【商業捕鯨再開】食文化復活の道は険しい

日本の商業捕鯨が今月から、31年ぶりに再開された。

早速、ミンククジラなどが水揚げされ、各地に出荷された。漁や売れ行きは好調とも報じられているが、新たな販売ルートの確保や収益拡大のめどは立っていない。不安を抱えたままの「船出」と言える。

商業捕鯨は国際捕鯨委員会(IWC)が1982年、一時停止を決定。日本も88年にやめたが、再開に向けて科学的データを収集するため南極海や北西太平洋で調査捕鯨を続けてきた。

IWC内では捕鯨支持国と反捕鯨国が長年対立。近年は保護一辺倒の主張が強く、日本は商業捕鯨の再開は困難と判断。昨年12月、IWCからの脱退と今年7月からの商業捕鯨再開を表明していた。

再開に当たって日本は、操業域を領海と排他的経済水域(EEZ)に限定。南極海などでは行わない。

2020年以降の年間捕獲枠の上限もミンククジラ171頭、ニタリクジラ187頭、イワシクジラ25頭の計383頭とした。これはIWCで採択された方式で算出し、いずれも推定資源量の1%以下という。

このため政府は、過剰な日本批判は起きていないとみる。それでもIWC脱退によって、日本はこれまで積み上げてきた国際協調をなげうったことになる。それに見合う成果が得られるかどうかは、疑問と言わざるを得ない。

鯨肉の国内消費量は1962年度に約23万トンに上ったが、2017年度は約3千トンにまで落ち込んだ。伝統の食文化を復活させるには、供給量と消費の拡大が欠かせない。

しかし捕獲枠の年間上限は、最近の調査捕鯨で捕獲された600頭前後の6割程度にとどまる。これで需要を喚起できるのか。できなければ鯨肉離れは一段と進むだろう。捕鯨事業者にしても、あまりに捕獲枠が少ないと採算は取りづらい。

水産庁は将来的に操業域の拡大や、サイズが大きいナガスクジラなど捕獲対象種を広げることも視野に入れている。

しかしそうすると、反捕鯨国を中心に国際社会からの反発が予想される。資源保護と捕鯨産業の発展との、難しいかじ取りが求められよう。

本県ではホエールウオッチング(観鯨)への影響も心配される。

捕獲対象の中で頭数が最も多いニタリクジラは、高知観鯨の人気者だ。商業捕鯨の運営会社は「今年は高知沖で捕る予定はない。来年以降も観鯨関係者らと事前協議する」としているが、本当に影響は出ないのか。注視していく必要があろう。

調査捕鯨は国が計画し、税金で実施してきた。商業捕鯨の関係者からも「採算ベースに乗らなければ引き続き国の支援を求めたい」との声が上がっている。しかし、商業捕鯨に際限なく税金を投入するわけにはいかない。採算面で独り立ちできなければ撤退するのが筋である。

国民の支持や共感なしには、どんな産業も成り立たない。




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