アポ電シナリオ巧妙化 通話するほど情報漏れる

ニセ電話が現金にとどまらず、命をも奪う事件に凶悪化した。子や警察官らを装い、事前に現金の有無や家族構成を探る「アポ電(アポイントメント電話)」の後に強盗が入る事件が、東京都内で一月以降、三件発生。江東区では高齢の女性が殺害された。アポ電の「シナリオ」は巧妙化しており、警視庁犯罪抑止対策本部は「玄関だけでなく、電話にも『鍵』を」と留守番電話の活用などを呼び掛ける。 

「あー、もしもし。今日、宅急便きてない?」「桃いっぱいもらったから、送っておいた」

昨年七月、東京都渋谷区の七十~八十代の夫婦宅に、息子を装う男から電話があった。男は「明日届くと思うから、受け取れる?」と夫婦の行動をさりげなく確認。だませそうな相手とみたのか、翌日には「職場の金を使っちゃった」と切り出した。この夫婦はニセ電話と見破り、詐欺被害を免れた。警視庁は実際の音声をサイト=QRコード=で公開している。

アポ電は自然な会話で情報を聞き出す。「一千万円ぐらい用意できる?」「五十万円ならすぐに出せるけど…」などのやりとりで、現金があるかどうかを探る。警察官を装い「大事なお話ですので、ご家族の方って今、一緒にいらっしゃいますか?」と、家族ら相談相手が近くにいないかどうかを探る例もある。

こうした電話は詐欺に使われていたが、「たんす預金」を狙った強盗にも悪用されるようになった。

「話せば話すほど、情報は漏れていく。電話に出ないことが最も効果的」と警視庁の担当者は強調する。自宅にいても留守番電話に設定し、不審な電話かどうかを確かめれば、相手のペースに乗らずに済む。

「犯罪被害防止のため、会話内容が自動録音されます」などのメッセージが流れる自動通話録音機も、犯人側は証拠が残るのを嫌がるので有効。無料で貸し出している自治体もある。

ニセ電話詐欺のアポ電は昨年、警視庁に通報があっただけで約三万四千六百件に上った。前年より約八千七百件増え、二年前の約二・三倍に達した。

◆江東・女性強殺 鍵を開けさせ侵入か

東京都江東区のマンションで住人の加藤邦子さん(80)が殺害された事件で、加藤さん宅を当日午前に訪ねた友人男性が「玄関を出た際、施錠された」という趣旨の説明をしていることが、捜査関係者への取材で分かった。警視庁捜査一課は、友人が部屋を出た後、犯人が何らかの人物を装い、加藤さんに玄関を開けさせて押し入ったとみている。

加藤さんは二月中旬「お金はありますかと尋ねる電話があった」とこの友人に話しており、一課は「アポ電」だったとみている。

渋谷区で二月一日、高齢夫婦宅に男三人が押し入り、約四百万円を奪った強盗事件でも、数日前に息子を装ったアポ電があり、三人組が警察官を装って夫婦宅の呼び鈴を鳴らし、玄関を開けさせていた。一課は同一グループの犯行の疑いがあるとみている。

一課によると、江東区の事件前、友人は二月二十八日午前十時半ごろまで加藤さん宅にいた。十一時ごろにはマンションのカメラに黒いフード、白いマスクに手袋を着けた、男とみられる三人が写っていた。

加藤さん宅の室内の壁に取り付けられたモニター付きインターホンは引きはがされ、見つかっていない。犯人がモニターの画像を残さない目的で持ち去った疑いがある。

ダイニングキッチンのテーブルの上には、包丁が残されていた。一課は、この包丁で室内の固定電話の受話器のコードを切断したり、加藤さんを脅したりしたとみている。




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