増える男性介護者、悩み相談できず孤立も 全国で144万人 料理教室で交流、福岡で取り組み

高齢になった家族の在宅介護を、男性が担うケースが増えている。国の調査では徐々にその割合が高くなり、2016年は在宅介護者全体の34%に上った。ただ、慣れない家事に戸惑う男性は多く、悩みを相談できず孤立し、家族に手を上げることもあるという。負担を和らげようと、男性介護者向けの料理教室「ケアメンズキッチン」が福岡市で始まった。

5日、同市のめんたいこ製造販売会社「山口油屋福太郎」内にある簡易キッチン。家族を自宅で介護する人、介護してみとった人など男性8人が集まった。

初回のこの日の献立は「ナスと豚のみそ炒め」など3品。薬膳料理教室を開く山口由美子さん(51)が講師を務め、参加者は食材の切り分けや合わせ調味料作りなどを進めた。「男子厨房(ちゅうぼう)に入れ、ですよ」。軽口が飛び、笑顔があふれた。

「自分が倒れれば…」思い詰める男性も

ある男性(83)は、久しぶりにこうした介護者の集まりに足を運んだ。同居の妻(80)の認知症が進み、思い詰めていたという。

妻は突然、家を飛び出して徘徊(はいかい)することがある。病院に行くのも身の回りの世話も拒み、せっかく申し込んだデイサービスにも行かない。睡眠が十分取れず、「自分が倒れれば、誰かがなんとかしてくれるんじゃないか」とまで考える。

教室ではデイサービスの使い方などを助言された。介護の経験者に悩みを明かせるのがありがたかった。「少しだけ気持ちが楽になった」と男性は語った。

在宅で介護していた妻を6月にみとった男性は、自分で調理する機会が減り、食事が外食に偏っていた。「また一から、ちゃんと身の回りのことをやろうと思った」と笑顔を見せた。

教室は福岡大の研究者が、料理だけでなく介護の悩み相談や情報交換ができる場として企画、同社が会場を提供した。次回の11月を含め、本年度中にあと3回開く。同大医学部で看護学専門の西尾美登里助手(45)は「女性は社会に出ることが増え、家にいる時間が減っている。男性が働きながら介護を担うケースは増えるとみられ、孤立を防ぐ交流の場にしたい」と語る。

教室は各回先着順で定員10人。参加費1人千円。連絡先は西尾さんのメール=nisiomidori@adm.fukuoka-u.ac.jp。

男性介護者 課題多く 乏しい経験、離職や虐待の遠因に

総務省の社会生活基本調査(2016年)によると、65歳以上の家族を自宅で介護する男性の数は全国で約144万5千人に上る。核家族化や女性の社会進出、少子高齢化の影響で増えているようだ。一方で男性が介護を担う場合、仕事と両立できずに退職して家計が行き詰まったり、ストレスを抱えて虐待したりする問題が指摘されている。

「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」事務局長の立命館大・津止正敏教授の調査によると、1968年から2000年ごろにかけて、同居家族を主に介護する人は「子の配偶者」が約半数を占めるなど最も多かった。津止教授は「要介護者の『義理の娘』である息子の妻が多かったが、今は夫や息子など担い手が多様化している」とする。

仕事を持つ人が介護を担うと、残業や出張が難しくなり、急に帰宅してケアに当たることも増え、離職に追い込まれることがある。同省の17年の就業構造基本調査では、介護・看護のため過去1年間に前職を離職した人は9万9千人。うち2万4千人が男性だ。

一般的に、男性は家事や介護の経験が乏しいことが多い。さらに離職で仕事上の人間関係が切れると、地域コミュニティーに縁がない限り孤立しがちだ。1人で介護を背負い、誰にも相談できずストレスを抱え、虐待に走る恐れもある。厚生労働省の16年度の高齢者虐待調査では、虐待した人の割合は「息子」が40・5%、「夫」が21・5%で全体の6割を超えた。

介護保険制度の改正も男性介護者に影響を与えそうだ。国は在宅介護を推進しているが、要介護度が軽い人向けの訪問介護と通所介護サービスは昨年4月までに介護保険から市町村事業に移り、事業者がサービスから撤退する動きもある。

津止教授は「在宅介護分野のサービスが悪くなると、仕事を辞めて介護に従事する状態になりかねない。男性が介護離職すると、男女の収入の差が悪い方向に働き、家計が一気に厳しくなりがちだ。国は軽度の人向けのサービスを手厚くする必要がある」と指摘する。




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