検便も内視鏡も恥ずかしい? 「大腸がん」が女性のがん死亡数1位の背景

がんの治療で重要なのが、早期発見。医師たちはがんを見つけるために、どんな検診を受けるのか。医師専用コミュニティーサイト「MedPeer(メドピア)」の協力のもと、がん診療経験のある医師540人にアンケートを実施。

さらに『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』の著者、近藤慎太郎医師にも話を聞き、最新のがん検診に迫った。

都内在住の会社員男性(44)は、喫煙歴は20年を超える。毎年、会社指定の成人検診を受けている。妻子のことを考えれば、自分のがんリスクは気になる。受けている肺がん検診は、胸部エックス線だ。

「特に不調もないので、いまのところいいかなと思っています」(男性)

肺がんの検査は、胸部エックス線が一般的だ。しかし、胸部エックス線では、「肺がんを確実に見つけることは難しい」と近藤医師は言う。

「胸部エックス線は肺がんの死亡率を30〜60%下げると言われていますが、がんを見落とす恐れがあります。肺の中心部を肺門部、周辺を肺野部といいますが、血管や心臓などほかの臓器と重なる肺門部は死角になりやすいんです」

こうした見解は、医師の間では常識のようだ。アンケートによると、肺がん検査に胸部エックス線のみを選択した医師はわずか11%で、喀痰(かくたん)細胞診との併用を合わせても18%に留まる。

逆に、胸部CT(コンピューター断層撮影)ないしは低線量CT、もしくはそれに加えて喀痰細胞診を選択する層が80%にものぼった。

国立がん研究センターが公開するがん情報サービスによると、肺がんの患者数は日本のがん患者全体の中で3番目に多く、死亡数は最も多い7万4千人(2016年)にのぼる。

肺がんのリスクは、喫煙者ほど高い。特に喫煙者の場合、胸部エックス線だけで安心するべきではないという。

「喫煙でできやすいのが、エックス線で見つけにくい肺門部のがんです。肺野部のがんより肺門部のがんは悪性度が高く、がんになった場合の5年生存率が低い。喫煙者は痰の検査も行うことが望ましい。肺門部のがんは痰にがん細胞が混ざりやすいからです」(近藤医師)

早期発見に万全を期すなら?

「胸部CTは、エックス線には映らない早期のがんも発見できます。アメリカの臨床試験では、CTが肺がんの死亡率を20%下げたと報告されています」

ただし、健康な人がむやみやたらにCTを受けることは勧めないという。

「CTに過剰診断を懸念する声もあります。また、CTを受け続けることによる医療被曝の問題もあり、50歳未満には推奨できないといわれています」

医療被曝に特に気をつけるべきは、乳がんの家族歴がある人だという。

「特殊な遺伝子変異がある可能性があるからです。この遺伝子変異があって30歳未満の場合、医療被曝で乳がんのリスクが高まると報告されています」

ある女性(65)は、数年前の自治体検診の便潜血検査で1度陽性反応が出た。だが、痔の既往症もあったので、「たまたまだろう」と気にしていなかった。数年後、貧血を起こし体調が悪いと病院に行くと、進行した大腸がんと診断された──。

女性のがん死亡数1位が、大腸がんだ。大腸がんは、ごくまれなケースを除き、10年、20年といった時間をかけてゆっくりと進行する。早期発見できれば予後はいい。それなのに、先の女性のように進行した状態で見つかる人があまりに多いという。

男性の大腸がん死亡数が3位なのに女性が1位の理由の一つは、がん発症リスクの上がる中高年の女性の多くが、専業主婦などで成人検診を定期的に受ける機会がなかったこと。

「便を提出するという検診内容が羞恥を誘い、抵抗があるという人もいるかもしれません」(近藤医師)

一般的ながん検診とされる便潜血検査の有用性はどれくらいなのか。

「大腸がんを便潜血検査で指摘できる可能性は、30〜56%、2〜3回繰り返して84%程度と言われています。1回の検査だと不十分なので、便潜血検査は2回行うことになっていて、2回中1回でも潜血があれば、『便潜血陽性』と診断され、精密検査に進むことになります。便潜血検査で1度陽性と出ても、2回目が陰性だったから様子を見ようというのは間違いです」

陽性と診断されれば、大腸カメラ(大腸内視鏡)に進む。事前に1〜2リットルもの下剤をかけ、腸内を洗浄してからの検査となるため、患者の負担も小さくない。

医師アンケートでは、42%が便潜血検査で済ますと回答したが、58%が大腸カメラを選ぶと回答している。

「おそらく、大腸カメラのメリットが大きいからでしょう」と近藤医師は言う。

大腸がんは、粘膜に直接がんができるケースと、ポリープから徐々にがん化していくケースがある。ポリープを便潜血検査で指摘できる可能性は11〜18%だが、大腸カメラであれば、直接粘膜を見られるからだ。

「ポリープが全くなければ大腸がんのリスクは低いと考えられますし、ポリープがあったり数が多かったりした場合は、定期的にフォローしてリスクを低減できます。大腸がんのリスクは40歳を超えると上がるので、一度は大腸カメラでポリープの有無を調べておくとよいでしょう」




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