学びの代償~奨学金返還の実情(3)義務理解し資金計画を

奨学金は文字通り、学びを奨(すす)めるお金。返還能力にかかわらず借りることができる。他方で、資金計画を立てなくても大きな金額を借りられることが、借り過ぎや返還困難を招くとの指摘もある。だからこそ、啓発が課題となっている。

「返還は何年続くのか」「毎月の返還額は」。御前崎市の静岡県立池新田高で2月中旬に開かれた奨学金説明会。返還シミュレーションを目の当たりにした生徒から、将来の負担への質問が相次いだ。

説明会は、日本学生支援機構が高校から要請を受けてファイナンシャルプランナー(FP)を無料派遣する「スカラシップ・アドバイザー派遣事業」。奨学金を利用予定の高校生への啓発のため、ことしから本格的に始まった事業の県内初回だった。

大学生活4年間で毎月10万円借りた場合、返還額は480万円に利子が加わり、卒業後20年間にわたり毎月2万円余を返還する―。講師でFPの江間万紀子さん(49)=浜松市西区=は奨学金の手続きだけでなく、返還計画の説明にも時間を割いた。

若者の収支の事例を示し、返還や貯蓄に回せる金額を毎月約2万円と紹介。「皆さんは何歳で返還が終わりそうですか」。進学希望の2年生と保護者の約40人に問い掛けた。

一方、高学歴ほど高収入となる傾向も示し、こう締めくくった。「奨学金は借金でも自己投資でもある。悪いものではない」

説明会は約1時間。生徒はワークシートに自身の資金計画を書き込みながら、耳を傾けた。終了後、複数の生徒からは「親が返すものだと思っていた」との声も漏れた。

学生の返還義務についての理解は十分とは言えない。同機構の2015年度の返還者調査では、延滞者の約半数が申し込み前に義務を認識していなかったことが明らかになった。

返還の延滞には延滞金や「ブラックリスト」への登録などペナルティーがあり、若者の負担を一層重くする。さらに、次世代の奨学金の原資となる返還金の未回収は、事業そのものの存続をも脅かす。

啓発を歓迎する声は、学校現場からも。県中部のある高校教諭は、貸し手でも借り手でもない教諭が、複雑な制度の説明や手続きを担う現状に疑問を感じていた。「金融の専門家でないのに多額の借金の相談を受け、適切に助言する自信もなかった」

学生のより良い進路選択、奨学金事業の継続的な運営、教員の多忙化解消―。同機構による啓発の効果は大きいと期待されている。

<メモ>

大学や専門学校を卒業さえすれば、ゆとりを持って返還できるだけの安定収入を続けて得られる-という保証はない。

日本学生支援機構の2015年度の返還者調査では「年収300万円未満」との回答が延滞者の77%、無延滞者でも55%に上った。

NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡の津富宏理事長(県立大教授)は「これからの若者の人生には病気や失業など想定外の困難もあり得る」と指摘する。一方、近年は所得連動返還をはじめ、返還制度の改善も進む。「奨学金制度について情報を集め、困難と前向きな展望の両方について親子でしっかり話し合うことが大切」と呼び掛ける。




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