街の図書館が「6割非正規頼み」の厳しい現実 過去16年の都道府県別データをビジュアル化

昨年は図書館や司書にまつわる労働問題が何度も顕在化した1年だった。

たとえば福岡県福智町の町立図書館や歴史資料館を併設する施設「ふくちのち」では、2018年3月で契約を解かれた前館長が町を相手取って提訴した。募集要項では2020年3月末までの任期5年となっていたにもかかわらず、3年で雇い止めされたという。

また、東京都の練馬区立図書館では昨年12月、非常勤職員の司書でつくる労働組合が区に対してストライキを通告した。民間の株式会社などが公営施設の運営を代行する「指定管理者制度」を練馬図書館と石神井図書館にも導入する方針が区から組合に示されたことが発端だった。結果的に労使交渉を経てストライキは回避されたものの、公立図書館でストライキ通告まで労使が対立することは異例だ。

司書の待遇が全国的に悪化の一途

背景には図書館職員、特に専門職であるはずの司書の待遇が全国的に悪化していることがある。司書は図書の貸し出しや蔵書の選定、利用者の求めに応じて書籍を案内するレファレンスなど幅広い業務を担い、図書館業務の中核となる存在だ。

上林陽治『非正規公務員の現在 深化する格差』(日本評論社、2015年)では、図書館司書や公立小中学校の教職員は「正規公務員から非正規公務員への置き換え」が顕著に進んでいる例であると指摘している。

文部科学省がほぼ3年おきに発表している「社会教育調査」によれば、1999年度には23.2%だった司書の非常勤比率(専任・兼任・非常勤司書数に占める非常勤の割合)は最新調査(2015年度)では63.0%まで上がった。

図書館司書のおよそ3人のうち2人が非常勤として働いている計算だ(なお、2011年度調査からは指定管理者の職員数も統計に加わったが、その中での非常勤の比率が不明であるため計算式からは除外している)。

総務省の発表する「労働力調査」によると、就業者全体では同じ期間(1999年から2015年)に非正規雇用の割合が24.9%から37.5%に変化している。全体の数字も増えているとはいえ、図書館司書が急速に「非正規頼み」となったことがうかがえる。

社会教育調査は都道府県ごとや男女別のデータも載せているが、項目が多岐にわたるため推移や傾向が若干わかりにくい。そこで東洋経済ではエクセル形式でデータが存在する1999年度〜2015年度(最新)までの数値をデータベース化し、地図とグラフでビジュアル化した。

特設ページを見ると、図書館司書の非常勤職員は16年間で劇的に増えたことがわかる。全国の非常勤司書は1999年度の2272名から2015年度には9593名まで増加。

全体の司書数は増えているものの、常勤(専任)司書が4分の1程度減少した(7345名から5410名)のに対して、非常勤は4倍超の伸びを示す。この傾向は、ほぼすべての都道府県で共通する。

一方で地図からは、非常勤職員への「依存」度合いに地域差があることが見て取れる。たとえば青森県では2015年度の非常勤比率は4割程度にとどまるが、長崎県では8割を超える。専任司書の数はどちらの県も30名程度だが、非常勤司書数には6倍もの開きがあった。

見過ごせない男女差

また、こうしたデータを見る中で見過ごせないのが男女差だ。男女雇用機会均等法が施行されて久しいとはいえ、日本の労働市場においていまだに女性は弱い立場に置かれがちだ。

前掲書では、公務員の正規・非正規職員における賃金格差に関して「非正規公務員の四人のうち三人は女性である。したがってこの賃金格差は、勤務形態の差異を装った男女間の間接差別ともいえる」とも表現されている。

実際に、図書館司書においても同様の現象が見られる。2015年度のデータを集計すると、男性の非常勤比率33%に対して女性は67%。青森・沖縄を除く45都道府県で女性のほうが非常勤比率が高い。この男女差が最も顕著な香川県では、非常勤の司書92名のうち91名が女性だ(下の図も特設ページでダウンロード可)。

図書館司書は毎年1万人近くが司書資格を取得するなど、資格としての人気も高い。このまま待遇悪化を放置することは、日本の図書館制度の根幹に影響を与えかねない。

著者:荻原 和樹




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