<どうする相続>「争族」防ぐ生前の話し合い 遺言内容もオープンに

相続を巡って家族の争いに発展する「争族」。一部の富裕層の問題というイメージがあるが、当事者の多くは一般的な家庭だ。「うちは大した資産がないからもめない」と決め付け、何も対策しないと大変なことになりかねない。遺言書を残すのはもちろんだが、生前から相続についてオープンに話し合って疑心暗鬼を引き起こさないようにしたい。 

「そろそろ遺産を分けてもらわないと将来が不安」

都内に住む四十代の女性二人は焦っていた。三人姉妹の下二人。母に続いて父が亡くなったのは十数年前。父の遺産に預貯金はほとんどなく、都内の土地二十坪に立つ築五十年の実家があるだけ。今も父名義のままで、五十代で独身の長姉が住み続ける。

妹二人は「親を世話してくれたのはありがたいが、ずっと家賃なしで恩恵も受けている」と姉に不満も抱く。父の預貯金がないというが、「姉が使ったのでは」「遺産を独り占めしているのでは」との疑念がぬぐえない。

一方、趣味講座の講師などで生計を立てている姉は「両親と同居し、面倒もみた」と実家に住むのは当然の権利と譲らない。今は姉妹間で話し合いができなくなった。

今年一月、妹二人から相談を受けたのは、相続に関する相談業務をしている曽根恵子さん(東京都)。

曽根さんは、姉に「家を売り、売却益を三等分しましょう」と提案。当初は渋った姉も実家の老朽化に伴う建て替え費用が必要なことなどを指摘され、ようやく同意。実家は今春約二千万円で売れた。「争族」となった理由を、曽根さんは「父親が貯蓄を含めた財産を明らかにして、遺言を残していれば、妹たちも疑念を抱くことはなかったのでは」と指摘する。

最近は、「富裕層」以外でも「争族」となるケースが絶えない。二〇一七年の家庭裁判所の遺産分割事件の遺産額をみると、一千万円以下が三分の一を占め、五千万円以下だと四分の三になる=グラフ。

多くの家庭の主な財産は分けにくい不動産。曽根さんは「家族の誰かが住む自宅は、特にもめる原因になる」と話す。「相続を機に、多くの兄弟姉妹が絶縁になるケースをたくさん見てきた」とも。亡くなった親も、子どもたちの仲たがいを望んでいなかったはず。元気なうちに遺言書などを準備しておきたい。

曽根さんは「家族と普段からコミュニケーションをとり、財産をオープンにして、生前から贈与についても意思を明らかにしておく」と話す。生前に相続の話題はすべきではないとされてきたが、隠すと疑心暗鬼になる。遺産の分け方を明らかにし、自分の死後にもめないよう遺言書として文書に残すことが重要だ。

遺言書はこっそり作らず、全員に内容を知らせる。死後、「誰かが書かせた」とトラブルになるケースが多いためだ。できれば、法律の専門家が関わり、安全に保管できる公正証書遺言で準備する。

遺産分割はなるべく公平に。「今は平等相続の時代だから」と曽根さん。介護などで親への貢献度が高い場合は遺産を多めに残すこともできるが、誰もが納得できる基準があるわけではない。公平に分けられない場合、理由や感謝の言葉、家族へのメッセージなどを付言事項で書いておく。「親の配慮が伝われば、深刻なもめ方はしないものです」




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