お坊さんがキューピッド役 善男善女 寺コンが救う

葬式や法事といったイメージが強いお寺に、婚活中の独身男女が殺到している。僧侶が仲を取り持つその名も「寺コン」。「誠実な人が来そう」「親身になってくれる」。そんな期待や優しく人生を説く法話が、特に婚活疲れした女性たちの心をつかんでいるようだ。

「色即是空(しきそくぜくう) 空即是色(くうそくぜしき)」-。十月初めの土曜日、東京都台東区の臨済宗妙心寺派寺院「天龍院」に般若心経が響き渡った。

唱えているのは婚活中の二十~四十代の男女約六十人。本堂で北折真一住職(46)が「今日という日は二度と戻らない。お寺で縁を強く結んでほしい」と語り掛けると、真剣な表情で聞き入った。

寺コンは臨済宗の若手僧侶の有志でつくる「吉縁会」が企画。同会事務局長で龍雲寺(浜松市)の木宮行志副住職(38)が婚活中の友人の悩み相談に乗ったのをきっかけに、静岡県の寺院と協力して二〇一〇年に始めた。

天龍院の寺コン参加者の平均年齢は三十四歳で、男性の倍率が三倍に対し、女性は五倍と高め。事務職の女性(39)は「周りは既婚者ばかりで出会いが全然なくて…」。北陸地方に住む母親から「死ぬまでに孫の顔が見たい」とプレッシャーがかかる。結婚相談所は五十万円以上かかるため断念し、三千円程度で参加できる吉縁会をインターネットで見つけた。「もう他に頼るところがない。お寺なら親身になってくれると思い応募した」

派遣社員の女性(37)は「ネット婚活は友人が結婚詐欺に遭ったので怖い。お寺は真面目な人が来そう」と期待する。

一緒に水引を作った後、一対一で話す時間が設けられた。最後に別室で、気になる異性の名前が書かれた封筒にメールアドレスを書いたカードを入れる。気に入った相手には後でメールを送る方式だ。

恋人いない歴十年という男性会社員(35)も「気弱なのでメールで始められるのはありがたい」と封筒にカードを入れた。

一五年の出生動向基本調査によると、十八~三十四歳の未婚者のうち、交際相手がいない人は男性の七割、女性の六割。一方で、いずれは結婚する意思がある人は男女とも九割近くに上り、理想と現実との溝は深い。

「婚活難民」の著者、にらさわあきこさんは「お見合いやネット婚活、パーティーなどは容姿や年齢、年収が重視されがちだ。寺コンは条件で選び選ばれる婚活に疲れてしまった三十代以降の人の希望になっている」と分析する。

吉縁会には現在全国八百寺院が携わり、静岡、東京、愛知、岐阜で開いたほか、十一月に大分で初開催。「人助けが目的」だが、全国の僧侶から「寺コンを檀家(だんか)減少や財政難の解消につなげたい」との相談もある。

同会の木宮事務局長は「寺と疎遠な二十~四十代も私たち僧侶を信頼してくれている。自分の心を見つめる婚活は実は仏教との相性がいい」と自信を見せた。




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