期待高まる「事業所内保育」 5万人受け皿へ政府助成

企業が従業員向けに開設する事業所内保育施設が、女性の活躍推進や待機児童解消の切り札として注目されている。政府は本年度「企業主導型保育事業」を新設し、2017年度末までに5万人分の保育の受け皿拡大を目指している。

「子連れで出勤できる託児所付きの求人は再就職の大きなきっかけになった」。藤枝市のスーパー田子重清里店のパート職員、土屋里奈さん(26)はことし1月の開設当初から、店舗敷地内にある事業所内託児所に長女(1)を預けて働いている。以前から短時間の仕事を探していたが、保育園に空きがなく、再就職に踏み切れていなかったという。

静岡県中部を中心にスーパーを展開する田子重(焼津市)の事業所内託児所は同店の施設が初。同社のパート女性の大半が40~60代の中、子育て世代の女性採用強化に向けて開設した。店舗と同じ365日営業で、普段は幼稚園に通う子どもでも利用できるようにした結果、20~30代の求職者が多く集まった。

しかし、ネックとなるのが運営費だ。厚生労働省の助成金を利用しても会社負担は年間1千万円超と見込まれる。「両立支援にはつながるが、採算面で保育所の拡充は厳しい」と曽根誠司社長が考えていた矢先、政府が打ち出したのが企業主導型保育事業だ。同社は現在、整備費や運営費の補助を認可並みに受けられる同事業を活用して、2施設目の保育所を整備したいと検討している。

内閣府は今月末にも、企業主導型保育事業の第1次助成対象を公表する。全国で5万人の受け皿拡大に向けて申請の受け付け中で、「制度に乗じて保育所を整備したいという企業からの相談が相次いでいる」と、企業から委託されて保育所を運営する会社の担当者は話す。

一方、受け皿拡大に合わせて、「保育の質」の確保も課題となる。静岡経済研究所の岩間晴美研究員は「事業所内保育所充実は、社会全体の受け皿拡大につながるが、保育士不足の現状は深刻。保育士の処遇改善策も並行して行われるべき」と強調する。

事業所内保育所は、職場の実態に合わせた保育サービスを実施できる点で人員確保につながる。育休中の社員にとっても、待機児童とならずに復職しやすいメリットがある。

2015年に静岡市駿河区の静岡済生会総合病院が開園した「なでしこ保育園」は、年度当初に、育休中の医師や看護師の復帰予定表を作成。年度途中でも職員が安心して復帰できるよう、人員配置などを調整している。夜間保育日も週2日設け、1日1~5人が利用している。

同保育園は、近隣の医療従事者や地域の子どもも受けている共同利用型院内保育所。子ども子育て支援新制度の事業所内保育所として認定され、補助を受けているが、同病院の負担は年間約3千万円超。しかし、杉原孝幸事務部長は「経験を積んだ看護師が子育てを理由に離職する方が大きな損失。安心して働き続ける環境を整えたい」と話す。

<メモ> 企業主導型保育事業 

2016年4月に成立した改正子ども・子育て支援法に盛り込まれた。従業員以外の地域の子どもを受け入れなくても運営費が支援される。施設を新設する場合には、整備費の75%程度が助成される。5万人の受け皿拡大を目指し、一般企業などが負担する「事業主拠出金」を引き上げて財源に充て、今後2年間で835億円を投じる。




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