遺言代用信託で相続トラブル防ごう 計画的に家族に財産 自身で受け取りも

本人が死亡した際、家族らへの財産相続が簡単な手続きで行える「遺言代用信託」が注目を集めている。高齢化が進み、相続への関心が高まるなか、遺言書を作成しなくても、相続トラブルを防ぎ、計画的に家族に財産を残せることから人気が高まっているようだ。

遺言代用信託は、本人が生前に家族らを受取人に指定したうえでまとまったお金を金融機関に預け、本人が亡くなったとき、家族らが簡単な手続きで受け取れる信託商品だ。

通常、銀行預金は口座の名義人が亡くなると、その口座は凍結される。預金を引き出すには、口座の名義を変更するか、解約しなければならず、これらの手続きには故人の出生から死亡までの戸籍謄本のほか、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書をそろえるなどの手間がかかる。

家計相談などを手がける「生活マネー相談室」代表で、ファイナンシャルプランナーの八ツ井慶子さんは「故人の口座が凍結されてしまい、葬儀費用や当面の生活費など、すぐに必要なお金に困る、といった相談は増えている。相続権のある遺族全員が協力できればいいが、そうならない場合も少なくない」と話す。

遺言代用信託では、死亡診断書や信託証書などがあれば、速やかにお金を受け取れる。また元本保証で、信託管理手数料が無料という商品が多く、生前に相続人や銀行と話し合ってお金を託すことで、計画的に財産を継承できるメリットがある。受取人を明確にして財産を残せる点では生命保険も有効だが、高齢者や持病のある人は加入しにくい。一方で、遺言代用信託には契約時に一定の資金が必要になる。

遺言代用信託は、資金を預けた人(委託者)が亡くなった際に、遺族が一括で受け取る一時金型と定期的に決まった金額を分割で受け取る年金型があり、双方を組み合わせることができるものもある。

三菱UFJ信託銀行(東京都千代田区)が平成24年から取り扱う「ずっと安心信託」は、遺族だけでなく委託者自身が、生前の希望する時期から、定期的に決まった額を受け取れるサービスがある。例えば年金の振り込みがない月に、年金代わりに受け取るといった使い方ができる。そのうえで家族にも資金を残せる柔軟性などが好評で、契約件数は業界トップという。

一方、オリックス銀行(港区)が昨年11月から販売する「かんたん相続信託」は、電話と郵送で申し込める通信販売型。信託銀行の店舗は大都市に多いため、地方に住む人や高齢で店舗に出向くことが難しい人には便利だ。委託者が亡くなった際は、電話で支払い請求書を取り寄せ、死亡診断書や受取人の本人確認書類などを送付。受取人本人であることが確認できれば、5営業日以内に信託金が一括で振り込まれる仕組みだ。

遺言代用信託の契約件数は、ここ数年で急増している。信託銀行などでつくる一般社団法人、信託協会の調査によると、平成21年度はわずか13件だったが、商品数が増え始めた24年度から増え、27年度末には13万件を超えた。取り扱う銀行の増加や、昨年1月の相続税の最低課税額引き下げに伴い、相続への関心が高まったことなどが背景にあるという。

八ツ井さんは「高齢化で相続に関連する金融商品のニーズは今後も高まる。自身や家族に適したものを選ぶにはそれぞれの特徴を知ること、家族と話し合うことは大切」と指摘。「配当や利回りなどの条件だけでなく、相談にきちんと応じてくれる安心感も重視して」と話している。




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