星野仙一を蝕んだ膵がん 発見された人のうち手術可能は2割

現役時代は中日のエースとして活躍し、引退後は中日、阪神、楽天の監督を歴任した星野仙一さんが、4日に亡くなった。死因は膵臓がん(膵がん)だった。国立がん研究センターがん情報サービスによると、2016年にがんで死亡した372,986人のうち、死亡数が多い部位は、男性1位肺がん、2位胃がん、3位大腸がんで、5位が膵がん。女性1位は大腸がん、2位肺がんで、3位が膵がんで、男女計では膵がんが4位となる。

気づかないうちに進行している膵がん。発見された人のうち、手術が可能なのはわずか2割ほどだ。しかし近年、新しい抗がん剤の登場で、手術可能な患者が増えている。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療 2017』から、最新治療などを解説する。

名古屋大学病院消化器外科准教授の藤井努医師は、腫瘍内科の範囲である抗がん剤にも精通しており、複数の治療を駆使して患者の余命期間を延ばしている。

注目すべき治療は二つ。ひとつは、「手術不可能の膵がんを、手術可能にする」治療法だ。

「膵がんは、手術をいかに可能にするかが、完治を望めるか否かの分かれ目です」(藤井医師)

大きく関係しているのが、4種類の抗がん剤を合わせたフォルフィリノックスと、ナブパクリタキセルという新しい抗がん剤だ。それぞれ13年と14年に国内で承認された。いずれも従来の抗がん剤より強い効果を発揮することが、臨床研究で示されている。

「従来法に新しい抗がん剤が加わり、治療の選択肢が増えました。これらを組み合わせ、手術不可能と診断された膵がんを縮小させるのです」(同)

もともとは、「手術可能の膵がん」が対象だった。手術前に抗がん剤を投与し、場合によっては放射線治療もすることでがん細胞が縮小、手術が可能になる。こういった手法は「術前療法」と呼ばれ、まだ膵がん治療のガイドラインには定められていないが、専門医を中心に用いられている。

さらに近年、「手術不可能の膵がん」に対しても、手術可能になることを目指して、抗がん剤投与や放射線治療がおこなわれるようになってきた。手術可能の膵がんに施すのとは違い、「どこまでやるか」の見極めが難しいが、これによって治療後の状態が大きく変わる。ただし、遠隔転移がある場合にはおこなえない。

注目されている治療のもうひとつは、腹膜播種に対する新しい治療だ。腹膜播種とは、がん細胞が発生した臓器とは別の臓器などを覆っている膜に、がんが飛び火している状態だ。

しかし藤井医師は、関西医科大学との共同臨床研究として、胃がんや卵巣がんで成果を出している治療法を応用している。

「おなかにリザーバーという差し入れ口を設け、そこから腹腔内に直接、抗がん剤のパクリタキセルを投与します」(藤井医師)

多くの薬が血管や粘膜を通して薬剤を浸透させるのに対し、がんに向かってダイレクトに薬を付けるということになる。

藤井医師と共同研究チームは、膵がんで腹膜播種になっている33人に実施。8人が不可能だった手術を受けられるようになった。この内容は、世界的に権威のある医学雑誌「Annals of Surgery」に掲載された。

「ただし、腹膜播種は小さいのでCTでも見つからないことが多い。なので私は、進行膵がんであれば審査腹腔鏡もおこないます」(同)

審査腹腔鏡は、CTなどの画像診断では検出できない腹膜転移を診断できる。腹膜播種が見つからなければ、抗がん剤や放射線で手術可能に持っていく。治療方針が大きく変わるので必須の検査だという。

「膵がんで手術不可能だと言われても、決してあきらめないでほしい。『治療が難しい』と言われても、ぜひセカンドオピニオンを受けてください」(同)




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