海に撒く「散骨」で遺族が「遺骨ロス」になるケースも

簡素で格安な葬儀が人気となっている。参列者を集めないタイプの「家族葬」、葬式をせずダイレクトに火葬する「直葬」、そして墓を建てず遺骨を海に撒く「散骨」、遺骨を宅配便で寺院に送って供養してもらう「送骨」……では、そこに問題はないのか? 浄土宗僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏が分析する。

新しい葬送サービスには、注意が必要だ。

例えば散骨。確かに散骨をすれば、墓地代や管理費が抑えられる。だが、ある散骨業者に取材をしたところ、全てを散骨する遺族は全体の2割程度で、遺骨の一部を海に撒き、一部は永代供養にすることが多いという。故人は海洋散骨を希望していたが、親戚一同の同意が得られず、折衷案として部分散骨にするというケースだ。この場合、二重に費用がかかってくる。

また、全部散骨した場合、その後、「遺骨ロス」になるケースもあると聞く。お盆やお彼岸が到来し、帰省・墓参りのニュースを見るたびに、「わが家には手を合わせる墓がない。故人の遺志を尊重して全て散骨したことが正しかったのか」と、苦悩してしまうのだ。

送骨もリスクがある。愛媛県の寺院が送骨のための納骨堂経営の許可申請をしたところ、行政が不許可とした。全国から宅配便を使って遺骨を集めれば、納骨堂の収容力を超えてしまう危険性があることなどが理由だった。この処分を巡ってはその後裁判になり、2014 年に高松高裁は寺院側の訴えを退けている。

新しい葬送ビジネスは法的にグレーゾーンであるケースがままある。最悪、サービスがストップし、大切な遺骨が“彷徨う”こともありうる話なのだ。

流行や低価格の表示に安易に飛びつかず、心を込めて普通の葬送をきちんとやる。このことこそ、最終的にはもっとも負担のかからない方法だと言えそうだ。

【プロフィール】うかい・ひでのり

1974年、京都市生まれ。成城大学卒業後、新聞社記者、日経BP社を経て2018年に独立。主に「宗教と社会」をテーマに取材を続ける。著書に『寺院消滅』、『無葬社会』(いずれも日経BP刊)など。近著に『「霊魂」を探して』(KADOKAWA刊)。現在、浄土宗正覚寺(京都市右京区)副住職、東京農業大学非常勤講師、浄土宗総合研究所嘱託研究員。




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