<猫ブーム>不妊手術は本当にかわいそうなのか

捨て猫は大量に繁殖して、悲惨な死に方をします。この不幸の連鎖を止めるには不妊手術しかないのが実情ですが、「かわいそうだ」と二の足を踏む人も多いのです。だが、そういう人ほど、不妊手術がどんなものなのか、知らないのではないでしょうか。猫の保護活動を続けるジャーナリストの駅義則さんが不妊手術の現場を報告します。

◇新潟市で野良猫の一斉不妊手術

国内のあちこちに出かけ、野良猫の一斉不妊手術を無料で行っている団体がある。公益財団法人「どうぶつ基金」(兵庫県芦屋市)だ。

どうぶつ基金は、11月24、25日の2日間、新潟市で一斉不妊手術を行い、計59匹を手術した。今回の対象は、新潟市の東のはずれ、新潟東港釣り公園に住む猫たちだ。県の指定を受けている釣り場管理団体「ハッピーフィッシング」と、新潟の動物保護団体「あにまるガード」が、同基金に依頼して一斉手術が実現した。

11月25日。一斉手術の2日目に現場を訪れた。新潟市南西部の山すそにある、「あにまるガード」の活動拠点の小屋で手術が行われた。新潟東港の公園で捕獲された猫が、ケージや捕獲器に入れられ、車で次々と運ばれてきた。そのほとんどが子猫だった。

手術にあたるどうぶつ基金の獣医師は2人、それにあにまるガードのスタッフら数人が補助を行う。猫の不妊手術が可能になる目安は、生後半年以降か体重2キロ超とされる。ただ、医師の腕次第では、もっと早くても大丈夫だ。

◇捕獲器の外から麻酔を注射

まずはケージや捕獲器の外から、体格に応じた量の麻酔薬を数回に分けて注射していく。逃げられたりかまれたりしないようにするためだ。完全に麻酔が効いたら外に出す。

次に不妊手術の証しである耳カットを行う。地域や団体、医師によって先端を平らに切ったり、オスは右耳、メスは左耳の先を切ったりするなどの違いがある。どうぶつ基金の場合は性別を問わず右耳の先端をV字にカットする。その耳の形から、手術後の猫を「さくらねこ」と呼ぶ。

切った後ははんだごてを使って傷口を消毒。合わせて手術を行う下腹の部分の周囲の毛を、バリカンで注意深くそる。

手術の日は、朝から食事させないのが通例だ。全身に麻酔が効くと嘔吐(おうと)することが多く、胃に固形物が残っていると逆流してのどに詰まり、死んでしまいかねないからだ。一斉手術の場合は野良猫なので、そうした管理も難しく、ときには糞尿(ふんにょう)を漏らしている猫もいる。その場合は、腹をマッサージしてすべて排出させる。

いよいよ手術台に向かう。オスの場合はカミソリで睾丸の間に切れ込みを入れ、精巣ふたつを取り出して切除。メスは下腹部に消毒液を塗り、スプーン状の器具で子宮と卵巣を注意深くかき出して切り離す。傷口に薬を注入し、溶ける糸で縫合する。オスは数分、メスは10分もあれば手術が完了する。

◇漁師にも見守られる猫たち

不妊手術が終わると、一晩静養させた後、もとの港に放される。これから冬本番の新潟で、猫は大丈夫なのかとも思う。だが、あにまるガードの本多明代表によると、港の近くに液化天然ガス(LNG)施設があって身を隠すところがあり、冬場でも生きていけるという。漁師たちも売りものにならない魚を分け、猫たちを常に見守っているという。

次々に猫が手術を受けるそばで、県動物愛護センター主査の獣医師が手術の様子を熱心に動画撮影していた。名刺の裏には「新潟県動物愛護センターは毎日が譲渡会! たくさんの犬や猫が新しい飼い主を待っています」との文字と、猫の写真が印刷されていた。

センターは、保護している動物の情報をインターネットで詳細に見られるようにしている。その情報に携帯電話ですぐアクセスできるよう、名刺の表にQRコード(二次元バーコード)が。ここまでの情報が記載された名刺は初めて見た。「新潟県は動物の愛護意識が高いですよ」との言葉に納得する。

どうぶつ基金は全国で出張不妊手術を行っている。NHKの「クローズアップ現代+」で11月半ば、大量繁殖した猫が飼い主の手に負えなくなる「多頭飼育崩壊」が取り上げられた。その番組でも、この団体が80匹の不妊手術をした例が紹介された。




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