やせているのに糖尿病 なぜそんなことが起こるの?

この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!

「問題」日本人は、太っていなくても糖尿病などの生活習慣病になりやすいことが知られています。その理由の1つとして近年注目されているのは、以下のうちのどれでしょうか?

(1)おなかにつく「皮下脂肪」

(2)排便に関わる「肛門括約筋」

(3)筋肉の中に脂肪がたまる「脂肪筋」

正解は、(3)筋肉の中に脂肪がたまる「脂肪筋」 です。

■太っていない人の糖尿病、問題は「筋肉の質」にあった

糖尿病などの生活習慣病は、肥満体、いわゆるおなかの突き出した“メタボ(メタボリックシンドローム)体形”の人に多いというイメージがあります。しかし、世の中には、それほど太っておらず、健康診断の「腹囲測定」ではメタボに該当しないにもかかわらず、糖尿病と診断されたり、血糖値や中性脂肪などの数値が高く出てしまう人がいます。これはなぜなのでしょうか。

「肥満の人が生活習慣病になりやすいのは事実ですが、日本人を含むアジア人で糖尿病になる人の平均BMI[注1]は23くらいで、必ずしも肥満の人ばかりではありません。東アジア人は、太っていなくても糖尿病などの生活習慣病になりやすいことが分かっています」。そう話すのは、順天堂大学大学院スポートロジーセンター・代謝内分泌内科学准教授の田村好史さんです。

ではなぜ、太っていなくても糖尿病になってしまうのでしょうか。その理由の1つとして近年注目されているのが、「脂肪筋」の存在です。

「脂肪筋」とは、本来脂肪がたまるはずのない筋肉(骨格筋)の細胞の中に脂肪がたまった状態をいいます。そもそも脂肪組織には、主に皮膚と筋肉の間にある皮下脂肪と、主におなかの内臓の周辺につく内臓脂肪の2つがあります(このうちメタボとして問題になるのは、内臓脂肪です)。

体の中の脂肪は通常、これらのいずれかの脂肪組織にたまりますが、本来はたまるはずがないところに脂肪がたまることがあり、これを「異所性脂肪」と呼びます。異所性脂肪が肝臓にたまった場合は「脂肪肝」、筋肉にたまった場合は「脂肪筋」というわけです。

「異所性脂肪は、太っていない人でも蓄積することが知られています。アジア人は、遺伝的に異所性脂肪がたまりやすい体質である可能性があるのです」(田村さん)。

脂肪筋になると、筋肉の働きが悪くなる、つまり、筋肉の質が落ちてしまいます。具体的には、「筋肉でのインスリンの効きが悪くなり、本来なら筋肉に取り込まれる糖がうまく取り込まれず、血中に増えてしまうのです。

これは、インスリン抵抗性と言われる状態で、実はメタボリックシンドロームや糖尿病といったいろいろな生活習慣病の元になります」と田村さんは解説します。太っていなくても糖尿病だったり血糖値や脂質、血圧で異常値が出ている人は、脂肪筋によって筋肉のインスリンの効きが悪くなっている可能性があるのです(図1)。

田村氏らが、BMIが23〜25の普通体重の人の骨格筋のインスリン抵抗性を調べたもの。高血糖、脂質異常、高血圧のいずれか1つでも該当する人は、骨格筋のインスリン抵抗性があることが分かった。

[注1] BMI(Body Mass Index):体格指数。体重(kg)を身長(m)の2乗で割ったもので、18.5(単位はkg/m2、以下同じ)未満はやせ、18.5 以上25未満は標準、25以上は肥満と判断する(日本肥満学会による基準)。

■筋肉にたまった脂肪は運動で落とせる

田村さんらの研究で、脂肪筋になりやすい人は、

●体力が低い
●生活活動量が低い(歩かない)
●脂質が多い食事をとっている
●内臓脂肪が多い
●血中アディポネクチン濃度[注2]が低い

という特徴があることが分かっています。さらに、「軽度の脂肪肝や軽度の肝機能異常がある人には筋肉のインスリン抵抗性が見つかりやすいことも、われわれの研究で分かってきています」(田村さん)。

筋肉にたまった脂肪を測定するには特殊な検査が必要なため、血糖値、脂質(中性脂肪など)、血圧のいずれかに異常があり、上記の危険因子に該当する人は、脂肪筋の存在やインスリン抵抗性を疑って対策を打った方がいいでしょう。実は、筋肉にたまった脂肪は、ちょっとした生活習慣の改善で撃退できるのです。

「筋肉に異所性脂肪がたまっていたとしても、運動により比較的早く減らすことができます。筋肉にたまった脂肪を燃やし、質のいい筋肉を取り戻すための基本は、ウォーキングやジョギングのような有酸素運動です」と田村さん。

運動と並行して、高脂肪食のとりすぎは控えましょう。「目安として、脂質の摂取量は総摂取エネルギー(カロリー)の20%から30%の間と考えてください。それから、質の高い脂肪をとることが重要です。ラードやバターのような動物性脂肪をたくさん食べると動脈硬化になりやすいことが分かっています。オリーブオイルのような植物油や魚の油を意識してとるようにしましょう。ただ、植物油がお薦めといっても大量に食べ過ぎると話は別ですよ」と田村さんはアドバイスしています。

[注2]アディポネクチン:脂肪細胞から放出されるホルモンの1つ。肝臓や筋肉にある異所性脂肪を燃やし、インスリン抵抗性を改善する作用を持つ。




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