傾注し、その動静が聞こえてこなくなった。

それでも2019年3月期は、売上高313億円で営業利益45億円と、営業利益率10%超を記録。

ライバルで東証1部上場のホクトが前期、売上高701億円、営業利益35億円だったことから、いかに雪国まいたけの儲けが大きいかがわかろう。

雪国まいたけのマーケティング部、長南史香氏によると、「マイタケは数年来ブームが続いており、店頭価格は他社商品より多少高い」とみる。

ブームが到来したきっかけは、地上派のテレビ番組で「食事制限をせずにダイエット効果がある」などと、有名タレントが減量に取り組んだ企画だった。

そもそもキノコ類は食物繊維が豊富なので、便秘に効果的とされる。

またマイタケだけに含まれる成分の「MDフラクション」のおかげで、免疫力の機能を高める可能性が広まり、感染症や夏バテに効くヘルシー食材として、幅広い消費者層に評判が広まった。

食品スーパーなどの小売店は「テレビの情報番組に取り上げられると好反応を示してくれる」(長南氏)。

イトーヨーカドーはPB品である「顔が見える食品。」で多彩なキノコ類を扱う。

そのうちマイタケの全量は雪国まいたけが供給している。

ほかにも、イオングループやライフコーポレーションに対して専用商品を卸しており、外資系の個人会員向け卸売りのコストコには500gの大容量パックを出荷している。

雪国まいたけの快進撃は止まらない。2018年8月には滋賀県に西日本の出荷拠点を開設したが、需要に追いつかないほど稼働状況がいい。

大株主のベインキャピタルは2017年9月、コメ卸最大手の神明に対し、雪国まいたけの間接出資持分の49%を譲渡し、神明の経営基盤を生かすという戦略に打って出た。

2019年3月にはタカラバイオのキノコ事業を譲り受け、商品開発力の向上に役立てる戦法に出た。かつてベインキャピタルは、早ければ2020年中に雪国まいたけを再上場させたいと意欲を示したことがあり、がぜん目が離せない企業となっている。

卵焼きやお好み焼きにも混ぜ合わせる

テレビの情報番組で健康面の効能が取り上げられ、今シーズンに売れ行き好調な食材は、実はキノコだけではない。ワカメもだ。

NHKは2018年6月に健康クイズ番組『ガッテン』で、「魅惑の食材わかめ!未知との遭遇」と題した番組を放映した。

波やうねりの強い海で成長するワカメは、過酷な場所でも簡単に折れないよう、アルギン酸という食物繊維で体全体を守っている。その特別な成分を調理で引き出すコツを伝授する内容である。

卵焼きやお好み焼きにワカメを混ぜ合わせるなど、番組内で紹介されるや、その後もさまざまなメディアにおいて、みそ汁や酢の物といった定番以外のメニュー提案が続いている。

ワカメ摂取の効能は、整腸作用や血糖値上昇抑制、免疫力アップなど、国内の学会で学術論文が出されている。

そうしたワカメの健康イメージの盛り上がりを、事業の活性化に結び付けようと躍起なのが、乾燥ワカメ事業をルーツとし、「ふえるわかめちゃん」「青じそドレッシング」で家庭用市場を切り開いた、東証1部上場の理研ビタミンだ。

生ワカメはキノコ類と同じく、乾燥すれば保存できる日本の伝統食材。

2013年以降、6年連続でワカメ事業の実績は2ケタ成長しており、生産・出荷の規模拡大を目標に掲げている。家庭用にとどまらず、業務用は岩手県大船渡工場に個別で急速冷凍機を整備、冷凍ワカメを通じ、中食・外食市場や老人向け施設、学校、病院などの給食市場の拡販に力を注ぐ。

ただし、ここ数年、需要増加に国内のワカメ収穫量が追いつかない異常事態が発生し、原料価格上昇という厳しい事業環境が続いている。

国内でワカメの主要な産地と言えば、その7割が「三陸ワカメ」と称される、岩手県や宮城県の沿岸だ。

収穫される肉厚のワカメに関わる漁業関係者は、東日本大震災で打撃を受けた。

国内収穫量を見ると、大震災が起きた2011年の落ち込みの大きさがわかる。あれから8年が経ったが、ワカメ漁業関係者の高齢化と後継者不足は、深刻さの度合いが増している。

理研ビタミンの黒川大成・海藻事業推進室長は「冷凍の三陸産丸採りワカメはアマゾンに出品しており、家庭用の需要でも手応えを感じる」と力を込める。もっとも2019年は海水温の上昇で、三陸産は収穫期の春先に不作となる事態に陥った。

国内で消費されるワカメの市場規模は、もともと年間400億〜470億円で推移しており、30年間も大きくは拡大しない。うち国内生産の比率は2018年数量ベースで約16%にすぎず、中国からの輸入で同71%、残り13%は韓国からの輸入で占められている。

産地判別の認証マークで食の安全も訴え

大震災時でも輸入品を拡大して対応したが、実際、輸入品には環境問題や採算性で難がある。

理研ビタミンでは「ふえるわかめちゃん」に産地判別検査合格の認証マークを使用し、食の安全に関心が高い消費者に応える品質保証体制を強化した。

ワカメ事業のリーディングカンパニーを自負する理研ビタミンは「収穫量が減ってしまうと原料高は続く」(黒川氏)という危機感を抱く。手をこまねいてはいられないと、供給の安定化に向けた国内プロジェクトを立ち上げた。

種をつくって生産量を拡大すべく、宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区には基礎研究施設を2年前に設立。

官民協働で早生、晩生の優良種苗の開発に挑む。

並行して三陸以外の鳴門、瀬戸内、北海道のワカメ生産地のブランド育成による、ワカメ漁業の活性化にも取り組んでいる。

ホクトと雪国まいたけは不需要期の夏場にかけ、抑え気味の価格を打破しようと、マイタケブームにあやかろうとする。

理研ビタミンは養殖の生産性向上プロジェクトを立ち上げ、急速冷凍製品を中・外食市場に売り込む。消費者の健康志向の高まりを味方につけ、キノコ・ワカメの主要3社は厳しい市場環境をはねのけようと必死だ。

著者:古庄 英一





https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/business/toyokeizai-296230.html