還元水が農業を変える!? 高知県で野菜の収量増など確認

電解水素水(還元水)という水をご存じだろうか。その名の通り、電気で分解した水でアルカリ性を帯びる。この還元水の農業利用が注目され始めた。高知県南国市を中心に行われてきた実証栽培では収穫量の増加や産品の高品質化が確認された。産学官が連携し、技術の普及やブランド化の動きも本格化している。水で「農」は変わるのか。取り組みをのぞいた。

JA南国市が市内に新設した次世代型園芸ハウス。無数のピーマンとパプリカの苗が整然と並ぶ。この苗床に供給される水は、全て還元水だという。別室に水を作る整水機が並び、ためる巨大タンクもそびえている。

ハウスには、還元水の効果を調べるため普通の水で育てる区画も設けられた。「どれだけ差が出るか、楽しみ」。切り盛りするスタッフも興味津々だ。

医療用にも使われる還元水の農業利用は、整水機メーカーの日本トリム(大阪府)が着眼した。2012年からJA南国市が出資する農業法人「南国スタイル」などの事業者が実証的に使い、産品の収量増と機能性アップが確認された。

これが高知県や南国市の目に留まり、高知大学も加えた5者が2015年、普及や検証で連携する「還元野菜プロジェクト」を立ち上げた。以降、高知県産業振興計画や南国市の創生戦略に盛り込まれ、整水機購入の補助も開始。現在は南国市を中心に七つの経営体が実証的に使っている。

実証でどんな効果があったのか―。水道水などで育てた場合との収量比較を葉物6品目で実施し、青ネギで26%増、小松菜16%増、ほか4品目も5~10%増となった。また、他品目も加えた成分比較では、ビタミンCなど抗酸化作用を持つ成分が、還元水で育てた野菜の方が軒並み高かった。中でもニラは抗酸化力の指標が45%も高くなったとする結果が出た。

現場の農家も違いを実感する。南国市の野村種稔(かずとし)さん(61)は昨季、露地キュウリを井戸水と還元水で育てたところ、「味が明らかに違った。えぐみが消えた。20人ほどに食べ比べてもらい、同じ意見だった」という。

南国市内の女性(57)はゴーヤーで使用し、「花を付けて実になるまでのサイクルが通常は約20日間。それが15日ぐらいになった。たくさん採れて楽しかった」。南国スタイルの中村文隆専務も「最初はたかが水、と半信半疑。こんなに変わるとは、というのが率直な感想です」と驚く。

高知大学の石川勝美教授によると、差が出る理由は大きく二つあるという。植物が根から水を吸う際、電気的なエネルギーを帯びる還元水だと養分の吸収効率が上がることが一つ。これは実験で裏付けられた。

二つ目がストレスの緩和だ。「植物も呼吸時に酸化ストレスを抱える。だが(アルカリ性の)還元水はその発生を鈍化させる効果がある」と石川教授。「研究者の一人として、植物の可能性が広がることは楽しい」と顔をほころばせる。

高知県などは還元野菜の生産拡大とブランド化で「地域産業クラスター」の形成を目指す。機能性という「質」と、収量という「量」の両面で効果があるとされる還元水。農家が使う呼び水になりそうなのが、所得に直結する「収量増」の“看板”だ。トリムは整水機(最低価格約80万円)を投じても手取りが増す営農モデルも打ち出している。

ただ、高知県産地・流通支援課は「実証の余地が残っている」という。これまでの栽培は葉物が中心で、高知県の“稼ぐ品目”である果菜類の実績が少ないためだ。

その中で始動したのが、JA南国市のピーマンとパプリカのハウスだ。果菜類で厳格に収量比較する初のケースで、「ここで結果が出れば、関心を持つ農家も増えるのでは」と期待する。

一方、抗酸化性を売りにした販売は「そう容易ではない」というのが関係者共通の捉え方。実験室レベルでは確かに結果は出ているが、「実際の栽培環境はもっと複雑。市販の際にアピールできるようになるまでのハードルは高い」(高知県産地・流通支援課)。

ただ、トリム社が2015年、顧客向けに「還元野菜の詰め合わせ」をテスト販売したところ、200セットの予約は即日埋まり、調査では87%が満足と答えた。健康に関心を持つ層のニーズは高い可能性がある。

販売で中心的な役割を担う南国スタイルは、この層への販路開拓もにらみつつ、まずは地元で浸透を目指す。中村専務は「量と種類がそろってくれば、南国市内の直販所やレストランで売り出し、『還元野菜の里』として土台を固めていきたい」と話している。

水の電解 水素と酸素でできている水は電気エネルギーを加えると、プラス極側に酸化された水、マイナス極側に水素を含んだアルカリ性の水が発生する。マイナス極側の水が抗酸化性のある「電解水素水(還元水)」となる。




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