高知県日高村に絶滅?のカタツムリ 香川県の元高校教諭が発見

化石でしか姿が確認されず、絶滅したと考えられていたカタツムリを高知県高岡郡日高村の鍾乳洞、猿田洞付近で、香川県観音寺市の元高校教諭、矢野重文さん(65)が発見。新種と確認する論文を2016年11月に日本貝類学会誌に発表した。矢野さんは発見場所周辺について「生息に適した環境が今も残る貴重な場所」と話す。日本貝類学会の大越健嗣会長(東邦大理学部教授)は化石種が現存したことに驚くとともに、「国際的に発信する価値がある」と高く評価している。

発見したカタツムリは、石灰質の厚いふたを持ち、殻に小さな虫を背負っているような器官があるアツブタムシオイガイの一種。猿田洞に流れ込んだ約3万3千年前の堆積物から絶滅種とみられる化石が見つかったという論文が2012年に発表され、「サルダアツブタムシオイガイ(猿田厚蓋虫負貝)」と名付けられていた。

論文を読んだ矢野さんは、以前からムシオイガイの採集や研究をしている経験から「狭い範囲の石灰岩層で生息する特有の種もいる。環境が整っていれば生きている可能性もあるのでは」と考え、妻の昌子(しょうこ)さん(60)を誘って2014年1月に猿田洞を探索。直径数ミリの殻を探してヘッドライトとヘッドルーペを装着、「なめるように」見て回り、死殻を発見した。

2人は2014年3月、再び日高村へ。猿田洞と連続した石灰岩層に採集場所を変更し、地元住民に聞きながらたどり着いたのは竹林。石灰岩が散乱し、落ち葉が積もり湿気のある「生息に適した環境」だった。落ち葉をめくって慎重に探し続けたところ、色艶のある生きた個体を、昌子さんが見つけた。

矢野さんは「昼食も食べずに探していて、心がくじけそうにもなった。思わず『やったー』と叫んでしまうほど感激の瞬間だった」と振り返る。

自宅で詳しく調べると、2012年の論文に掲載された化石と特徴が一致。既に知られているアツブタムシオイガイと比較し、殻の直径が4ミリ前後と大きい▽殻の口が渦から離れる傾向がある―といった違いが確認できた。

サルダアツブタムシオイガイは、化石発見者が新種として学名を付けていなかったため、矢野さんが論文で改めて新種として発表。学名は第一発見者の名前「yanoshoko」を一部に入れ込んで命名した。

矢野さんは文系出身で地理を専攻。現在も地元高校の時間講師として地理を教える。幼い頃からの収集癖が高じて大学浪人中から貝を集め始め、次第に陸上の貝類の調査研究にのめり込んだ。これまでにもムシオイガイの新種発見に携わり、「まだ10種ぐらい候補がいる」という。

サルダアツブタムシオイガイの生きた個体は研究仲間に遺伝子解析を依頼しており、将来的にムシオイガイの系統樹と、ムシオイガイ全種をまとめたモノグラフ(論文)の作成を目指している。

日本貝類学会の大越会長は、「化石種が現在も生きていると考えられたことは今まであまりなく、現生種としての新種の発見であり、非常に面白い。他の場所でも貝に限らず、化石と思われていたものが生きているかもしれない。そうした新しい視点を提供した意味でも価値がある」と話している。




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