学びの代償~奨学金返還の実情(4・完)市町支援制度相次ぎ導入

静岡県内の市町が、奨学金の返還支援の制度を相次いで導入している。地元産業の人手不足や若年人口の流出に悩む自治体が、若者を呼び込む施策の一つとして着目する。

静岡新聞社は3月、県内全35市町を対象にアンケートを行った。何らかの返還支援の制度があると回答したのは14市町。このうち、成績や職業の要件を定めた奨学金に限らず、利用者の多い日本学生支援機構の奨学金を支援対象に含むと回答したのは6市町だった。南伊豆、河津の2町は奨学金の利子負担の補助制度を設けている。

2018年度以降に支援を本格実施するその他の4市は、若者の定住促進の意図が鮮明な制度を打ち出した。

磐田市は18年度、「Uターン促進 奨学金返済支援補助金」を始めた。対象者は、高卒時に市内に在住していて、県外に進学した後でUターンし、就労している30歳以下の市民。同市の担当者は対象者を絞った理由について「定住促進の効果を出すため」と説明する。

地元産業の人材確保を目指す富士市も18年度、30歳未満で市内在住の正社員の奨学金返還を支援する中小企業を対象に、支援額の9割を市が助成する制度を開始する。富士宮市も若者の職場定着を目的に、市主催の雇用環境整備セミナーを受講した市内の中小企業に勤める返還中の市民に対して助成を始める。

沼津市は19年度から、地元企業のPRと学生のUIJターン促進を狙い、地元の中小企業に就職した市民に補助を始める予定。

返還と若者の地方定着を絡めた動きは全国でも広がっている。地方のニーズの高い分野を専攻する学生などを対象に、日本学生支援機構の無利子奨学金の「地方創生枠」を優先的に貸し付け、地元就職などを条件に返還を減免する制度も全国で導入が進む。県雇用推進課によると、本県でも費用対効果や規模を含めて調査・研究中という。

返還支援に対する若者の関心は高い。県が昨年開いた「次代を担う若者たちによる県民会議」でも、県内就職で返還が免除される奨学金の創設が要望事項に上がった。

ただ、複雑な心境を明かす返還者もいる。下宿代の節約のために磐田市の自宅から奨学金を借りて県外大学に通った契約社員の女性(32)は通学形態や年齢制限から、同市の支援の対象外になった。支援制度を好意的に受け止めながらも、こう訴える。「自治体の意図は理解できる。でも、当事者としては条件にかかわらず、より苦しんでいる人を助けてほしい」」

<メモ>

自治体による奨学金の返還支援の動きは、地方にとって若年人口の確保につながり、若者にとっても経済的負担を軽くできる利点がある。

奨学金問題に詳しい聖学院大の柴田武男講師は、市町による教育費支援の拡大の利点を評価する一方、「支援できるだけの財政力のある自治体に若者が集中し、自治体間の財政力の格差を助長する可能性もある」と指摘する。さらに「自治体側の事情でなく、返還中の若者の現状を踏まえた支援の拡充も欠かせない」と話した。




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