指が異様に長い太古の鳥を発見、新種、前代未聞

現代の鳥に見られない特徴、恐竜時代に発達した理由は?

9900万年前のミャンマーにタイムトラベルできるなら、エナンティオルニス類と呼ばれる鳥が森で羽ばたいているのを見られるだろう。

現生の鳥類に近い、歯を持つ鳥たちだ。その中に、今のスズメのような鳥がいるのが目に入るかもしれない。だが、その足の指は奇妙に長い。こうした適応は、絶滅した鳥にも現生の鳥にも見つかったことがない。

7月11日付で学術誌「Current Biology」に発表された論文によると、新種の鳥「エレクトロルニス・チェングアンギ(Elektorornis chenguangi)」は、6グラム足らずの琥珀に閉じ込められた状態で見つかった。

樹液が死骸の上に流れ出たらしく、化石化した樹脂の塊の中に、右の後ろ脚の一部が保存されている。時間経過にともなう腐敗の兆候はあるものの、化石は鳥の足の構造を保っていた。

中でも目を引くのが、飛び抜けて長い中趾(鳥のいわゆる中指)だ。

もし人間の手がエレクトロルニスの足と同じ比率だった場合、中指は人差し指の1.6倍の長さになる。このずいぶん奇妙な比率にどういう機能があるのか、今のところ科学者たちは首をかしげている。

「最も興味深いのは、これがもはや存在しない特徴だという点です。現在では9000種から1万8000種の鳥が生息しているというのに」。論文の著者で、中国科学院古脊椎動物・古人類研究所(IVPP)の古生物学者ジンマイ・オコナー氏はこう語っている。

しかも、エレクトロルニスは琥珀に閉じ込められた化石から記載された、鳥としては初めての属だ。

鳥の死骸が入っている琥珀はほかにも見つかっているが、不完全だったり、科学者たちが属レベルで特定できるほど明瞭ではなかったりした。ところが、エレクトロルニスは違った。その足はほかの種とははっきり違い、分類を明らかにするのに十分だった。

もう1人の著者で、中国地質大学の古生物学者リダ・シン氏は、「琥珀の研究にとって非常に重要です」とEメールで語った。

ナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラーでもあるシン氏は、エレクトロルニスを「新たな媒体から現れたまったく新しい動物」と呼んでいる。

足の指に触覚機能か

エレクトロルニスの足の指がこれほど長かった理由について、興味深い手がかりが1つある。

琥珀に閉じ込められた足には、周囲の皮膚と羽毛が少し残っていたが、その中に、足のうろこに生えたフィラメント状の繊維が見られたのだ。

現生の鳥にも同じような見た目の構造があり、動物のひげのように機能して、飛んでいる昆虫や気流のわずかな変化を感じ取るのに役立っている。指の用途が何であれ、エレクトロルニスはこの部位の触覚に頼っていたのだろう。

エレクトロルニスはその特徴的な指で樹皮の下の虫を探っていたというのが、今のところ最も有力な見方だ。

マダガスカル島のキツネザル、アイアイは長い指で木の中から幼虫などを素早く取り出すが、その小鳥バージョンに近い。

「かなり単純化した推測なのは承知ですが、正直なところ、今はこの足の化石しかないので」とオコナー氏は話す。「触覚機能がある羽毛はとても多く、この琥珀の鳥も、触覚のある剛毛のような不可解な羽毛を足全体に生やしていることと、長い指を考え合わせると、この2つが組み合わさり、アイアイによく似た何らかの採集に使われていたと考えるのは理にかなっています」

カナダ、トロントにあるロイヤル・オンタリオ博物館で鳥類学を担当する次席学芸員、サンティアゴ・クララムント氏は、妥当な解釈だとコメントしている。現生の鳥の中にも、腐った木をつついて虫を探すものがいる。こうした鳥が使うのは特殊なくちばしだ。

「今回記載された原始的な鳥には歯がありました。また、口吻は今の鳥とは違い、もっとトカゲに近い形でした」とクララムント氏。「おそらく、非常に細長くカーブした口吻を発達させるという選択肢がこの太古の鳥には不可能だったので、長い指は生態学的には同じ機能をもっていたのかもしれません」

今後、さらに化石が見つかれば、エレクトロルニスがどう生活していたか明らかにするのに役立つだろう。

例えばクララムント氏は、この鳥の頭骨、尾骨、胸骨をぜひ見たいと考えている。もし見つかれば、どんな風に餌を食べていたのか、単に木の枝に止まるだけでなく、幹を登ることができたのかを示す助けになるはずだ。

しかし今のところ、足だけでも十分に興味深い。一方、オコナー氏は、琥珀に入った未発表の不思議な発見がまだあると示唆している。

「現在の鳥は多様ですが、指が長いというこの独特な形態は利用されていません。間もなく発表予定の他の琥珀標本によって、この点は実に面白くなるでしょう」とオコナー氏は話す。

ミャンマーの琥珀にからむ事情

エレクトロルニスが入っている琥珀は、中国、騰衝にある琥珀博物館に収蔵されている。エナンティオルニス類のひな鳥を閉じ込めた琥珀も所有する博物館だ。

今回記載された新種の種名chenguangiは、この博物館の学芸員の1人、グァン・チェン氏に敬意を表してつけられた。

シン氏によると、チェン氏がこの化石のことを初めて知ったのは2014年。ある鉱山作業員から、変わった動物の足を見せられた。当初、作業員はこの長い足の指を大昔のトカゲだろうと考えていた。現地のトカゲの足に似ていたためだ。だがチェン氏が見てみると、足の指が4本しかなかった。そこで、シン氏に連絡が入った。

「その化石には本当に驚かされました。間違いなく鳥の爪でしたから」

ミャンマー北部カチン州のフーコン渓谷では、少なくとも2000年にわたって琥珀が採掘されている。

およそ9900万年前、この地方には樹液を分泌する木が茂った海岸林があった。どろどろした液体はやがて固まり、生態系を構成していたたくさんの生物たちの痕跡を閉じ込めた。

これまで見つかったものには、羽毛恐竜や鳥、ヘビ、さまざまな無脊椎動物、さらには陸に打ち上げられた海のアンモナイトまである。

この10年で、ミャンマーの琥珀に保存された化石の発見は爆発的に増えた。それに大きく貢献しているのが、シン氏の働きだ。

しかし、ミャンマーの琥珀の研究が活発化するにつれ、この分野での倫理的な監視も強くなっている。

数十年にわたり、カチンの少数民族は独立を求めてミャンマー軍と激しく戦っているが、琥珀を含むこの地域の鉱物資源が、紛争の資金援助になっていると伝えられているのだ。

法的には、化石をミャンマーから無許可で輸出するのは違法だが、琥珀の原石は宝石用原石に分類されるため、中国西部の市場に頻繁に持ち出されている。

そこで琥珀はカットされて磨かれ、売買される。研究者、ディーラー、コレクターはこうした市場を歩き回り、科学的価値の大きな発見がないか目を光らせている。

中には、貴重な琥珀を求めて年間数十万ドルも費やす者さえいる。科学機関に落ち着く化石もあるが、そうでなければ個人のコレクションとなる。持ち主が琥珀の科学調査に賛同するかどうかは定かではない。

騰衝にある琥珀博物館は、その中間の存在だ。

同館を運営する騰衝市琥珀協会は、大きな琥珀店も2つ経営している。

1つはミャンマー、カチン州の州都ミッチーナーにあり、もう1つが中国西部の騰衝市だ。シン氏によれば、学芸員のチェン氏は、特に貴重な琥珀標本を収めた私立博物館を持っているほか、いくつかの琥珀鉱床を自ら所有しているという。

シン氏は、チェン氏が運営しているような博物館が、個人のコレクションをもっと公にする後押しになってほしいと願っている。

上海の霊珀閣琥珀博物館など、他の私設博物館は一般的にあまり知られておらず、外部の科学者も招待がない限り訪れることができない。

「話せば長くなりますが、簡単に言えば、こうした大規模な個人コレクターを正式なものにすることに力を注いでいます」。シン氏はEメールでこう語った。「これは好機なのです」




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