接骨院で無資格施術 警視庁が情報収集 療養費、不正請求疑い

接骨院で柔道整復師の資格を持たない学生による無資格施術が横行していることが2日、関係者への取材で分かった。東京都荒川区の接骨院では、無資格の学生が施術した上、不正に健康保険から支出される療養費を請求していた疑いが浮上し、区が調査に着手。警視庁も情報収集に乗り出した。養成学校の乱立で“質の低下”を指摘する声もあり、専門家は「抜本的な改革が必要」と話している。

◆教え子に「依頼」

「荒川区内の接骨院で無資格施術と不正請求が行われたという申し出を受けた」。区の担当者はそう話す。申し出たのは柔道整復師養成学校の卒業生で、学生時代に実際、接骨院で施術を行っていたという。

区によると、接骨院を経営するのは区内の柔道整復師養成学校で非常勤講師を務める男性。少なくとも平成24年以降、自らの接骨院で学生に無資格施術をさせていたという。

昨秋には学生を名乗る従業員から施術を受けた男性患者方に、同院で健康保険が適用された記録も届いていた。「接骨院側が有資格者の施術と偽り、保険請求をしたとみられる」(区関係者)

区は警視庁荒川署に情報提供。荒川署も不正請求の可能性があるとみて情報収集に乗り出した。

◆助手の実態は…

柔道整復師法では、無資格で業として柔道整復の施術を行うことを禁じている。だが、複数の接骨院経営者は「無資格施術と不正請求は横行している」と異口同音に話す。

「接骨院 助手募集」。柔道整復師の学校には、こんな求人広告が至る所に貼られているという。名目は「助手」だが、都内の接骨院経営者は「実際には柔道整復の施術を任せられることが多い」という。

経営者にとっては安い人件費で雇える一方、学生側は実習ができ、経験を積める。「いわば双方にメリットがあり、発覚しづらい」とこの経営者は証言する。

学生でも仕事がこなせるのには訳がある。「骨折などの施術ではなく、体をもむだけのマッサージをしているためだ」と指摘するのは明治国際医療大学の長尾淳彦教授(柔道整復学)だ。

マッサージは、基本的に健康保険の請求が認められない。「ところがマッサージでも柔道整復の施術と偽り、堂々と請求されている」と長尾教授は憤る。

◆受領委任を悪用

一連の不正を下支えしているのが、患者に代わって接骨院が健康保険組合に療養費を請求できる「受領委任」制度だ。

患者側は煩雑な保険請求を行わないで済むメリットがあるが、水増し請求や架空請求がしやすいとされる。

相次ぐ不正を受け、厚生労働省は年度内にも省令を改正し、柔道整復師の養成課程と療養費の請求の在り方を見直す。学生には倫理教養を義務付けた上で、臨床実習も強化。不正請求の監査体制も強化する。

改革の狙いは「質の確保」だ。10年度に全国で14校だった柔道整復師学校は規制緩和で27年度に109校にまで急増。柔道整復師の就業者数も約6万4千人と10年前の1・8倍になっている。

長尾教授は「学校の数が急増したことで、モラルのない柔道整復師が増えた。今求められるのは学校と学生の質の向上だ」と話している。




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