治療後にトラブルも…増える外国人に悩む医療現場 受け入れ模索、2病院の取り組み

政府が高度な医療で外国人を呼び込む「医療ツーリズム」を推進したことなどを背景に、外国人が医療機関を受診する機会が増えている。ただ、制度や宗教、文化の違いからトラブルとなることも少なくない。

入管難民法改正で来春以降、外国人労働者の受け入れが拡大されれば、医療現場の混乱も広がりそうだ。受け入れ態勢を模索する二つの病院を取材した。

「初めまして。痛みはありますか」「今は大きな痛みはありません」。10月中旬、福岡市城南区の福岡大病院(915床)の泌尿器科外来を、中国人の会社経営者(41)が受診した。医師と、看護師でもある国際医療戦略室の西山道代室長(60)、通訳とコーディネートを請け負う会社「トップ九州」の斎藤寧々代表(42)らが同席。斎藤さんが診察を通訳し、血液検査などにも終日、付き添った。

男性は中国で、腎臓に尿がたまって拡張する「水腎症」と診断された。納得のいく治療を受けられず再発の不安が募り、訪日を決意。受診予約や宿泊などはトップ九州が仲介した。

11月上旬にも来日し、詳しい検査を受けた。「当面は経過観察で良い」との診断に納得し、来年2月の再診を予約して帰国。男性は「診察が丁寧で設備も良い。友人にも勧めたい」と話した。

医療費の支払いや意思疎通で混乱も

福大病院の外国人患者は2017年度が55人、18年度は11月末現在ですでに88人と増加。医療保険が適用されない外国人は、医療費は全額自己負担で、コンサルテーション料(一律4万円)も負担してもらう。

質の高い医療に出費を惜しまない富裕層が増える一方で、旅行保険未加入の旅行者なども目立ち、医療費の支払いや意思疎通で混乱が生じている。

16年に戦略室を新設してトップ九州と提携。院内で通訳養成講座を開くなど、人材育成にも力を入れるが、外国人増加への不安は尽きない。医療通訳は語学力と専門知識を求められるため、斎藤さんは「福岡はまだ人材が不足している。医療ツーリズムを充実させるなら、質の高い通訳を養成すべきだ」と指摘。西山さんは「医療機関としては診療を拒否する選択肢はない。外国人を受け入れる以上、態勢を整え、ニーズに応えたい」と話す。

外国人患者、3年前からほぼ倍増

済生会福岡総合病院(福岡市中央区、380床)は全国に45ある「ジャパン・インターナショナル・ホスピタルズ(JIH)」を掲げる。東京の社団法人が外国人の診療や健診を推奨できる病院として認証し、特定の医療渡航支援企業が受診を仲介する。国際医療支援室長も務める関口直孝副院長は「外国人を積極的に受け入れたいというより、むしろ窓口を統一して受診を制限したい」と説明する。

繁華街・天神に位置する同病院の外国人患者は昨年は延べ1185人と、3年前からほぼ倍増。国別では中国や韓国、フィリピン、ベトナムなどアジアが目立つ。

福岡市に住む東南アジア出身の女性の元を訪れた父親が心不全で倒れ、救急搬送されてきたケースでは、医療保険は適用されず、医療費が約300万円に上った。すぐには支払えず、娘が月3万円ずつを支払い続けているという。未収になるケースも多い。

このため、昨年7月に医師や看護師、事務職員からなる国際医療支援室を設置。外国人専用の診療契約書、費用や言語、文化・宗教などについて同意を得る診療同意書などを英語、中国語、韓国語で用意した。治療開始前に費用などについて説明し、治療後のトラブルを最小限にするよう取り組んでいる。

関口副院長は外国人患者増加に伴う問題点として(1)未収金の増加(2)医療過誤などのリスク増大(3)医療常識の違いによるトラブル(4)感染症の危険-などを挙げる。「外国人労働者の受け入れを拡大すれば、混乱はさらに深まる。医療費の問題などきちんと議論し、制度を整えてほしい」と訴える。




https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181226-00010005-nishinpc-soci