<ナマコ>密漁が九州に広がる 山口と長崎で自警団結成

高級食材として中国・香港などへ年間100億円超が輸出され、「海の黒いダイヤ」と呼ばれるマナマコの密漁が九州・山口各地に広がっている。全国有数の産地、山口県と長崎県では、密漁を防ごうと漁師たちが自警団を結成。旬を迎えた冬場は高値で取引されるだけに、深夜にパトロールを繰り返して警戒する。

「密漁船は電気をつけずにレーダーで航行する。エンジン音を聞いて探すしかない」

昨年10月23日夜、山口市の漁師、岡本秀敏さん(68)は真っ暗な海に浮かぶ漁船「漁秀丸」の上でつぶやいた。岡本さんが所属する山口県漁協吉佐支店山口支所(同市秋穂東(あいおひがし))の漁師10人で作る自警団の今季2回目の出船で、約2時間かけて浅瀬をパトロールした。

岡本さんは「1回の密漁で100万円分以上取って行き、見える所からナマコが一切いなくなる。体力的にきついが放っておけない」と双眼鏡をのぞき込んだ。

山口県水産振興課によると、密漁は数隻の漁船でグループを組み、船から空気を送る潜水器具を着用して実行することが多い。被害が広がり、山口市だけでなく防府市や周防大島町の漁師も自警団を組んでいる。

同課が目撃情報などをまとめたところ、山口県内の瀬戸内海では昨年1年間で84回の密漁があった。2015年も約90回確認されており、アワビやサザエも含めた年間の被害額を2億5000万円~3億円と推定する。担当者は「密漁船は時速約100キロで逃げるため、県の取り締まり船では追いつけない。光を照らして追い返すだけ」と話す。

徳山海上保安部(山口県周南市)などによると、11年以降、山口県内でナマコを密漁したとして逮捕・書類送検されたのは13人。密漁は他県でもあり、第7管区海上保安本部によると、長崎県内で14年1月と16年2月、それぞれ長崎市の漁師ら5人と、佐賀県唐津市の漁師ら3人が逮捕された。

密漁が相次いでいるため、長崎県の大村湾でも、地元の9漁協が自警団「大村湾海域漁場監視連絡協議会」を結成し、定期的に見回り活動をしている。関係者によると、密漁グループは産地を偽って国内市場で売ったり、海外に輸出したりしている。暴力団関係者が介在している疑いのあるケースもあるという。

ナマコの漁獲量は減少傾向にある。水産庁によると、全国211の主要漁港の取引量は15年、2009トンで11年(3396トン)より約4割減った。一方、1キロあたりの価格(平均取扱価格)は15年、2332円と11年(2203円)より上昇。乾燥ナマコの輸出額も11~15年は約97億円~約117億円で推移し、国内価格の上昇と海外での人気が密漁の背景にあるとみられる。

50年以上、乾燥ナマコを製造販売している菊本水産(山口県平生町)の菊本幸利社長(55)は「密猟では卵を持つナマコまで取られる。水揚げが全盛期の半分以下に減っている」と危機感を抱く。

◇マナマコ

色から赤、青、黒の3種類に分けられる。国内では北海道から南九州まで生息。水深100メートルまでの岩礁や砂場にいることが多い。赤は酢の物として国内で親しまれ、青と黒は主に乾燥ナマコとして中国・香港などに輸出される。水産庁は2006年まで全国の漁獲量を調査しており、06年は全国で1万344トン。このうち山口県は1005トンで北海道、青森県に次いで3位。長崎県は514トンで5位、大分県は260トンで10位。

◇過去50年間で個体数が6割減少

ナマコの減少は世界的にも問題になっている。各国や非政府組織でつくる自然保護ネットワーク「国際自然保護連合」が2013年、過去50年間で個体数が6割減少したとしてマナマコを絶滅危惧種(レッドリスト)に指定。これを受け、水産庁が野生動植物の国際的な取引を規制する「ワシントン条約」で指定される可能性があるとして調査中だ。

新しい動きもある。唐津なまこ産業(佐賀県唐津市)の峯治生(みねはるお)社長(64)は14年3月から、稚ナマコを海に放流する養殖に取り組む。大きくなるまで3、4年かかるが、100メートル前後しか動かないため管理しやすいといい、網を張らずに育てる。場所は密漁を警戒して漁港の近くだ。峯さんは「他の魚による食害も少ないので、量も計算できる。高齢者も参加でき、地域で利益を分け合える魚種になる」と期待する。




http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170110-00000001-mai-soci