<調味料>時短需要で消費多様化…変わるしょうゆ、酢

しょうゆに、酢、みそ、みりん。江戸の昔から広く使われてきた調味料の消費が近年、大きく変わっている。

◇「つゆ・たれ」が台頭

伝統的な調味料の代表格、しょうゆの消費量は1980年以降、右肩下がりになっている。70年代には1人当たり年間12リットル近く消費していたのが、7リットル台まで落ち込んだ。背景にはメニューの多様化や健康志向に加え、女性の社会進出が進み、「時短」が望まれるようになったことがある。

しょうゆの減少を補うように伸びてきているのが「つゆ・たれ」だ。総務省統計局の家計調査報告によると、「つゆ・たれ」の消費量は94年、「しょうゆ」を上回った。めんつゆ、ポン酢しょうゆといった簡便な合わせ調味料や焼き肉のたれなどだ。これらはしょうゆをベースに作るが、塩分が少なく、他の料理にも使用できる。調理に時間をかけられず、持ち帰りの総菜で簡単にすませる消費者が増えたことも、増加の背景にある。

さらに、「料理提案型」の合わせ調味料も定着した。味の素が中華料理用の「クックドゥ」を発売したのは78年。マーボー豆腐や酢豚といった本格的料理が、肉や野菜にクックドゥを加えるだけで完成。「プロの味付けを家庭で手軽に」と提唱し、新しい食習慣となった。2011年以降、和食や洋食メニューをはじめバリエーションも増え、昨年の売り上げは発売当初の5倍以上に上る。このほか、食の多様化に伴い、他社からもさまざまな合わせ調味料が発売されている。

千葉県船橋市の主婦(52)は「きっちり量りながら、調味料を合わせるのは時間がかかる。でも、市販の合わせ調味料は味が安定しており、便利。『あと一品』作る時も、すぐに調理できる」と重宝している。よく使うのは「キムチ鍋の素(もと)」と「麻婆(マーボー)豆腐の素」という。東京都内の女性会社員(39)は「ポン酢は作ると割高だが、市販のものは楽でおいしい。中華風炒め物のもとは、自分では出せない味だから使う」と重宝する。

合わせ調味料の人気は酢も同じ。健康志向から、酢そのものの消費量は落ちていない。だがミツカンは14年に穀物酢に砂糖、塩などを加えた合わせ酢「カンタン酢」を発売。わずか3年で、同社の「穀物酢」の売り上げを上回ったのだ。味確認室の石井翔さんは「1本あれば味が決まり、ピクルスなどおしゃれな料理も簡単。作り置きブームの波にものった」と人気を分析する。「今後は、合わせ調味料に具が入った半調理品がますます伸びるのでは」とみている。

◇付加価値つけて

こうしたなか、旧来の調味料は付加価値をつけることで、生き残りをかける。キッコーマンの「生しょうゆ」をはじめとする「いつでも新鮮」シリーズは10年の発売の翌年から5年で10倍も売れ、100億円を超える大ヒット商品となった。キッコーマンによると、生しょうゆは加熱処理を行わず、穏やかな味と香りが「現代の味覚にマッチ」した。常温保存を可能にしたボトル容器もポイントだ。

大手メーカーだけではない。和歌山県御坊市の「堀河屋野村」の18代目、野村圭佑さん(37)は、同世代の醸造家や食の生産者らと手を組み、「100年後の食卓を見すえ、作り手として今、何ができるか」を考え、伝統食品の良さをアピールしている。300年前からの製法を守り続けていることに、健康を重視する発酵食ブームも追い風となっている。

◇ていねいさ必要

生活史研究家の阿古真理さんは「合わせ調味料や半調理品が増えるのは時代の必然」としながらも、「気になるのは、自分や家族の食卓にとって本当に必要なものは何かを見失いがちではないかということ」と懸念する。

自分たちの健康のために必要なものは何か。原点となる好きな味は。

それは、日々の食卓で培うことが基本だろう。例えば、作るのが面倒な料理はイベントとして外食で楽しむ。そして普段は簡便な調味料を上手に使いつつ、時間の余裕がある時には基礎調味料でていねいに作る。自分たちなりの工夫で、地に足のついた食卓を作ることが求められる。「食のバリエーションが豊富過ぎる今、料理を断捨離する必要があるかもしれません」と阿古さんは話す。




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