人工呼吸器など日常的に必要な「医療的ケア児」10年間で1.8倍…自宅で暮らすため支援必要

人工呼吸器などをつけ、日常的に医療的ケアが必要な子ども(医療的ケア児)が増えている。自宅で暮らすためには、訪問看護や通所サービスなどの支援が欠かせないが、子どもの医療ケアを行う事業者はまだ少ない。国が医療的ケア児への支援強化を打ち出すなか、大学病院がサポートし、人材を育成する取り組みもある。

3人がかりで入浴を介助

「さあ、お風呂だよ。今日は何のお歌を歌おうか」。鳥取県湯梨浜町(ゆりはまちょう)の住宅で、脳の病気のため人工呼吸器を使っているリチャードソン恵美里ちゃん(2)の入浴が始まった。

この日は朝から、近くの訪問看護ステーション「くらよし」の管理者で看護師の松本由美子さん(46)と、同県米子市の鳥取大付属病院小児在宅支援センターの看護師、瀬川千春さん(33)が訪問。別の事業所に勤めるヘルパーの女性と3人で入浴を介助した。

ベッドの上で人工呼吸器を緊急蘇生バッグに交換。浴室に移動し、瀬川さんが恵美里ちゃんの体を支え、松本さんはバッグを手で押して肺に空気を送り、ヘルパーの女性が手際よく体を洗っていく。最初は緊張していた恵美里ちゃんも、気持ちよさそうに表情を緩めていた。

入浴後は、気管を切開した部分をきれいに拭いてガーゼを交換し、再び呼吸器につないで終了。普段は主に高齢者のケアをしている松本さんは「子どもの医療ケアは慣れないと不安もある。専門の看護師がそばにいると心強い」と話す。

瀬川さんは、同センターの人材育成プログラムの一環で、恵美里ちゃんの看護に同行する。同センターは、小児患者と家族の在宅生活を支援するため、同大付属病院と鳥取県、日本財団(東京)が2016年秋に開設。医療的ケア児の訪問看護に同行し、一緒にケアを行いながら、成人患者との違いや注意点などを説明する。同行支援のほか、特別支援学校や障害児の通所施設に出向き、教員や職員に対し研修を行うこともある。

脳神経小児科医でもある玉崎章子副センター長は「地域によっては、人工呼吸器をつけた子どもをみた経験がない医師や看護師もいる。自信を持ってケアをする手伝いができれば」と狙いを話す。

全国に約1万7000人「以前なら亡くなっていた子どもが助かるように…」

こうした取り組みが必要な背景には、医療的ケア児の増加がある。厚生労働省研究班の推計では、医療的ケアが必要な19歳以下の子どもは全国に約1万7000人おり、過去10年間で1.8倍に増えている。一方、厚労省によると、全国約9000か所の訪問看護ステーションのうち、小児も対象にしているのは3割程度に過ぎない。

恵美里ちゃんは、生後7か月頃、国指定の難病「ミトコンドリア病」の一種「リー脳症」と診断され、約1年間入院。脳や体の発達が遅れ、筋力の低下などの症状があり、人工呼吸器や鼻からの経管栄養が必要だ。母親の晶子さん(27)は「センターの支援のおかげで事業者が見つかり、家に連れて帰れてよかった」と話す。

玉崎副センター長は「医療の進歩で、以前なら亡くなっていたような子どもが助かるようになり、長命になった。そうした子どもを地域で支える態勢がもっと必要だ」と話している。

【医療的ケア児】

先天的な病気などで入院・治療後も人工呼吸器やたんの吸引、管を使った栄養補給などの医療的ケアが日常的に必要な障害児。寝たきりの子どももいる一方、歩いたり話したりできる子どももいる。

障害児の通所施設、25%が受け入れ

医療的ケア児が地域で生活するためには、障害児通所施設や保育所などの利用も欠かせない。厚生労働省によると、主に小学校入学前の子どもが利用する障害児通所施設は全国に約5000か所ある。そのうち、医療的ケア児を受け入れているのは約25%と推計され、重度障害児向けが中心だ。重度の心身障害がない医療的ケア児の場合、通所施設を利用できず、保育所や幼稚園でも受け入れてもらえないケースがある。

医療的ケア児については、一昨年の児童福祉法改正で初めて規定が設けられ、自治体に支援の努力義務が課された。厚労省などは今年度、地域での受け入れ場所を増やすため、保育所に看護師を派遣するなどのモデル事業に取り組んでいる。




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