【特集】前立腺がんの治療継続を!高い技術持つ専門医がいるのに病院側が認めないのはなぜ?

治療を望む患者がいて治療ができる専門医師もいるのに病院側が認めない、そんな前代未聞の事態が大学病院で起きています。2月には患者らが病院に治療の継続を求め、裁判所に仮処分を申し立てました。病院の中で何が起きているのでしょうか。

患者から絶大の信頼、『岡本メソッド』とは

「単純に岡本先生の治療を継続してほしい」
「どうしても岡本先生ということでみんな集まっている」

冷たい雨が降りしきるなか、滋賀医科大学附属病院の前で声をあげているのは前立腺がんの患者たち。

皆、岡本医師による治療の継続を求めている。滋賀医科大学附属病院は、滋賀県内で唯一の大学病院として重症患者の治療を担っている。

なかでも、前立腺がんでは岡本圭生医師が行う「小線源治療」という特殊な放射線治療が評判を呼び、4年前に発行された書籍では院長もこの治療を病院の目玉の1つとして紹介していた。

『特色ある放射線治療で全国から患者さんが集まっています』(書籍より)

前立腺は、くるみのような大きさで膀胱や直腸のすぐ近くにある。小線源治療は前立腺に放射線を出す小さな線源・カプセルを直接埋め込み細胞を死滅させる治療法で、尿道などに放射線があたらないよう熟練した技術が必要だ。

カプセルは直径0.8ミリ、長さは約5ミリ。岡本医師はがんが再発する可能性が高い「高リスク」と呼ばれる患者にもカプセルを安全に埋め込むなど“岡本メソッド”と呼ばれる独自の方法を編み出し、1000人以上の治療にあたってきた。

「照射する放射線の線量が私の方法では格段に高い。(それでも)副作用が出ないようにするのが“岡本メソッド”」(滋賀医科大学 岡本圭生医師)

「高リスク」の患者の非再発率、つまり再発しなかった人は治療後5年で96パーセントと、極めて高い治療成績をあげてきたという。治療を受けた患者の信頼も厚い。

「3泊4日の入院で患者さんも苦痛がないし、知らんうちに30分くらいで治療は終わっている。(Q.今は異常なし?)異常なし」(岡本医師の治療を受けた男性)

にもかかわらず、病院はホームページで岡本医師の小線源治療を今年6月までとする、と公表した。一体なぜ、なのか。

病院側から説明なく「講座閉鎖」と「治療終了」

岡本医師の高い技術に注目した企業が大学に年間2000万円を寄付し、4年前に岡本医師は寄附講座の特任教授に就任した。研究者はこの資金から治療や研究を行い給与も支払われる仕組みで、診療で得た報酬は病院側に入る。

評判の良い講座は病院にとってもメリットが大きいため存続期間を延長していくことが多いが、大学側はおととし7月に寄付講座の規定を「最長5年」と改定。岡本医師の講座を今年12月で閉鎖し、治療は6月末で打ち切ると公表した。

Q.6月治療終了について何らかの説明は?

「ないですよ。経過観察期間が必要だからという話。経過観察期間はなくても何とかなる」

Q.ぎりぎりまで治療できる?

「少なくとも11月まではできる。抗弁はしていったけど、全くなしのつぶて。大学に決定権はあると」(岡本圭生医師)

未経験の医師の治療を止めたことがきっかけ?

大学はなぜ、方針転換したのだろうか。実は2015年、岡本医師とは別のA医師が複数の患者に小線源治療を行おうとしていた。ところがA医師は小線源治療の経験はなく、これを知った岡本医師は「安全上問題がある」と学長に訴え治療を止めさせたという。

この時の患者の多くはその後、岡本医師の治療を受けた。未経験の医師が治療しようとしていたことを知った患者たちも病院に説明を求めたが、納得できる説明が得られなかったためA医師らを説明義務違反だとして損害賠償を求めている。

「なぜ(未経験と)説明しなかったのか。その根本が許せない。その病院の体質が許されない」(A医師らを提訴している)

岡本医師は、この問題を公にしたくないと考えた大学側が自分を追い出すために寄付講座の規定を変え治療中止を一方的に決めたのではないか、と訴える。

「(最初に)学長に進言しに行くときが一番苦しみがあって、これをしたら最終的にこういう方向に、今のような状況になるだろうなと薄々は感じていた。間違っているものは止めないといけない。人の命を守るために、間違った組織の命令に背いてでも人の命を守るのは当然。それができないなら医者なんてやるなと」(岡本圭生医師)

「“患者”がないがしろにされている、極めて異常な形態」

そして2月、岡本医師と患者ら7人は6月以降も治療が行えるよう裁判所に仮処分を申請した。訴えているのは全国から集まった、がんが再発する可能性の高い「高リスク」の患者たちだ。

「必死になって調べ、たどり着いたのが岡本医師の治療」(東京在住の男性)
「滋賀医大病院は患者の生きる選択を邪魔しないでください」(兵庫県の男性)

一つの治療をめぐって大学病院で起きた一連の問題に、弁護士は患者軽視だと指摘する。

「どうしてこういうことになったのか、病院の内実はわからないが、勢力争いあるかもしれないが…。ただ“患者”がないがしろにされている、極めて異常な形態」(原告代理人 井戸謙一弁護士)

滋賀医大は岡本医師の治療が終了した後は、泌尿器科が中心となって一般的な小線源治療を行う予定だという。また、患者たちが未経験だと訴えているA医師について「講習なども受けており治療は安全にできる」などとして、裁判で全面的に争う姿勢だ。

同じ治療とはいえ、岡本医師の技術に信頼を寄せる患者は大学の方針に不信感を拭えない。

「患者が訴えているのわかっていて、7月からは(違う医師で)やりますと。我々の訴えが全く無視されているということ。どんどん推し進めるというのが、ある種怖い」(岡本医師の治療を希望する患者)

岡本医師の治療を受けた患者や家族ら1000人からなる患者会は約2万8000人分の治療継続を求める署名を集め、国や国会議員にも働きかけ始めている。命を救うべき病院が患者が受けたい治療を受ける権利を奪わないでほしい。患者たちの切なる願いは届くだろうか。




https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190322-10000001-mbsnews-l27