親が認知症になったら… 成年後見制度、早めに検討

親がこのまま財産などを管理できるのか。年末年始に不安になった人もいるだろう。認知症などで物事の判断が難しい場合に、その人を法律的に保護するのが成年後見制度だ。いつか来る「我が家の高齢化」に備え、制度について知っておこう。

■認知症だと契約できず

親が認知症と診断された。親の預金をおろそうと銀行に行ったが、認知症と話したら手続きが一切できなくなった。どうしよう――。

「相談に来る人はこうしたケースが多い」。成年後見センター・リーガルサポートの常任理事で、司法書士の恒松史帆さんは説明する。

親が認知症になると、できなくなることがある。例えば介護保険の契約。本人が高額な健康食品を購入したり、自宅の修繕契約を結んだりといった場合も、解約できないことがある。こうした場合は成年後見制度が有効だ。

■法定後見と任意後見

成年後見制度は認知症や知的障害、精神障害、発達障害などで物事を判断する能力が十分でない人のために、後見人が支援する制度だ。

(1)親など本人の判断能力が不十分な場合の法定後見

(2)判断能力が問題ない場合に利用する任意後見――の2つがある。

(1)の法定後見は、判断能力によって「後見」「保佐」「補助」の3段階がある。

後見は本人に判断能力が全くない場合。契約など法律行為すべてを後見人が行うほか、本人が後見人の同意なく行った法律行為は取り消せる。例えば親が結んだ自宅の修繕契約は後見人が後から解約できる。親に代わって福祉サービスを選んだり年金の手続きをしたりもできる。

一方、補助は本人の判断能力が不十分、保佐は著しく不十分な場合だ。後見人にどこまで任せるかは、あらかじめ親と話し合って決める。

ただ、子が親の後見人になると、悪意がなくても親の資産を自分のものと混同するケースがある。不適切と判断されて後見人を解任されたり、民事や刑事で責任を問われたりする可能性もある。最高裁判所家庭局の宇田川公輔第二課長は「後見人はあくまでも本人の意向を尊重し権利を守る立場ということを忘れないで」と強調する。

■親族は3割弱

自分が後見人になるのは負担が重すぎるなら、第三者に任せることも検討したい。裁判所の判断で、家族が医療や介護などの手続き、第三者が財産管理と複数の後見人が選任されることもある。

実際、親族が後見人になるのは3割弱。裁判所の判断で家族は後見人に選ばれないこともある。家族間に意見の違いがある、預金などが多い、多額の遺産相続がある場合は、第三者が後見人に決まるのがほとんど。

弁護士など法律の専門家が後見人になった場合は、本人の財産額にもよるが、月2万〜3万円程度の報酬を親の財産から支払う。

注意が必要なのは、成年後見はひとたび開始の審判が下りると、本人の症状が改善しない限り利用をやめられない点だ。第三者が後見人になったとしても、後見制度の利用は中止できない。制度はあくまで本人の財産保護が目的なので、本人の意思が確認できないと生前贈与ができないなどの制約もある。

■家族の話し合いが大事

もう一つ、知っておきたいのが任意後見だ。自分の判断能力が落ちたときのために、任意後見人を選び、してもらいたい事柄を決めておく。任意後見契約は公証人が作る公正証書で結ぶ。本人の判断能力が落ちたら家裁の手続きを経て契約が発効する。

成年後見制度の利用はあまり進んでいない。認知度の低さに加え、後見人のサポート体制が不十分なためという。厚生労働省では「5年以内に相談から申し立ての準備、後見開始後のサポートまでを一括して担う中核機関を全国に整備する」(成年後見制度利用促進室)としている。

後見制度は判断能力があるうちに検討しておけば慌てずに済む。「認知症になったら」という会話は始めにくいが、「転ばぬ先の杖(つえ)」と考え、家族で話し合ってみたい。

(ライター 藤原 仁美)




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