大手スーパー、コンビニが参入する「買い物弱者700万人」市場…移動スーパー全国に拡大

過疎地や郊外に住む高齢者が普段の買い物に困る「買い物弱者」の増加で、移動スーパーが全国で拡大している。食料品や日用品を専用車両に積み込む移動販売は決まった日時に巡回し、地域の見守り役も担っている。高齢化が進む国内では、さらに移動販売の需要が高まるとみられ、スーパーやコンビニエンスストア大手も台数を増やし、事業を拡大している。

雨が降りしきる中、日本有数の高齢化団地がある東京都板橋区高島平で11日、移動スーパー「とくし丸」の出発式が行われ、14日から移動販売をスタートした。板橋区の坂本健区長は11日の出発式で「高島平の高齢化は大きな課題で、安心して暮らせる地域にしたい」とあいさつした。

昭和47年から入居が始まった高島平団地は65歳以上の高齢者比率が4割超を占める。板橋区全体では2割程度だが、高島平団地は2倍以上あり、単身世帯が多いのも特長だ。以前は近くに個人商店がいくつもあったが、大型スーパーに顧客を奪われ、「商店街もなくなった」(高島町会の広瀬佐平会長)。車を持っていない高齢者は、遠くのスーパーまで、わざわざタクシーを利用するか、歩いて買い物に行かなければならないのが実情だ。

5~10年後には、75歳以上の足が不自由な高齢者が増えるとみられ、板橋区は地元の中小スーパー、よしや(東京都板橋区)に移動販売の派遣を依頼した。

よしやは2年前に移動スーパーを展開する、とくし丸(徳島市)と業務提携した。すでに高齢者が多い他の板橋区内の地域で移動販売を行っている。400~500品目を取り扱い、訪問した際に、高齢者が欲しい商品を聞き、次回に届けている。

「買い物に行けない高齢者は意外に多く、週2回のペースで回り、利用者は着実に増えている」(よしや店舗運営本部の田中文吉マネジャー)という。また、板橋区と高齢者の見守り協定を結び、販売スタッフは顔見知りの高齢者との会話を大切にし、問題があればすぐに対応できるようにしている。

よしやが提携する、とくし丸は24年に移動スーパー事業を開始し、現在は全国37都府県で計160台が生鮮食品や日用品を販売する。中小スーパーから商品供給を受け、移動販売は個人事業者が行う仕組みで、年内には計200台に増える見込みだ。

都内では、新宿区のスーパー丸正食品チェーンとも業務提携している。高島平団地同様に高齢者の比率が高い同区の戸山ハイツで移動販売を行っている。都内でも郊外に行けば、買い物弱者の数は多く、移動スーパーの利用が年々広がっているという。

買い物弱者の増加で、大手から中小のスーパー、コンビニ大手も移動スーパー事業に参入している。イトーヨーカドーは、北海道や長野県、福島県いわき市、岩手県花巻市、東京の多摩ニュータウンなど全国5店舗に5台の移動販売車を配置している。3トントラックのため、食料品だけでなく、日用品などの品ぞろえが豊富なのが特長だ。イオンも3~4トントラックを保有しており、東北や山口県の2つのエリアで展開する。11月17日には、千葉市花見川区で買い物支援として、一回り小さな移動販売車の運行も開始した。また、千葉県千葉北警察署と「地域の安全確保に関する協定」を締結した。

一方、コンビニ大手ではローソンが11月から移動販売車の設置を始め、来年3月末までに計16台にする。4種類の温度帯に対応させた専用車両で、食料品や日用品など約300品目を取り扱う。11月から静岡県伊豆市でサービスを開始。青森県十和田市、神奈川県川崎市、北海道、九州などで順次、移動販売を始める。すでにセブンーイレブンは、1都20県で計35台を配置し、「セブンあんしんお届け便」として展開している。ファミリーマートも1都10県で計18台が移動販売を行っている。いずれも需要に応じて、台数を増やしていく方針だ。

経済産業省は国内に700万人の買い物弱者がいると推計している。高齢化の進展で、さらに増えると見込んでおり、今後も移動スーパーの役割は、ますます高まりそうだ。




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