エンゲル係数、なぜ高い 首相「食生活変化」 野党「生活苦しく」

家計の支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数が高止まりしている。二〇一八年春闘でトヨタ自動車など一部の大手企業は賃上げを決めたが、中小企業の交渉はこれからがヤマ場だ。食品価格が上昇を続ける中、十分な賃上げが実現しなければエンゲル係数はさらに上がり、国民の生活は苦しくなる。 

◆魚、肉が上がる

総務省によると、二人以上の世帯の一七年のエンゲル係数は25・7%。前年より0・1ポイント下がったが、安倍政権が始まった一二年と比べると2・2ポイントの上昇となった。一六年以降は一九八七年(26・1%)に近い高水準が続く。

野党は一月三十一日の参院予算委員会で高いエンゲル係数について「生活が苦しくなった証拠だ」と政府を追及した。だが安倍晋三首相は「(上昇には)食生活や生活スタイルの変化が含まれる」と答弁。雇用改善などアベノミクスの成果を強調して切り返した。

ではエンゲル係数の上昇要因は何か。本紙は一二~一七年の2・2ポイント分の上昇に関し、みずほ証券の末広徹氏に分析を依頼した。

その結果、まず食品の値上がりでエンゲル係数は2・2ポイント分上昇。さらに収入が増えない中、多くの世帯が全体の消費を減らし支出に占める食費の割合が高まったことで0・3ポイント分上がった。家計は安い食品を選ぶ節約で0・3ポイント分を引き下げたが、差し引き2・2ポイント分、係数は上がった。

政府や日銀が重視する「生鮮食品を除く物価」は一二~一七年で3・7%上昇。だが食品価格はこの上昇率を超えて上がり、魚介類は23・1%、肉類は16・6%値上がりした。飼料や燃料費の上昇、人手不足などが重なった影響だ。末広氏は「多くの家庭が『生活は厳しい』と感じている」と指摘する。

◆調理食品増え

安倍首相はエンゲル係数の上昇要因に関し「食生活や生活スタイルの変化」を挙げた。では食生活の変化は、国民が豊かになったことを示しているのか。

この五年で目立つ食生活の変化は総菜や弁当など「調理食品」への支出増だ。二人以上の世帯の一七年の調理食品への支出は月平均九千六百三十五円で、一二年より14・7%増えた。これを「『食』の選択肢が増えて豊かになった」と解釈することも可能だが、末広氏は「家事に時間をかけにくい共働き世帯がコンビニなどで調理食品を買うことが増えた。自ら料理する余力がない高齢者も調理食品を買っている」とみる。

しかもこの五年で調理食品は9・4%値上がり。東京都品川区の男性(70)は「即席ご飯と缶詰が主食だよ。肉や魚は高いから買わない。年金は増えないし不安だ」と話す。

一二~一七年には外食費が7・1%増える「食生活の変化」もあった。だが主に外食費を増やしたのは、10・4%増だった高所得世帯(一七年の年収八百二十二万円以上)。低所得世帯(同三百二十七万円以下)の外食費は0・5%増にとどまった。浮かび上がるのは外食を控えて節約する低所得世帯の姿だ。食品価格がさらに上がれば、生活は一段と圧迫される。




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