<観光白タク>「稼げる」 在日中国人、同胞客目当て

国内各地の空港を拠点に、中国からの観光客を当て込んだ在日中国人による違法な「白タク」が横行している。警察当局や国土交通省が取り締まりに力を入れるが、減る気配がない。スマートフォンで予約から支払いまで済ませる手軽さや、運転手が同胞という安心感が受けているとされるが、安全性や事故時の対応など問題がつきまとう。その実態を探った。

今月上旬、羽田空港国際線ターミナルの到着ロビー。現れたのはなまりのない北京語を話す男だった。四十がらみのジャンパー姿。待ち合わせた白タクの運転手だ。

2日前に中国語の予約アプリ「皇包車」で配車を注文した。乗車地や車種、チャーター時間を選択すると、運転手の名前や連絡用のアカウントが返信された。メッセージアプリを使って待ち合わせ場所と時間を確認した。

到着ロビーから徒歩3分の駐車場には、白ナンバーのワンボックスカーが止まっていた。同乗した知人の中国人が「築地や浅草を回りたい」と伝えると、車は東京都心方面に向かった。スマホを使いクレジット決済で払った料金は5時間で1595元(約2万7000円)。相場より5000円ほど高い。

運転はスムーズだった。標識が立ち並ぶ複雑な道路も難なく通過。ガイドよろしく名所案内をこなし、東京スカイツリーを見通せる穴場スポットも知っていた。

◇ 運転手「リーダーが割り振り、月収40万円」

「日本にはビジネスチャンスがある」

車内の空気が和んできたころ、運転手が身の上話を始めた。20年ほど前に来日。白タクの仕事は1年ほど前から始めた。中国の運転免許を日本の免許に切り替えたという。

意外な事実も明かした。「日本にいるリーダーから、その日の仕事が振られてくるんだ」。運転手によると、仕事を始める前にリーダーの面接を受けた。リーダーは9台の白タクを管理し、予約を受けると配下の運転手に仕事を振るという。運転手の給料は1日1000元(約1万7000円)。「1カ月働けば40万円は稼げる」

その後、このグループにメッセージアプリを通じて取材を試みたが、依頼の送信はブロックされた。

道路運送法は自家用車が有償で客を乗せる「白タク」を禁じている。利用者に罰則はないが、運転手は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」などが科される。タクシー事業をするには認可が必要で、運転手は2種免許を取得しなければならない。今回の運転手が専門教習を受けた様子はなく、事故に関する保険を付けるかは予約時のオプションになっていた。

警察当局は取り締まりに本腰を入れている。しかしスマホでの決済が捜査を困難にしている。警視庁幹部は「アプリ運営会社から運転手に報酬が支払われる仕組みで、客と運転手の間で直接の現金のやり取りがないため、犯罪の立証は難しい」と話す。

運転手も見透かすように言った。「警察に聞かれても『友達を乗せている』と言うんだ」。客に口裏を合わせてもらえれば追及をかわせるという。

羽田空港から観光地を巡って夕暮れ時の渋谷に着いた。「気をつけて旅行を楽しんで」。記者たちを降ろすと白タクは交差点の車列に紛れていった。

◇ 中国語できる運転手が不足

白タクはなぜ横行するのか。観光産業に詳しい「人流・観光研究所」の寺前秀一所長は「日本のタクシー会社には中国語のできる運転手がほとんどいない。旺盛な需要に対し、供給不足が起きている」と指摘する。

訪日観光客は2016年に過去最高の2400万人超となり、5年連続で増加した。このうち中国人は約640万人と約3割を占める。タクシー業界は20年の東京五輪・パラリンピックに向け、運転手の英会話力を向上させるため、検定試験を導入しているが、中国語の試験はないという。

一方、海外では自家用車に客を有償で乗せる「ライドシェア(相乗り)」が普及し始めている。最大手の「ウーバー」は約80カ国で営業を展開。観光客にとって「移動手段の一つ」になりつつある。羽田空港から白タクを利用したシンガポール人は「イタリア旅行でもライドシェアを利用したので、今回も頼んだ。日本では違法とは知らなかった」と話した。




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