道東沖 3.11クラス発生確率「最大40%」 地層に隠された痕跡 迫る津波被害に立ち向かえ 北海道

地震から2か月が過ぎても、北海道内にはいまだ大きな爪痕が残されていますが、実は、北海道には胆振東部地震を遥かに上回る、もう一つの巨大地震によるリスクが迫っているということをご存知でしょうか。

それは、千島海溝沿いで起きると想定されている超巨大地震とその津波被害です。

道東沖で深く沈み込む千島海溝。2つのプレートが激しくぶつかり合いひずみが蓄積。東日本大震災クラスの超巨大地震が切迫している可能性が高いと言われています。

2017年、国はこの超巨大地震が今後30年間に起きる確率は「最大で40%」と発表しました。しかし、この地域は過去の地震の記録が少なく、詳しいことが分かっていないのが現状です。

西村准教授は地層の痕跡から、今後起こりうる津波を割り出そうとしている。

地層の痕跡が示す津波 専門家「次はそろそろ」

北海道大学 地震火山研究観測センターの西村裕一准教授です。

地層に残された過去の津波の痕跡を調べることで、今後発生する超巨大地震がどういう津波を起こすのか、割り出そうとしています。10月、大樹町で行われた調査活動に同行しました。

北海道大学 西村裕一准教授:「津波堆積物は地震の長期予測に一番重要なものの1つ。1メートル掘れば、5000年分ぐらいの地層が見えるので」

地層には火山灰のほかに、津波の堆積物である砂の層がある。

特殊な器具を地面に打ち込むことで、地層の形を壊さずきれいに採取することができます。

北海道大学 西村裕一准教授:「一番目立つのは、この白とオレンジ色のところ。(白は)これが1663年に有珠山から降ってきた火山灰。(オレンジは)1667年に樽前山から降ってきた灰。薄いが砂の層がある、おそらくこれが津波」

「次はそろそろ」西村准教授は、地層から津波を分析する。

この砂を含んだうすく白い層が、津波の堆積物です。地層を詳しく分析することで過去に、超巨大地震がどのくらいの頻度で発生していたか割り出す事が可能となります。

北海道大学 西村裕一准教授:「3000年ぐらい前から300年ぐらい前までの間に、少なくとも3回は津波が来ているかなと」「ポン、ポン、ポンと来て、今度はこっちの上に砂の層が来ないと歴史としてはおかしい。この間隔だと次はそろそろかなと見える」

地震が起きた年代や規模を正確に割り出すには広い範囲の地層データが必要です。千島海溝の地震の場合、北方領土周辺での地層採取がカギとなります。

北海道大学 西村裕一准教授:「私たちができることは『事実』を調べること。津波は過去にどういう風に起きているのか、できるだけ明らかにする」

国は、千島海溝沿いの超巨大地震が切迫していると警告していますが、具体的な津波の規模などは明らかにしていません。

このため、各自治体とも戸惑いを見せるなか、行政の対応を待たず市民が中心となって対策を急ぐ例が増えています。

釧路市大楽毛地区。海抜5メートルほどの低地に住宅が並ぶ。

避難設備めぐり市との議論が平行線 “避難困難地域“の住民危機感あらわ

太平洋に面し、海抜5メートルほどの低い土地に住宅が並ぶ釧路市大楽毛(おたのしけ)地区。北海道が6年前に出した予測では、高さ10メートル級の津波が来るとされ、ほぼ全域が浸水するとみられています。

高さ10メートル級の津波で全域が浸水するとみられている。

町内会の防災担当者も危機感をあらわにします。

大楽毛連合町内会 土岐政人さん(67):「逃げる場所をたくさん確保しておくというのが必要になる」

住民は従来の避難所のほか、高い建物に非常階段を作るよう釧路市に要請。新たに中学校の屋上を避難所として使えるようになりました。しかし…

避難タワーをめぐり、市との議論は平行線のまま…。土岐さんの心配は募る。


大楽毛連合町内会 土岐政人さん(67):「この距離ですから、津波が来たら一気に…」

2000人ほどが暮らす沿岸部の南地区。津波到達までの30分間に歩いて避難する事ができない、いわゆる「避難困難地域」です。

地元は、13メートル級の津波避難タワー3基の建設を要望しました。

しかし釧路市は「国による詳細な津波想定が出る前に億単位の費用をかけた整備は困難」として平行線が続いています。

大楽毛連合町内会 土岐政人さん(67):「ただ地震の方は待ってくれないのでね…いつ来るかわからない。住民としては北海道が出している数値があれば、それに向けて動いてほしい」

広尾町音調津地区。約130人が暮らす。

“抜き打ち“避難訓練を実施 「自分の命は自分で守る」

独自の防災対策で命を守ろうという地域もあります。

約130人が暮らす十勝の広尾町の音調津(おしらべつ)地区。北海道の予測では、地震の30分後に20メートルを超える津波が来るとされ、道路の寸断により「陸の孤島」になるとみられています。

もともと小学校のグラウンドだった場所は、今はヘリポートとして活用されています。孤立に備え住民自ら芝を植えて整備しました。

さらに、発電機やポンプなどを搭載した災害救助用の高性能消防車も配備しました。

事前に日時を知らせない“抜き打ち“訓練が行われる。

極めつけは避難訓練は事前に日時を知らせず「抜き打ち」で行うという徹底ぶり。なぜここまでするのでしょうか。

音調津 自主防災会 上野雅彦会長:「住民は避難する準備をして、(事前に告知すると)車に乗って待っているか、先に避難場所に行っている人もいる。避難訓練やっている意味がない」

「この地区から一人の犠牲者も出さないよ、自分の命は自分で守るんだよと」

犠牲者を出さないため何ができるのか―。上野さんたちは高齢者や歩行困難な人の名簿を作成し避難を手助けする担当者を決めました。

さらに、1秒でも早く避難を呼びかけられるよう放送設備の電源は入れたままにしてあります。

「一人の犠牲者も出さない」。上野さんは力を込める。

常に最悪の事態を想定することが命を救う秘訣だと上野さんは考えています。

音調津 自主防災会 上野雅彦会長:「なんぼやっても(防災対策は)キリがないのさ。住民の方は孤立という事を考えて行動してほしい」

北海道大学の西村准教授によると、津波防災のポイントは、

 1.警報が出たらまず逃げる
 2.持ち出すものを持っていく
 3.家を出るまで早く

津波はとにかくどれだけ早く逃げることができるかが大事です。警報が出たら、まず逃げ始める。起きた瞬間から避難所までどれだけ短縮できるかを考えておく必要があります。




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