引きこもり長期高齢化で続発する「親子共倒れ」のやり切れぬ現場

●地域から孤立する親子 「8050問題」の現実

高齢の親と収入のない子の世代の「8050問題」が水面下で進行している。

引きこもり長期高年齢化などによって、「8050」に差しかかる世帯の背景には、周囲への恥ずかしさなどから親が子の存在を隠して、地域の中で孤立しているケースも多い。

8月20日夜、長崎市の母子2人暮らしのアパートの一室から、76歳の母親の遺体が見つかった。

警察によると、部屋から「異臭がする」とのメールを受け、駆けつけた警察官がゴミの散乱する2階の部屋で仰向けに倒れている母親の遺体を発見。同居していた母親が死亡した後も、その遺体を自宅内に放置していたとして、死体遺棄の容疑で48歳の息子を逮捕した。息子は長年、引きこもり状態にあったという。

9月2日付の長崎新聞によると、県警に匿名のメールがあったのは、8月20日午前のこと。近所の住民が7月27日に母親の最後の姿を目撃していた。

息子は「4、5日食事をとらないし、やっぱり死んでいたのか。亡くなっていることに気づかなかった」と供述。死因は「内因性」で、事件性を疑わせる痕跡は見つかっていないという。

また、息子は父親の死後、母親の年金で生活していたと見られているが、行政の支援を受けるよう勧める住民に対し、息子は「よかよか」と言って母子で孤立を深めていたという。

こうした社会的孤立の中で、今後の生活に行き詰まる「8050問題」の親子共倒れは、後を絶たない。

4月には、福岡県福津市でも、母子2人暮らしの自宅で、病死後2ヵ月ほど経った88歳の母親の遺体が見つかり、やはり同居していた61歳の息子が死体遺棄容疑で警察に逮捕される事件が起きている。

5月28日付の毎日新聞西部版によると、母子は父親の死後、母親の年金で暮らしていたと見られ、息子は約2キロ離れたスーパーまで散歩するのが日課だった以外、家に引きこもり状態にあったという。

また、息子は「母親が亡くなって、どうしようもなくなった」という趣旨の供述をしていたといい、自分からコミュニケーションを取って支援を求められる状態ではなく、行政や周囲も家庭内の異変には気づきながら対処できないでいたようだ。

●苦境を相談できずに 亡き親の年金で命を繋ぐ

筆者も、個別に「親が亡くなって、これからどうやって生きていけばいいのかわからない」「手続きはどうすればいいのか」といった相談をメールなどで受ける。そうやって具体的に困っていることを相談してもらえれば、地域の自治体の相談窓口や社会資源、当事者家族会などに繋ぐこともできる。都合が合えば、筆者が同行することもある。

しかし、引きこもる本人も家族も悩みを隠していることが多く、親亡き後に1人残された本人が、生きていく意欲や意義を持てずにいたり、助けを求めることができない状態だったりすると、親の年金をもらい続ける以外の選択肢を選べない人もいる。

1月に札幌市のアパートで80代の母親と50代の娘の遺体が見つかったケースでは、親亡き後、部屋に現金が残されていたのに娘は生きることができなかった。母親は「他人に頼りたくない」と支援の申し出を拒んでいた。このような親子共倒れは、氷山の一角だと言える。

これまでの行政の「ひきこもり支援」といえば、とかく「不登校対策」に力を入れたり、主に30代までの「若者就労支援」に主眼を置いたりしてきたが、現実に起きていることの深刻さを見れば、もはや若者問題ではない。

冒頭の事件のあった長崎市で「ひきこもり相談窓口」を管轄している地域保健課の担当者は、「相談で年齢を区切ることはない。早く相談してくだされば、違う結果になったのではないか。そういう意味では、相談窓口をもっと周知する必要性を感じた」と話す。

長崎県でも16年度、引きこもり実態調査をすでに行っていて、40代が最も多く、全体の割合でも40代以上が約5割に上っていたことから、核となる県の保健所の職員が地域をよく知る民生委員と連携して支援を模索していた。

ただ、そうした親子の情報が地域からもたらされたとき、すかさずアウトリーチして、ずかずかと本人の元に入り込んでいくのは、かえって状態を硬化させていくこともある。周囲は、その家庭に入れるのか入れないのか、入るとしたらどうアプローチすればいいのか、本人の意向や客観的状況に応じて丁寧に対応していかなければいけない。

●まず支援が必要なのは 引きこもる本人よりも家族

県の「ひきこもり支援センター」などの施策を主管している精神保健福祉班の担当者は、こう説明する。

「キーパーソンが誰なのか。介護の問題などがあれば、地域包括支援センターが入っていって、引きこもる子も外部の機関につなぐきっかけづくりができる。引きこもる子にいきなり焦点を当てない入り方ができないか、家庭に入る切り口が他にないか。その家庭に入れるのはどういう人なのか、を見極め、どんな入り方ができるのかが非常に大事なのかなと思います。一歩間違えると……ということもあるが、このまま何も手を差し伸べないのは、もっといけないことだと思っています」

県の担当者が言うように、まず支援が必要なのは、引きこもる本人へのアプローチではなく、むしろ家族のほうなのである。そうした当事者家族は、どのようなことを行政に望んでいるのか。

●「親子共倒れ」の予備軍は 全国に埋もれている

福岡県福津市の現場の近くで「ひきこもり家族会」を定期的に開く、KHJ福岡県「楠の会」の吉村文恵代表は、「結局、親御さんがご自分から出て来られないと、私たちにも見えないし、手を伸ばすことができない。親の会も会員制で縛るのではなく、一般の方が会員でなくても来られるようにしないといけない」と現状を明かした上で、こう問いかける。

「行政は、長期化を防ぐには医療も使えるみたいな講演会には熱心ですが、地域で皆さんが目にしている新聞やテレビ、情報を集められる社協や民生委員などを活用できていない。どこに相談に行けばいいのかわかりません。生活困窮者の窓口も、年金で暮らしている家庭は、相談に行かないですよね。でも、親は困ってるんですって訴えれば行政も動いてくれるんですよ。行政にしっかり窓口をつくってもらうには、国の法律が要るんでしょうか?」

親子が長生きして、年金生活ができているうちはいいものの、残された子はサポートなしでは生活できなくなる場合もある。そんな「親子共倒れ」の予備軍は、全国に数多く埋もれている。




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