2年後に猫の寿命が倍に? 死因トップの腎不全から猫を救う特効薬の最前線

ネコの死因トップを占める腎不全に立ち向かう製剤や機器の開発が進んでいる。「ネコの寿命30歳」を現実のものとすべく奮闘する最新の医療現場を追った。

2016年末発売の「NyAERA」第1弾の取材で、「3年後にネコの寿命が倍近くになります」と宣言した東京大学大学院医学系研究科の宮崎徹教授。今回研究室を再訪し、宮崎教授ご本人からネコの腎不全特効薬の開発の進捗を聞いた。

続報の前に少しおさらいが必要だろう。宮崎教授は、血液中にある「AIM」という約350個のアミノ酸からなるタンパク質が、人間やネコの腎機能改善に大きく寄与していることを立証。16年に相次いで研究論文を発表した。

このことは同時に、「ネコは人間と違い先天的に活性化しないAIMしか保持していないため腎機能障害に陥りやすい」というメカニズムも解明した。そこで宮崎教授は、人為的に大量抽出したAIM製剤を開発し、それをネコに投与すれば死因のトップを占める腎不全の治療に画期的な効果を及ぼす──そう確信し、冒頭の「寿命倍」発言につながったのだ。

AIM製剤の開発の現状はどうなのか。宮崎教授は言う。

「AIMタンパク質を薬剤として開発するに当たっては、いかにして純度と生産性を担保するかが最大のハードルだと考えていました」

AIMタンパク質の製剤過程は、化学的に合成するのではなく、抗体医薬などと同じように、体外で培養した細胞の培養液から抽出する生物学的な手法に基づく。このため、薬剤として効率的に大量生産するにはコスト面で高いハードルが予想された。

ところがこの難題は、17年4月の段階でクリアできたという。高純度のAIMを大量生産できる細胞の開発に成功したのだ。

「研究室で培養してきた細胞と比較すると、最大500倍という効率の良さで、かつ高純度のAIMが生成できる細胞を開発しました。何百万個の細胞の中から創薬に理想的な細胞をこんなに早く見つけ出せたのは本当に幸運でした」(宮崎教授)

開発の扉を開いたのは、宮崎教授が発案し、AIMの製薬・販売普及を目的に16年に設立したベンチャー企業だ。AIMによるネコ腎不全治療に共鳴、支援する企業関係者らと宮崎教授が共同運営している。

「全世界のネコが潜在的な患者になります。最終的には人への応用を見込んでいます」

宮崎教授は今回開発した製法によって、全世界のネコに投与するのに十分な製剤を確保できる、と見込んでいる。

今後は農林水産省への薬事申請に向け、薬剤の安全性や安定性を確認し、順調に進めば18年10〜11月には第1号の治験原薬を完成させる予定だ。その後、半年〜1年かけて臨床試験を行い、最短で2年後の商品化が視野に入っている。

AIMタンパク質製剤は、ネコの腎不全治療薬としてだけでなく、前段階である泌尿器疾患全般の予防薬としても効果が期待できる。「2年後に猫の寿命が倍になる」のも、まんざら夢ではない状況だ。

一方、高齢ネコに多くみられる、体内の老廃物を排出できなくなる「慢性腎臓病」の進行を遅らせる抑制剤が17年4月に発売された。動物用医薬品として国内で初めて、「腎機能低下の抑制」の効果・効能が認められた「ラプロス」だ。

「東レ」が製造販売承認を取得し、「共立製薬」が発売元となる。両社は腎臓に直接作用するラプロスの特徴として、「飲ませやすい小さな錠剤」「食欲不振を改善し、体重の減少を抑制する」「活動性の低下を抑制する」といった点を挙げる。

腎不全で失われた腎機能を代替する「人工透析」の大半を占めるのは、機械を使って人工的に血液を浄化し、老廃物を除去する「血液透析」だ。近年は、動物用血液透析装置を導入する動物病院も増えている。国内主要メーカーの「リーフインターナショナル」(本社・東京)は08年以降、農林水産省の承認を得た小動物血液透析装置「NCU−A」を国内で約40台販売。腎臓疾患のネコの延命治療に有効利用されているという。




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