保険代理店が経費天引き 元外交員、全国で相次ぎ提訴

保険代理店に雇用された元外交員(保険募集人)が、給料から多額の経費が天引きされるなどして不当に低賃金で働かされたと主張し、会社側を訴えるケースが相次いでいる。

毎日新聞の取材では、全国の少なくとも6地裁・支部に11人が提訴し、1人が労働審判を申し立てた。12人は3社に対し未払い賃金など計約6300万円の支払いを求め、他に複数の提訴予定がある。

労働問題に取り組む弁護士らは「業界の一部で搾取的な働かせ方が横行している」と警鐘を鳴らし、近く「全国被害者弁護団」を結成して救済に乗り出す。

訴訟や労働審判は、札幌▽東京▽大阪▽広島▽長崎――の各地裁と福岡地裁小倉支部に起こされた。12人は契約社員などとして9カ月から3年3カ月働き、約70万~2000万円を請求。他に札幌、東京、広島の各地裁などで新たな提訴予定があり、同種の訴えは今後も増えそうだ。

訴状などによると、原告らは毎月十数万円の「基本給」があるとの条件で入社したが、実際は一部しか支払われなかった。また、契約を検討している顧客を会社側が紹介した際の情報料として、契約が取れたかどうかに関係なく1件当たり数万円、1カ月では数十万円を徴収されるなど、多額の経費負担を強いられた。

原告らの月給は、契約成立時に保険会社から代理店に支払われる手数料などから経費を差し引く形で計算される。月給がほとんどない月があるだけでなく、経費が手数料収入を上回った場合は個人で赤字分を補填(ほてん)しなければならなかった。社会保険料の会社負担分を徴収されていた人もいた。

長崎訴訟の原告代理人で、全国弁護団にも参加予定の中川拓弁護士は「会社として負担すべき経費や赤字のリスクを労働者に押し付けている」と批判する。

被告3社は、いずれも複数の生保などを販売する乗り合い代理店で、うち1社は1000人規模の外交員を抱えて全国展開する。

取材に3社は「コメントは差し控えたい」などと回答した。業界を所管する金融庁は「労働問題なので我々は判断できない。しかし顧客との保険契約に問題が生じれば対応する」とし、厚生労働省は「労働基準監督署に相談があれば適切に対応したい」としている。

◇国は指導・監督を

脇田滋・龍谷大名誉教授(労働法)の話 

最低賃金を下回る賃金や多額の天引きといった、労働法を逸脱する働かせ方が保険代理店業界に広がっている可能性があり、厚生労働省はきちんと調査して指導すべきだ。無理な働かせ方が不正な保険契約につながる恐れもあり、金融庁も監督する必要がある。




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