日本式投票はガラパゴス 他国の主流は「記号式」

有権者が投票用紙に候補者の名前を手書きする――。

投票所ではごく当たり前になっている光景ですが、実は先進国では珍しいことです。「先生」たちには励みになっているようですが、こうした投票方式は専門家から「ガラパゴス化している」と指摘され、無効票などを生む背景にもなっています。なぜこのようなことになっているのでしょうか。

日本独特の「自書式」投票

「選挙人は、投票用紙に候補者1人の氏名を自書して、これを投票箱に入れなければならない」。公職選挙法46条は、国政選挙の投票についてこう記載しています(参院の比例代表は政党名なども認められています)。あるベテラン議員は、こう言います。「名前を書いてもらえるのは政治家冥利に尽きる」

しかし、公益財団法人・明るい選挙推進協会によると「国政レベルでの大規模な選挙で自書式を採用しているのは、先進国の中では日本だけ」(「くらしの中の選挙」より)。他の国々では、投票用紙に印を付ける「記号式」が主流です。

地方選では記号式も

自書式の場合、投票用紙に候補者の氏名を印刷する必要がないので、立候補の届け出前から用紙を準備できるといったメリットがあります。

半面、名前の書き間違えで投票が無効になるといったデメリットもあります。候補者があえて漢字でなく、平仮名で届け出をするのは、自書式の制度が影響しているようです。

実は日本でも1994年に公選法が改正され、記号式が認められた時期がありました。

しかし、自民党から「政治家は名前を書いてもらうのが仕事」といった声が高まり、一度も国政選挙で導入されないまま、95年に自書式に戻りました。

地方選挙では自治体が条例を制定すれば記号式の採用は可能で、千葉県八千代市など一部の自治体が首長選で採用しています。

なぜ、記号式が日本で浸透しないのでしょうか。

選挙制度に詳しい立命館大の小松浩教授は「政治家の側に、記号式投票用紙の場合、候補者名の並び順で先頭が有利、後ろは不利という認識がある。諸外国ではこんな議論は聞いたことがなく、日本はガラパゴス化している」と指摘します。

「投票用紙」は紙ではない!

投票の方法だけではなく、投票に使われる用紙も日本は独特なようです。

実は紙ではなく特殊なフィルム(ポリプロピレン樹脂)でできています。破れにくく水にも強いという優れものです。

選挙用品を手掛ける「ムサシ」(東京都中央区)と、合成紙メーカー「ユポ・コーポレーション」(千代田区)が共同開発し、1989年に発売されました。ムサシによると、当初は地方選挙で使われ、2012年の衆院選で沖縄県が採用して全都道府県に広がったといいます。今回の参院選でも全国で使われています。

有権者は、投票箱に投票用紙を入れる際、自分が書いた候補者の名前が見えないように折りたたむのが一般的です。この用紙だと、投票箱の中で自然に開くため、選挙管理委員会の人たちは1枚ずつ開く作業が省けて、開票時間が短縮できるのです。

開発に着手したのは1980年。最初は、表面がツルツルで鉛筆が滑って文字が書きにくく、計数機にもうまく反応しなかったといいます。試行錯誤の末、9年かかって販売にこぎつけました。迅速な開票作業は、日本の技術者が支えているのです。




https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190714-00010001-maiv-pol