春は残業のしすぎに要注意! 手取り額が減ることも

こんにちは。「ワークルールとお金の話」の社会保険労務士 佐佐木由美子です。年度末から新年度へ、この時期とても忙しく、残業が多いという方もいらっしゃるのではないでしょうか? でも、この時期の残業は注意。それがかえって手取り額を減らしてしまうこともあるからです。

何の前触れもなく、突然同じ部署の女性スタッフが会社を辞めてしまったという慶子さん(34歳)。引き継ぎはもちろんのこと、代替要員を確保する時間もなかったことから、仕事内容の分かる慶子さんが、一手にカバーすることになりました。

普段はあまり残業することがなかったという慶子さんですが、退職者の業務をカバーするためにこの1カ月間40時間も残業する羽目になってしまったそうです。体力的には疲れたものの、残業手当がもらえるなら一時的なことだし仕方ない、と思いました。

慶子さんのような状況は、誰にでも起こり得る可能性があります。退職もそうですが、病気になったりケガをしたりして、一緒に仕事をしていたパートナーが突然働けない状況になってしまうこともあるかもしれません。マンパワーはそろっていても、突発的な仕事のトラブルなどで、残業を余儀なくされることもあるでしょう。

こうしたとき、残業手当をもらうタイミングによって、その後の給与に影響を与えることがあるのをご存じでしょうか?

私たちの社会保険料は、毎年見直されています。具体的には、4月・5月・6月に支給された給与の平均額をもとに、「標準報酬月額」が決まり、それに保険料率を乗じて計算します。つまり、この3カ月の間にたくさんの残業手当をもらってしまうと、平均額が上がってしまい、社会保険料もアップする可能性があるのです。

慶子さんのケースで考えてみましょう。通常は残業がないため、給与総額は通勤手当を入れて24万5000円。標準報酬月額は、24万円(23万以上25万円未満)となります。この場合、健康保険料は1万1892円、厚生年金保険料は2万1818円、合わせて3万3710円となります(2017年3月現在、協会けんぽ東京支部の場合)。

4月は昇給で給与が若干アップすることに加えて、3月に著しく残業をしてしまったことにより、その他の月に残業をしないとしても、標準報酬月額は28万円になってしまう見込みです。この場合、健康保険料は1万3874円、厚生年金保険料は2万5454円、合わせて3万9328円となります。つまり、社会保険料が毎月5618円アップし、年間でみると6万7000円を超えることになります。

社会保険料は、毎年9月分から1年間、大幅な給与の変動がない限り続くことになるので、このインパクトは大きいといえるでしょう。保険料が上がることで、将来の年金額や病気で会社を休む場合の給付金がプラスに転じることはありますが、手取りベースだけで考えると、ちょっと損をした気分になってしまうかもしれません。

会社から残業を命じられた場合は、特別な理由がない限りは従わざるを得ません。しかし、なるべく4月から6月にもらえる給与は、残業手当などが過度にならないように、心掛けておくとよいでしょう。ちなみに、通勤手当を3カ月や6カ月分でまとめてもらっている場合は、1カ月に直して加算されるので、心配する必要はありません。

協会けんぽは、2017年3月分(4月納付分)から、給与・賞与の保険料率が変更されました。東京支部の場合、9.96%から9.91%(0.05%マイナス)へ、介護保険料は1.58%から1.65%(0.07%アップ)となります。これを会社と本人で折半する仕組みとなっています。

協会けんぽは、支部(都道府県)別に、健康保険料率が異なりますのでご注意ください。なお、40歳以上になると、介護保険料の徴収も始まります。

社会保険料は翌月納付のため、4月給与から社会保険料が変更される会社が多いでしょう。わずかな変化ですが、給与の手取り額をアップするには、日ごろのパフォーマンスに加えて、給与明細書の読み方を知っておくことも大切ですね。

佐佐木由美子(ささき・ゆみこ)

人事労務コンサルタント・社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、【働く女性のためのグレース・プロジェクト】でサロン(サロン・ド・グレース)を主宰。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。




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