<どうする相続>認知症に備え「家族信託」 受託者 財産の処分も可能

少子高齢社会での財産の継承を考える「どうする相続」。読者から認知症の親の財産や遺書に関する悩みが寄せられた。高齢になれば認知症になる可能性があることを念頭に、早めに相続対策を考えておきたい。 

「身の回りを整理しておきたいと願う老親を安心させる方法が知りたい」

投稿を寄せたのは中部地方の五十代女性。父が約十年前に亡くなり、百五十坪の敷地に立つ築約五十年の自宅と、預金約千五百万円の銀行口座はすべて七十代の母名義になっている。

母は三年前に認知症と診断され、昨年、高齢者施設に入所。今後の介護費用を考えてか、空き家の自宅を売却したいと言っている。

不動産業者二社に自宅を査定してもらうと「名義人が認知症の場合、契約後のトラブルを避ける意味でも、家族全員の賛成が必要になる」とくぎを刺された。

女性は「認知症といっても症状はさまざま。母の自宅売却の意思はブレたことはなく、会話も署名もできるのに」と納得できない。遠方に住んでいる女性の弟が売却に反対していることもあり、女性は「このままだと、今世話をしている自分の負担が増えるのが目に浮かび、不安」という。

「同様の相談は多い」と話すのは「親が認知症になる前に知っておきたいお金の話」(ダイヤモンド社)の著者で、不動産管理会社で相続対策などの相談にのる横手彰太さん(東京)。

認知症で判断能力が低下したと判断されると、不動産売買や賃貸借契約、定期預金の解約、銀行での引き出し、保険金の受け取りなどが一般的にできなくなる。財産が「凍結」され、家族が親の財産から介護費用を捻出したいと思ってもできないこともあり得る。

財産の所有者が認知症になる前の備えとして、横手さんは、財産に関する要望を家族に契約という形で残す「家族信託」の利用を勧めることが多いという。

家族信託は生前から財産の運用や管理を家族や親族に託せる制度。財産を預ける人(委託者)、財産を預かって管理・処分する人(受託者)、財産から生じる利益を受ける人(受益者)からなる。委託者の死亡後も契約の効力を持たせ、遺言代わりにすることや、受託者に自宅売却などの財産処分を託すこともできる。

手続きは制度に精通した司法書士などに依頼でき、一般的な初期費用は信託財産の評価額五千万円の場合、七十万~百万円。認知症の診断後は利用が難しくなるが、横手さんは「公証人など第三者や医師が十分な判断能力があると認めれば、家族信託を活用できる可能性は残る」と話す。

認知症などで判断能力が低下した人が利用する成年後見制度の「法定後見制度」については、横手さんは「本人の財産を守るのが目的。家族が介護費用を理由に自宅を売るのは、本人の貯金が底をつくなど正当な理由がなければ難しい」と指摘。第二の「財産凍結」になりかねず、あまり勧められないという。

いずれにしても、親が認知症になった後の相続対策や財産管理は、新たな“争族”の種をまくことにもなりかねない。横手さんは「できれば、親が元気なうちに司法書士などに相談して」と呼び掛けている。




http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201812/CK2018122002000210.html