「政治主導」で政策転換 捕鯨船拠点は「大物」地盤

「今ごろ『自民党と政府一体』なんて、党をなめている。もっと緊張感を持って会議に出てこいよ」

10月5日に自民党本部であった捕鯨関連の党会合で、二階俊博幹事長が外務省幹部に怒声を浴びせた。IWC脱退を迫る二階氏らに、幹部が「党と一体となって対応すべき時期だ。検討を深める」とはぐらかしたためで、二階氏は「この場を逃れるために、いいかげんなことを言っている」とたたみかけた。

9月のIWC総会での日本の組織改革案否決への不満は共有されている。だが、反捕鯨国の中核である一方、日本が「準同盟国」と位置づける豪州や英国などとの関係悪化を外務省は懸念。これに対し自民党の捕鯨推進派は「IWCは持続的な捕鯨の観点を捨て、保護だけに走った。改革の望みはない」と突き上げた。

推進派には有力議員が多い。捕鯨船の拠点がある山口県下関市は安倍晋三首相、沿岸捕鯨が盛んな和歌山県太地町は二階氏の地盤だ。10月29日には首相が衆院本会議で「一日も早い商業捕鯨の再開のため、あらゆる可能性を追求していく」と表明。外務省内に「捕鯨は役人が口を出せる案件でなくなった」(幹部)との認識が広がり、「政治主導」での脱退が固まった。

反捕鯨国からどれだけ反発が出るかが今後の焦点だ。菅義偉官房長官が20日の記者会見で「(脱退は)何ら決まっていない」と繰り返したのも、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)に関するEU内での承認手続きへの影響を恐れたためだ。

モリソン豪首相は11月の安倍首相との会談で捕鯨反対の立場を伝達。日豪関係が悪化すれば、日米豪が進める「自由で開かれたインド太平洋」構想にも影響が及びかねない。国際協調主義を掲げる日本が国際機関から脱退するのも極めて異例で、政府内から「日本外交らしくない。トランプ米大統領みたいだ」と心配する声も漏れる。

来年は6月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議、8月のアフリカ開発会議(TICAD)首脳会議、10月の即位の礼と大型の外交行事が続く。外務省幹部は「脱退するにしてもタイミングが悪い」と頭を抱える。これまでのG20は会場周辺で、環境保護団体の抗議行動が毎回起きており、政府関係者は「警備の観点から注意すべき要素が増えた」と語った。




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