<超高齢化>“生涯未婚者急増”で大注目「成年後見」

2015年の国勢調査によると、同年に69歳だった男性の未婚者は4万3000人、それがわずか3歳若い66歳では10万4000人もいました。今後、子供がいない単身高齢者はさらに増えると予想されています。将来、その人たちの意思を代弁するための制度が「成年後見」です。相模原市「みその生活支援クリニック」院長で、在宅医療・介護問題に詳しい小野沢滋医師が解説します。

◇団塊世代以降の未婚者急増で何が起きるのか

1980年の国勢調査では、45歳で未婚(結婚したことがない)の人の割合は男性3.6%、女性4.4%%でした。これが15年後の1995年国勢調査では男性13.6%、女性5.9%に上昇しました。35年後の2015年調査では男性27.7%、女性17.7%です。男女ともに生涯未婚率(50歳までに結婚したことがない人の割合)は上昇の一途です。

1980年に45歳だった人たちは1935(昭和10)年生まれで、現在83歳。彼らの未婚率は低く、今認知症になっている人、なろうとしている人たちのほとんどは一度は結婚したことがあり、その多くに子供がいると考えられます。

しかし、今から10年後、団塊世代の人たちが80歳を超える2027~28年ごろ以降、結婚したことがない、子供や配偶者のいない人が認知症になり始めます。その数は男女とも今の2倍程度になるとみられています。

また、今からおよそ35年後の2053年ごろには、認知症の人の2割程度は身寄り、つまり「面倒をみてくれる子供や家族のいない単身者」という状況になると予想されています。そのときに誰が彼らの意思を代弁するかが大きな問題になってきます。

夫婦間の子供の数はこれまでの高齢者は3人以上でしたが、団塊の世代以降は2人、さらにその後の世代は2人を切っています。

私たちはいま、団塊の世代以降のほとんどの人が人類史上初めて、80歳を超えて生きる時代を迎えています。同時に、子供のいない、もしくは子供が少ない高齢者も急増しています。彼らが要介護になったり、認知症になったりしたとき、その意思を代弁してくれる誰かが必要であり、その答えの一つが「成年後見制度」です。

◇本人意思の尊重を目指す「成年後見制度」

成年後見制度は1999年の民法改正でスタートしました。元々の制度は、100年以上前の旧民法で規定された「禁治産・準禁治産制度」です。禁治産者とは、心神喪失の状況にあり、正常な判断能力がないと家庭裁判所に宣告された人を指します。

民法改正までは、禁治産者、準禁治産者と宣告されると、戸籍にその事実が記載され、財産の管理権、選挙権など多くの権利が制限されました。また、戸籍にもその事実が記載されました。本人の権利の尊重より、旧民法下の家制度のもと、家の存続や財産保護に主眼が置かれた制度でした。

介護保険導入と時期を同じくして民法が一部改正され、成年後見制度がスタートしました。そこでは本人意思の尊重が重視され、残存能力の活用が促され、ノーマライゼーションを目指すものとされました。禁治産者の言葉は「成年被後見人」に変わりました。

成年後見制度の「法定後見」には、3つのタイプがあります。「成年後見」=精神上の障害で判断能力を「欠く常況にある」人が対象▽「保佐」=精神上の障害で判断能力が「著しく不十分な」人が対象▽「補助」=精神上の障害で判断能力が「不十分な」人のうち、後見や保佐に至らない軽度の人が対象--です。

後見、保佐、補助は申請者からの申請と、医師の診断書に基づいて家庭裁判所が審判し、宣告します。

成年後見制度には法定後見のほかに、判断能力が衰える前から、信頼できる誰かに契約で代理権などをお願いする「任意後見」制度もあります。任意後見は全国で年間2500件ほどで、ほとんどが法定後見制度の利用です。それも最も重度である「後見」が全体の8割を占めています。

◇法人も法定後見人になれる

私の外来に来ているA子さんは、長く病院補助などをしながら働いてきました。子供はいません。高齢で認知機能が低下したため、お金の管理やそのほかのことが難しくなり、今は有料老人ホームに入っています。

A子さんの外来に付き添い、受診に必要な書類記入やさまざまな身の回りの世話をしてくれる女性がいます。施設の職員ではなく、A子さんの法定後見人を務める法人後見人「NPO法人市民後見人の会」(東京都品川区)の担当者です。実は個人の専門職ばかりではなく、法人も法定後見人になれます。

理事長にお話を聞いたことがありますが、「市民後見人の会」ではその仕組みが非常によく考えられており、後見の質がきちんと担保されていました。私は、子供や身寄りのいない高齢者が増える社会を見すえたとき、法定後見を引き受ける法人が、互助を目的にたくさん設立されればいいと考えています。

自分の心情を理解してくれる、信頼できる人や信頼できる法人に、法定後見の前の段階の任意後見から支援をお願いできれば、体や頭が動かなくなったときでも、さまざまな意思を代弁してもらえます。社会的な健康を目指して、信頼できる任意後見人を早くから見つけておく、という時代が来ることを祈っています。

小野沢滋(おのざわ・しげる):

1963年相模原市生まれ。90年東京慈恵会医科大学医学部卒業。在宅医療をライフワークにしようと、同年から亀田総合病院(千葉県鴨川市)に在籍し、99年同病院の地域医療支援部長に就任。22年間、同病院で在宅医療を中心に緩和医療や高齢者医療に携わってきた。16年に相模原市内で在宅医療専門の「みその生活支援クリニック」を開設。一般法人社団エンドライフケア協会理事。相模原町田医療介護圏インフラ整備コンソーシアム代表。毎日新聞医療プレミアで「超高齢化時代を生きるヒント」を連載中。




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