非正規社員が多い県と少ない県の違いは?

年間所得は東京だけで全国の約「7分の1」

幸福度の基準、つまり「人がなにを幸福と思うか」という要因には、さまざまなものがあります。医療や福祉などの公共サービスの充実度、自然環境、治安のよさなど、数えあげたらキリがありません。そのなかで、「経済的な豊かさ」という点は、多くの人にとって基本として外すわけにはいかない要素だと考えられます。

「経済的な豊かさ」をみる指標のひとつが、都道府県ごとの年間所得でしょう。所得とは、企業や個人が商品やサービスを売ったり、権利料や利子、借地代などの形で一定期間に得たりした収入から、それを得るための経費を差し引いたものです。つまり、この所得が大きい都道府県は、それだけ経済活動が活発な地域ということになります。

「年間の県民所得」の上位は、労働人口も高収益の大企業も多い大都市を抱えた都道府県が占めています。内閣府が発表しているデータによると、2014年度の全国1位はやはり東京都。その金額は、じつに60兆4155億円です。これは、全国の所得総額の7分の1近い金額にもなります。経済の東京一極集中ぶりをよく示しているといえるでしょう。

2位は神奈川県ですが、金額は東京都の半分以下の26兆6424億円、続いて3位は大阪府、4位は愛知県と続きます。すると5位は、都市圏としての規模や知名度から、神戸市を抱える兵庫県とか、九州最大の都市圏を抱える福岡県あたりかと想像するかもしれません。

しかし事実は異なります。兵庫県は7位、福岡県は8位となっているのです。実際には5位、6位は東京都と隣接する埼玉県と千葉県となりました。

多くの県民が東京都内に通勤する埼玉県と千葉県は、ほぼ東京都と一体の経済圏とみなすことができるでしょう。東京都と埼玉県、千葉県、神奈川県の所得を合計すると126兆4787億円にもなり、これはなんと全国の所得総額の3分の1近くにもなります。経済圏としての「東京圏」がいかに大きいかを実感できるデータではないでしょうか。

厚生労働省が公開している各都道府県の最低賃金も、県民所得とほぼ比例しています。2016年10月の数字では、東京都が全国1位で時給932円、2位の神奈川県は930円、以下3位は大阪府、4位は埼玉県・愛知県、6位は千葉県で、東京近隣の県では、東京都に引っ張られる形で時給が高くなっていることがうかがえます。

埼玉、千葉はまだ経済発展の将来性が高い?

所得の総額からさらに踏み込んで、経済力の指標のひとつになるのが、各都道府県ごとの「企業の数」です。多くの企業がある地域は、それだけ多くの雇用が創出され、多くの富が生みだされているといえるからです。なお、ここでは各企業の登記上の本店所在地の都道府県でカウントしています。

2014年の全国の企業数をみると、1位は当然ながら東京都で47万7077社、2位は大阪府で30万9670社、3位は愛知県、4位は神奈川県で、5位は埼玉県、そして千葉県も9位につけています。

近年では、東京に本社機能を置くことによる災害リスク、また地価の高さなどの問題もあり、本社を東京から移転させる企業も少なくありません。とはいえ、重要な取引先が東京都内にある場合など、首都圏からは離れたくないケースも少なくないでしょう。

「企業の本社機能流出・流入数」ランキング(流入数が流出数より多いほど上位)では、埼玉県が全国1位、千葉県は全国3位となっています。東京都と隣接する埼玉県と千葉県は、東京からの本社移転による経済発展の将来性がきわめて大きい地域といえそうです。

ところが、「1人あたり県民所得」に目を向けると、また違った風景がみえてきます。1位はやはり東京都で442万3000円、2位は愛知県で343万7000円なのですが、意外なことに3位は静岡県、4位は茨城県、5位は滋賀県という結果でした。この理由はなんでしょうか?

まず、県民所得の総額では上位だった東京都の近隣県と大阪府は、いずれも人口が突出して多いという点が挙げられるでしょう。神奈川県の人口は東京に次いで全国2位、大阪府は3位、埼玉県は5位、千葉県は6位です。それだけ1人あたりの平均値でみれば所得額は小さくなるわけです。

愛知県の人口は全国4位ですが、それでも1人あたり金額が全国2位になるのは、製造業として日本最大の企業といえるトヨタ自動車(豊田市)と、その関連企業の収益力の高さがうかがえます。

第2次産業と第3次産業の違い

次に、雇用形態の影響が考えられます。同じ仕事内容でも、パートやアルバイトのような非正規雇用者よりも正規雇用者のほうが、長期勤続による昇給やボーナスなどもあり、手取りの金額が多くなることは当然です。いくら勤労者の人数自体が多い大都市でも、非正規雇用者の割合が大きければ、必然的に所得の総額は小さくなるのです。

2014年の全国の「非正規雇用率」(雇用者2014全体に占める契約社員、パート、アルバイトなどの割合)は、男性が25.3パーセント、女性が57.0パーセントです。

東京の近隣県も大阪府もそろって非正規雇用率が全国平均より高く、とりわけ千葉県では男性が30パーセント、女性が64.4パーセントにもなります。

いっぽう、1人あたり県民所得が上位の県のなかでも、愛知県、静岡県、栃木県は、いずれも男性の非正規雇用率が全国平均より下です。

それでは、非正規雇用者が多い県と少ない県の違いはなんでしょうか?

そのひとつのカギが、「第二次産業従事者の割合」でしょう。商店の店員や事務員などが属するサービス業(第三次産業)は、長期の安定した正規雇用にはならない場合が少くないのですが、工場勤務などの第二次産業従事者は、一定の専門技術修得に継続した訓練が必要なことなどから、長期的な正規雇用となりやすい傾向があるようです。

また製造業は、サービス業よりも雇用を守る労働組合の組織率が高いというデータもあります。これも正規雇用率を高めているのかもしれません。

2015年の国勢調査によると、「第二次産業従事者」の全国平均は24.1パーセント、第三次産業従事者の全国平均は71.9パーセントですが、1人あたり県民所得で上位の愛知県、静岡県、滋賀県、栃木県は、いずれも第二次産業従事者が32パーセント以上という結果が出ています。産業別の従事者の割合と、1人あたり県民所得の間にはなにかしらの相関関係があることが推定できます。

愛知県といえば、先ほど触れたトヨタ自動車が有名ですが、トヨタ系列の自動車部品メーカーとして知られるデンソーとアイシン精機(いずれも刈谷市)、ミシンやFAX、プリンターを製造するブラザー工業(名古屋市)など製造業の有名企業が少なくありません。

静岡県も、同じく自動車メーカーのスズキ(浜松市)を擁するほか、古くから建具など木工がさかんで玩具メーカーも多く、なかでもプラモデルのメーカーとして知られるタミヤと、バンダイの静岡工場(いずれも静岡市)が代表格といえます。また、楽器やバイクなどの製造で有名なヤマハ(浜松市)も静岡県が誇る企業です。

滋賀県は、工業素材に使われる炭素繊維の市場シェアで世界トップの東レ(大津市)を、地元企業として抱えています。栃木県も、世界のタイヤメーカーのなかでシェア1位を誇るブリヂストンの栃木工場(那須塩原市)や、日立グループで空調機器などを製造している日立アプライアンスの栃木工場(栃木市)があります。こういった規模の大きなメーカーの存在が、1人あたり県民所得の数値を高くしていると考えられます。

それとは反対に、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府はいずれも第二次産業従事者の比率が全国平均を下回っています。かつてであれば、神奈川県といえば川崎製鉄(現・JFEスチール)などの京浜工業地帯、大阪府といえば東洋紡などの紡績工場が産業の中心というイメージだったかもしれません。しかし、現在の神奈川県の第二次産業従事者は20.4パーセント、大阪府は22.6パーセントです。




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