本物抜き取り偽物を封筒へ 神奈川で「カードすり替え型」窃盗急増

本物のキャッシュカードを偽物にすり替え、封筒などに入れた上で相手に返す。こうした「カードすり替え型」と呼ばれる手口の被害が神奈川県内で急増している。容疑としては窃盗に該当するが、県警では特殊詐欺グループが考案した新たな手口とみている。被害に遭ったこと自体に、すぐには気付きにくい側面もあり、県警は警戒を強めている。
              

◆特殊詐欺犯か

年の瀬が迫った昨年12月中旬、川崎市中原区に住む80代の無職女性宅にスーツ姿の男が現れた。直前に金融庁職員を名乗る人物から、「あなたの口座から30万円が引き出された。キャッシュカードを使えないようにするため、口座番号や暗証番号を教えてほしい。また、被害額は補償可能なので、これから向かう男に確認のためカードを見せてほしい」と電話が入っていた。

女性が男にキャッシュカードを手渡すと、男は自前の1枚の封筒にカードを入れ、「封筒に上から印鑑を押すので、印鑑も持ってきてほしい」と依頼。女性が持って戻ると、男は封筒ののり付け部分に印鑑を押し、「確認は済んだので、間違ってカードを使わないようこの封筒に入れておきました。来週また連絡するので、それまでは封を開けないでください」。男はそう言い残して、立ち去った。

封筒の中身がコンビニエンスストアのポイントカードだったことに女性が気付いたのは、その日の夜。女性が同居する長女に、その日の出来事をなんの気なく話したときだった。

県警捜査2課によると、この事件では、実際に口座から現金を引き出されるなどの被害も確認されている。捜査関係者は「被害者の口座から現金を引き出す行為も含めて刑法上は窃盗容疑だが、関与しているのが特殊詐欺グループであることはほぼ間違いない」との見方を示す。

◆二段構えで?

同課がこうした「カードすり替え型」の窃盗を初めて認知したのは、平成29年3月。同年末までに認知件数は84件に上り、今年は3月までで、すでに68件の被害が確認された。本物が手元にあると思い込み、発覚が遅れるケースもあり、同課によると、1週間後に、ようやくすり替えに気付いた被害者もいたという。

「カードすり替え型」に似た手口としては、キャッシュカードを直接手渡しでだまし取る「カード手渡し型」がある。これは、被害者を誤認させているため、詐欺の手口に当たる。捜査関係者は「手渡しを不審がられたら、受け取っていないように見せかけるすり替え型に変える。二段構えで犯行を計画している疑いが強い」と指摘する。

◆地道な啓発続く

一方で県警は、特殊詐欺被害を未然に防いだコンビニや金融機関の従業員ら市民に、積極的に感謝状を贈呈しているほか、地道な啓発活動を続けている。

相模原署が今月10日に相模原市中央区の田尻自治会館で開催した特殊詐欺撲滅イベントでは、県警防犯応援大使を務める漫才コンビ「世界事情」がネタを披露。同署員の意見を取り入れて作った“防犯漫才”だ。「手口はいろいろあるけど、渡さないことが大事」「じゃあ、奥さんにも渡せないね」「それは家で話し合って」などという掛け合いが笑いを誘い、防犯対策も学べる。

同署は、携帯電話の着信履歴のほか、自宅の固定電話でも、相手の電話番号がモニターに表示されたら、不審な電話の番号をメモし、会話の内容もメモして共有してほしいと呼びかける。

同署幹部は「地域の皆様の協力が、犯行グループの手段の解明などには欠かせない。今後も不審な電話の情報を集めるなどして、犯行グループの摘発を進めたい」と話した。

【用語解説】特殊詐欺

電話やメールなどを使用して不特定多数の相手とコンタクトを取り、金銭などをだまし取る詐欺。手口別に8類型があり、そのうち、オレオレ詐欺▽架空請求詐欺▽融資保証金詐欺▽還付金詐欺-の4類型を総称して「振り込め詐欺」と呼ぶ。警察では、実際に振り込み行為のない、カードや現金の「手渡し型」も統計上、「振り込め詐欺」に計上している。




http://www.sankei.com/region/news/180420/rgn1804200043-n1.html