運営費確保、管理に「限界」 京都府北部地域の社寺

「伊勢神宮の社殿と同じで本殿はかやぶき屋根。でも傷みが激しく雨漏りが…」。京都府福知山市大江町天田内の豊受大神社で4月上旬、17代目の河田光稔宮司(41)が見上げた。

伊勢神宮が三重県に鎮座する前にこの地にあったとされ、元伊勢外宮と呼ばれる。年間約3千人が参拝して親しまれるが運営費確保は難しい。1874(明治7年)築の神明造の本殿は本来、60年に一度の式年遷宮で建て替えなければならないが一度も行われず、10年でふき替えが必要な屋根さえ20年前のままだ。

多くの拝観料などが見込める有名寺院と違う、府北部の社寺をどう守っていくか。河田宮司によると、ふき替えには660万円かかるが、この2年で参拝者らからの寄付は200万円。インターネットで小口資金を募るクラウドファンディングも一案だが多忙でホームページもない。

「神様のお膝元に住み、逃げ道はない」。4年前に父章宏さんから継ぎ、同町内の神社の約6割に当たる25社の宮司を兼務。秋の例祭集中日には1日8社を飛び回るが、祭の玉串料などでは生活は厳しく、神社の務めがある日曜以外は市内の生コン工場で働き、この4年間休みなし。氏子がなく、合併する多喜記神社(同町南山)では最近、本殿上屋の倒壊を発見。「こっちも直さないと」

近年、世界遺産下鴨神社(京都市左京区)などで境内を利用したマンション計画が物議を醸した。理解は示すが、地方では境内での駐車場経営さえ成り立たない。河田宮司は今春、26社計800戸の連携を図る「氏子総代会」を立ち上げた。会合は来月。どう維持していくか、地域の大先輩たちと知恵を探るつもりだ。

人口流出は寺社の貴重な収蔵物の維持も困難にする。福知山市西部の宮垣地区にある旧威徳寺の観音堂。10~12世紀の作とされる千手観音や阿弥陀如来、完成前の仏像など約110体が所狭しと並ぶ。盗まれた仏像7体の写真も飾られ、「マニアの仕業か。今後どう守るか、本当に難しい」。宮垣自治会役員の垣尾孝一さん(70)が顔を曇らせた。

丹波の山奥になぜ、これだけの仏像があるのか。当時の信仰や製作技法に興味を持つ歴史ファンや研究者らが時折、足を運ぶ。16世紀、明智光秀が福知山城の石垣用の石塔提供を命じたが威徳寺などが抵抗。36カ寺が取りつぶされ、残された仏像が運び込まれたとも伝わる。市は1965年、観音堂仏像群として文化財に指定。その後盗まれ、今は府や市の補助を得て防犯センサーを備える。

「心のよりどころ」「この地で厳重に管理するのが本来の姿」。檀家(だんか)はなく、宮垣地区の住民が長年管理し、拝観要望にも対応してきた。昭和30年代半ばに100世帯あった自治会は現在13世帯で28人のうち20人が70歳以上。早晩、管理態勢に限界が来ると誰もが不安に思っている。

垣尾さんは自治会長だった3月末、センサーを行政機関に直結▽公民館に収蔵▽市が管理-といった維持方法の私案を市に相談。だが、警備対応や保管場所の確保の問題があり、市文化財保護係の松本学博さん(47)は「事情を知るだけにできるだけのことはしたいが」と複雑だ。

「国宝級ではないが、多くの仏像がここにある意味と何百年と受け継いだ先人の思いがある。守れなければ申し訳ない」と垣尾さん。地域の枠を越え、将来の在り方を考える議論が始まることを願う。




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