<医療>ホントにすごい唾液のミラクルパワー

唾液は1日に1~1.5Lも分泌され、口の中をぬらしています。もし、唾液が出なくなったらどうなってしまうか知っていますか? 味覚がなくなり、重症の虫歯や歯周病になり、口の中がカビだらけになってしまうのです。唾液の大切な働きについて、日本大学の落合邦康特任教授が解説します。

◇唾液が作られる場所

唾液は、耳の前の方にある「耳下腺(じかせん)」、下あごにある「顎下腺(がくかせん)」、舌の付け根の辺りにある「舌下腺(ぜっかせん)」という3大唾液腺と、舌の表面や口腔(こうくう)粘膜に多く存在する「小唾液腺」で作られます。

耳下腺からはサラサラの唾液、舌下腺からはネバネバした唾液、顎下腺からは中間の唾液が分泌されます。サラサラした唾液は消化酵素のアミラーゼなどを多く含み、食事の時にたくさん分泌されて消化吸収を助けています。ネバネバした唾液は、かみ砕かれた食物の表面を被い、なめらかにして飲み込みやすくします。また、口腔粘膜の保湿や保護に関わり、細菌の侵入を防ぐ効果があります。

◇口の中が酸性になるのを防ぐ

もう少し細かく唾液の働きを見ていきましょう。

唾液の重要な働きの一つは洗浄作用です。食べ物のかすや口腔内に入ってきた細菌を洗浄・飲み下すことにより胃液や胆汁酸の力を借りて殺菌します。

口腔内の性質(pH)をほぼ中性に保つ働きもあります。虫歯の原因となるミュータンス菌は砂糖を分解して大量の酸を産生します。酢やレモンなど、飲食物にも酸を含む物があります。このため、食後は口の中は酸性になっているのですが、酸は歯の表面のエナメル質を溶かしてしまうので放ってはおけません。そこで、唾液中には重炭酸塩などが含まれており、その働きによって食後30分くらいでpHを元の状態に戻します。

また、唾液中には酸によって溶け出してしまうカルシウムやリンなどのミネラルが多く存在し、常に歯の修復を行って虫歯の進行を防いでいます。

◇味覚や感染防御にも関係

唾液は味覚にも深く関わっています。味は、舌表面の「味蕾(みらい)」という組織が唾液に溶け出した味物質を受け取り、その情報を脳に伝達することで感じます。ですから、唾液の量が減ると味覚も低下します。

口腔には食物などと共にさまざまな微生物が入ってきます。唾液には多種類の抗菌物質が含まれており、それらからの感染防御に役立っています。また、口腔には大量の細菌が生息しており、バランスによって味方にも敵にもなり得ます。唾液には、共生していくために細菌の発育を抑え、バランスを保つ働きもあるのです。

◇唾液が出なくなったら

では、唾液が出なくなるとどんなトラブルが起こるのでしょうか? 物をかんだ状態で、10分間に10mL未満しか唾液が分泌されない場合を口腔乾燥症(ドライマウス)といいます。

ドライマウスになると、まず、口が渇き、味がよく分からなくなります。さらに、物が飲み込みにくくなり、舌や唇、口腔粘膜に痛みが出ます。食欲が減退し、スムーズな会話ができなくなって、口臭もひどくなります。

抗菌作用のある唾液が減少するため、口内炎ができやすく、重症の虫歯や歯周病にもなります。さらに、口腔に常在するカビの一種「カンジダ菌」が増殖して口腔カンジダ症になります。そして、全身のさまざまな部位にカンジダ症を起こす原因になります。

◇ドライマウスの原因は

唾液の分泌量が減少する主な原因は、加齢による唾液腺細胞の減少です。その他、ストレス、口呼吸、不潔な口腔、乾燥した環境などの生活習慣も原因となります。糖尿病、唾液腺などの分泌腺が萎縮する自己免疫疾患のシェーグレン症候群、パーキンソン病やエイズなどの病気が関係していることもあります。降圧剤や抗うつ薬などの副作用も挙げられます。

高齢者でも物をかむ回数を増やし、こまめに水分補給をし、耳の前やあごの下を押す「唾液腺マッサージ」を行うことで唾液の分泌量を増やすことができます。健康のために、多くの唾液が分泌されるような生活習慣を維持することが大切です。

また、ドライマウスは深刻な病気につながったり、深刻な病気が原因だったりするので、症状を自覚したらできるだけ早く歯科や口腔科を受診することが必要です。




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