水道法改正「知らない」63.1%だが水道の疲弊は進む

水道事業の民間運営に対して懸念

2018年12月、水道法が改正されたが、その認知度は低い。

ミツカン 水の文化センターが「水にかんする生活意識調査」の中で「水道法改正」について聞いている(東京、大阪、中京圏の1500人にアンケート)。

水道法改正について、63.1%が「知らない」。

「聞いたことはあるが内容までは知らない」が28.6%、「聞いたことがあり内容まで知っている」は8.3%だった。

さらに「水道の民間運営がやりやすくなったことを知っているか」については、「知らない」が69.3%だった。

一方で、「水道事業が民間運営になった場合、どうなると思うか」に対しては、「水の安定共有維持」、「水道管の老朽化対策」、「水道料金」、「水の安全性と質の確保」、「サービスの地域格差」の5つの項目で、「悪くなる」が「よくなる」を上まわった。

なかでもサービスの地域格差や水道料金については、「悪くなる」が多かった。水道法改正や、民間運営がやりやすくなったことを知らなくても、水道事業の民間運営に対して懸念点をもっている人が一定数いる。

水道法は現在パブリックコメント募集中

2018年12月6日に可決、成立した改正水道法は、今年10月1日に施行される。

施行を前に、現在以下のようなパブリックコメントが募集されている。

'''「水道施設の技術的基準を定める省令の一部を改正する省令(案)」に関する御意見の募集について'''

'''「水道法施行規則の一部を改正する省令(案)」に関する御意見の募集について'''

水道法改正では前述のアンケート項目のとおり、「水道の民間運営がやりやすくなった」。

自治体が浄水施設の所有権を保持しながら、運営権を民間企業に譲渡できるコンセッション方式を導入できるようになる。

これまでの業務委託とコンセッションの違いは何か。

業務委託では、責任は自治体にある。水道料金は自治体に入り、自治体から業務委託量に応じた金額が企業に支払われる。

コンセッションでは、施設の運営権が、民間企業に売却される。事実上の運営責任は企業に移り、水道料金は民間企業に入る。

ポイントとなるのが、自治体と企業の契約と、自治体の管理監督責任だ。

自治体職員は契約のプロではない。また、契約が長期におよぶため、現場の技術や業務がわかる職員が少なくなると管理監督のポイントがわかりにくくなったり、企業の運営や契約変更の提案などが適切か否かを判断することは難しくなる。

そうしたことから「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」が作成され、こちらもパブリックコメントが募集されている。

'''「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」に関する御意見の募集について'''

コンセッション導入に積極的な宮城県では、「みやぎ型管理運営方式」が考えられた。

これは、上水、工業用水、下水の計9事業の運営権を一括して民間企業に譲渡するものだ。今年9月の県議会に実施に向けた条例案が提出され、2020年秋に事業者選定、2021年度スタートという計画だ。

浜松市の鈴木康友市長は1月31日、上水道へのコンセッション導入延期を表明した。ただ、コンセッションが水道事業の維持のために有効という考えに変わりはなく、「社会全体でコンセッションへの理解が高まるまで延期するが、凍結や断念ではない」としている。

民間が運営しても、しなくても値上げ待ったなし

水道法改正理由は、経営の厳しくなった水道事業を維持していくこと。

経営が厳しくなった理由は3つ。

1つは、水道事業者の料金収入が減っている。節水型の機器が普及し、人口が減ったことで社会全体の水使用量が減った。

2つは、水道管や浄水場などの施設が古くなり、これから更新費用がかかる。

そして3つは、水道事業に携わる職員数が減っている。

1980年に全国に7万6000人いた水道職員は、2014年には4万7000人になった。人員削減が事業経費削減に寄与したと言われるが、水道事業の経費で多くを占めるのは設備費用だから本来は設備縮小こそが有効だろう。水道職員が減ったことで、水道事業から専門性の高い技術が失われつつある。

水道料金は図のようなしくみで決まる。

これから老朽化した施設の更新にコストがかかったり、人口が減ったりすると、水道料金は上がる。

これは民間が運営しても、民間が運営しなくても同様だ。水道事業は自治体ごとに行われているケースがほとんどで、それぞれ料金は違う。

『人口減少時代の水道料金はどうなるのか? 全国推計並びに報告書』(新日本監査法人 2018年)によると、給水人口の少ない自治体ほど料金改定率が高くなり、水道料金の格差は現在の9.1倍から19.6倍になるとされている。

コンセッション導入すると財政的優遇。一方、小規模事業者は・・・

改正水道法では、水道事業を隣接するいくつかの自治体と共同して行う広域化、人口が減少していく社会に合わせて水道施設を減らしていく適正規模化を推進している。

水道法では資産台帳整備が義務付けられた。

台帳は今後の事業計画策定、広域化計画、ダウンサイジングに欠かせないものだが、はたしてすべての水道事業者が作成できるのか。

水道職員が減ったことで、水道事業から専門性の高い技術が失われつつあること。たとえば、有収率を上げようという意識や漏水箇所を見つける技術も水道事業者によってばらつきがある。災害時などの深刻な事態に即応できない状況も生まれている。

北海道羅臼町にはこの8年間、水道職員が1人しかいなかった。漏水対応などを地元業者の協力のもと1人で行ってきた。プライベートの旅行などでも道外へは出なかったそうだ。

しかし、日々の業務に追われ、台帳を作成する余力はない。

台帳がつくられていない自治体は羅臼町だけではない。

厚労省の調査では全国の約4割の自治体が正確な図面をもっておらず、小規模事業者はこの割合は多くなる。民間のコンサルタントの活用がうながされているが、事業が赤字で費用の捻出が難しいケースもある。つまり、基盤強化の第一歩を踏み出すためには人と金の手当が必要だ。

コンセッションを採用した自治体には起業債償還にかかる特例措置(繰り上げ償還補償金免除)が認められている。コンセッションを採用するのは比較的規模の大きい水道事業者で経営的に疲弊しているとは言えないが、導入のインセンティブを与えられている。なぜ財務省が特例措置を認めたのか理解に苦しむ。

一方で小さな水道事業者に自助努力を求める。このままでは基盤強化は掛け声だけになる。

橋本淳司

水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表

水ジャーナリスト、「水と人の未来を語るWEBマガジン"aqua-sphere"」編集長として水問題や解決方法を発信。アクアスフィア・水教育研究所を設立し、自治体・学校・企業・NPO・NGOと連携しながら、水リテラシーの普及活動(国や自治体への政策提言やサポート、子どもや市民を対象とする講演活動、啓発活動のプロデュース)を行う。近著に『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る 水ジャーナリストの20年』(文研出版)、『水がなくなる日』(産業編集センター)など。




https://news.yahoo.co.jp/byline/hashimotojunji/20190729-00136108/