セブン、「ネットコンビニ」拡大に向けた難題

「2800の商品が瞬時に届けられる。2万店のリアル店舗を持っているわれわれしかできないサービス。今後の大きな成長の柱として期待している」。セブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長は自信たっぷりにそう語った。

セブンは5月10日、北海道の一部地域で実験しているネットコンビニの展開を拡大していくと発表した。ネットコンビニとは、客がスマートフォンからコンビニエンスストアで扱うおにぎりや弁当などの商品を注文し、店舗に在庫があれば最短2時間で自宅など指定した場所に配送されるというサービスだ。

■日販は最低2万円をもくろむ

注文は午前5時~7時の2時間を除き、24時間受け付ける。配送は午前11~午後8時の間で、1時間単位での指定ができる。先行して実験している北海道地区の場合、配達料は216円(税込み・以下同)。最低注文額は1000円で、3000円以上の注文をすると配達料が無料となる。

全国2万店超の店舗網を生かした宅配サービスを展開することで、新たな顧客の獲得や、店舗の日販(1日当たり1店売上高)を向上させるのが今回の取り組みの狙いだ。セブンの2017年度の全店平均日販は65.3万円と業界トップだが、ここ数年伸び悩んでいる。会社側としてはネットコンビニの導入で最低2万円程度の日販上積みをもくろむ。

現在、北海道の札幌市や小樽市の25店のみで実験しているが、2019年8月までに北海道の全店舗(約1000店)にサービスを拡大する予定だ。2019年度中には全国の加盟店にもサービスへの参画を推奨していきたいとする。

ただ、サービス拡大にあたっては課題も見受けられる。最大の問題は店舗オペレーションの負荷だ。

今回のネットコンビニは利用する際には、まずスマホで依頼する店舗を選んだうえで、商品を注文する。注文を受けた店舗の従業員は、注文された商品が店舗にあるかを確認し、タブレット端末に在庫の有無を入力。その後、在庫状況は注文した客のスマホにショートメッセージで届く。在庫がなかった場合、客は再度購入する商品を決めるか、キャンセルするかを選んで、ようやく注文が確定。従業員は商品を売り場からピックアップし保管、配送会社に引き渡すという流れだ。

■加盟店オーナーからは不安の声も

このようにコンビニ店舗の従業員は、在庫確認や商品のピックアップなど作業量の増加が懸念される。古屋社長は「加盟店はすごく関心を持っている。やるやらないは加盟店の判断だが、店にそんなに負荷がかかるものではない」と強調する。

だが、関東地区でセブン店舗を運営する加盟店オーナーは「ネットコンビニは、いつ注文が入るかわからない。即時性が求められるサービスだと思うが、オーナーや従業員が注文状況のチェックに張りつくわけにはいかない」と不安を口にする。

すでにセブンは、食品を中心とした宅配サービス「セブンミール」を展開している。通常のセブン店舗にはない健康志向の弁当や調理キットなども扱っているのが特徴だ。配達方法は加盟店のスタッフが担うか、加盟店が配達料を負担して外部に委託するかの2通りだ。前出のオーナーは「配達にコストがかかり、赤字。自分の周りのオーナーはセブンミールの取り扱いをどんどんやめている」と打ち明ける。

今回のネットコンビニの配送を担うのは2017年に業務提携したセイノーホールディングスが設立した宅配子会社、GENIe(ジーニー)だ。加盟店はジーニーに配達料を支払う必要がある。会社側は「加盟店が負担するが、本部も金銭的にバックアップする」と説明。古屋社長も「客単価2000円として1日3件注文があれば店の損益分岐点を下回らない」と話すが、思惑通りいかなければ加盟店の負担が増すこともありえる。

■首都圏で需要が見込めるのか

サービスそのものに対する需要も未知数だ。買い物難民が想定される地域であれば一定の需要は見込めるかもしれない。だが、店舗数の多い首都圏や中核都市でも、現在実験しているエリアのような需要が見込めるのだろうか。さらに、全国展開を視野に入れる中、配達を担うジーニーについても、十分なドライバーを確保できるのかも不透明だ。

コンビニを中核事業とするセブン&アイグループは、デジタル戦略の転換点を迎えている。2015年11月に立ち上げたグループ統合ECサイト「オムニセブン」は軌道に乗らず、2017年度決算ではオムニセブンにかかわるソフトウエアの大半が減損処理され、234億円の損失を計上した。

目下、会社が掲げるデジタル戦略のキーワードは「CRM(顧客関係管理)」。6月からはコンビニのセブンや総合スーパーのイトーヨーカドーを皮切りに、業態ごとにスマートフォンアプリを順次立ち上げる。客の購買行動をリアル店舗でも把握、新しいサービスにつなげる狙いだ。

ネットコンビニは、新たに立ち上がるセブンアプリとは別のWebサービスを活用する。短期間に多くの新サービスが乱立する事態となり、消費者側からはわかりづらさもあるだろう。会社側はネットコンビニをデジタル戦略の柱の1つと位置づけるが、アマゾンを中心に競合も攻勢を掛ける中、今回の取り組みを軌道化させるのは決して容易ではない。




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