冬に多いヒートショック 風呂やトイレ、温度差対策を

底冷えする季節は、家の中の寒暖差が大きくなって血圧が乱高下し「ヒートショック」が起きやすくなる。入浴時の転倒や失神、脳梗塞などの原因になる。室内でも防寒対策を心がけて、事故を防ごう。

ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が大きく変動し、体に負担がかかって体調不良に陥ることを指す。意識が低下するほか、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの原因にもなる。

症状が重いと死に至る危険もある。10月から4月は、狭心症や心筋梗塞などによる心停止の事故が増えるという報告もあり、背景としてヒートショックが考えられている。

多摩平の森の病院(東京都日野市)の高橋龍太郎院長は「冬場は特に、ヒートショックによる入浴関連の事故が急増する」と注意を促す。東京都健康長寿医療センター(東京・板橋)の2011年の調査によると、年間約1万7千人が入浴中の心肺停止で救急搬送されていた。月別に見ると、1月の件数は最も少ない8月の11倍に上った。

暖かい部屋で過ごした後、入浴しようと室温の低い脱衣場で服を脱ぐと、血管が収縮して血圧は上昇する。寒い浴室に入ったり、急に湯につかったりすると、刺激で血圧はさらに上昇する。

風呂でしばらく温かい湯につかるうちに、今度は血管が拡張し、血圧は急降下する。このとき意識を失って浴槽内で溺死することが、冬場の入浴時の事故の主な原因と考えられている。

ヒートショックが起こるのは入浴中に限らない。小田原循環器病院(神奈川県小田原市)の杉薫院長は「夜間寒いトイレに行くとき、朝新聞を取りに屋外に出るときなども血圧が変化しやすい」と話す。

発生リスクが高いのは血圧の調整機能が低下しがちな高齢者など、血圧が不安定な人。糖尿病や高脂血症など生活習慣病のある人も要注意だ。高橋院長は「ヒートショックは若く健康な人でも起こることがある。自分は大丈夫と過信せずに、生活環境の温度差を意識し、対策を取って」と助言する。

室温が下がりやすく注意が必要なのが、肌の露出が多くなる浴室やトイレなど。脱衣所の室温は小型の暖房器具などを使って18度以上にする。シャワーで熱めの湯を高い位置から浴槽に注ぐと、蒸気の働きで浴室内を20度前後に暖めることができるという。

湯温は41度以下に保つ。「42度と41度では、体にかかる負担がかなり異なる」(高橋院長)。温度調整ができない場合は、湯温計を使おう。

入浴方法にも気を配りたい。浴槽に入る前にかけ湯をして、湯に体を慣らす。湯につかる時間は1回10分以内に。浴槽では急に立ち上がらないようにして、立ちくらみを防ぐ。食後1時間以内や飲酒後の入浴は避ける。

一人暮らしの場合は、周りに人がいる公衆浴場や日帰り温泉を使う手もある。入浴後は湯冷めに注意。気温が下がり過ぎない日没前に入浴するのも有効だ。

杉院長は「寒い場所に移動するときは、スリッパや厚手の靴下をはくなど体を冷やさない工夫が大切。体表近くに太い血管が通る首筋は冷気の影響を受けやすい。屋外に出るときはマフラーを巻くなどの対策を取って」と話す。

日本気象協会(東京・豊島)と東京ガスが共同開発し、インターネットで公開している「ヒートショック予報」も参考になる。全国約1900地点の7日先までのヒートショックリスクを5段階で示している。リスクの高い日は脱衣所の室温や浴槽の湯温などに十分注意する。高齢の親など離れて暮らす家族にも電話などで一声かけると、事故防止につながる。

(ライター 荒川直樹)




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