<埋設図不備>新築の下に汚染土 福島の会社員「市に責任」

「いいかげんな図なら無い方がまし」。東京電力福島第1原発事故に伴う住宅除染を巡り、福島市が作製した汚染土埋設場所の見取り図が誤っていたため汚染土の上に自宅を新築してしまった会社員は怒りをあらわにした。市は今も責任を認めず、汚染土除去のめどは立っていない。

福島市の会社員、大槻真さん(37)夫妻は2013年11月、JR福島駅から北2キロほどの約300平方メートルの更地を買った。敷地内に汚染土が埋まっているのは織り込み済みだったが、原発事故の避難者による住宅購入の影響で不動産価格が上昇する中、比較的安いのが魅力だったという。

前の土地所有者から市の文書「モニタリング票」を渡され、そこには除染前後の放射線量の測定値とともに埋設場所の見取り図が添付されていた。その埋設場所を外し、自宅を新築。土地より建設費用がかさんで30年の住宅ローンを組んだが、ようやく手に入れたマイホームだった。

暗転したのは昨年10月。汚染土回収のため市の委託業者が敷地内を掘り返すと、汚染土を詰めたフレコンバッグが北東部の玄関ポーチや風呂場の下に入り込んでいた。

見取り図の埋設場所とずれており、市に抗議すると「モニタリング票は除染による線量低減を伝えるもので、見取り図は目安に過ぎない」と取り合おうとしなかった。妻は一時、心労で体調を崩したという。

夫妻は納得できず、除染業者が撮影した作業写真などを個人情報開示請求で入手できないか考えた。

市は「除染は前の所有者の時で(夫妻は)当事者ではなく請求権がない」と拒否。それでも人づてに野党の国会議員に頼んで今春の国会で取り上げられると、市は一転して請求を認めた。

夫妻は5月10日、写真などの開示を受けた。これで全資料かと問われた市の担当者は少し言いよどんだ後、「(別途、汚染土の)保管届け出書がある」と明かした。

驚いた夫妻は再び情報開示を請求。2週間後に開示された書類の中に、別の見取り図があった。そこには、最初の図にはなかった埋設場所の寸法が記されていた。二つの図を重ねると、寸法の入った図の埋設場所は寸法のない図より敷地の中央寄り(建物寄り)にずれていた。

2枚の見取り図について市は「それぞれ環境省の除染ガイドラインと放射性物質汚染対処特別措置法に基づくもので根拠が異なる」と説明。最初の図の誤りは認めたが責任は認めず、「建設業者が連絡してくれれば」と責任転嫁のような発言をしているという。また「早く運び出したい」としながら具体策は示していない。

夫妻は「責任を認めて謝るどころか敷地内の状況を調べようともせず、情報開示にも後ろ向きで、極めて不誠実だ」と憤っている。

汚染土の現場保管を巡り福島市が寸法のない見取り図を住民に渡していたのは、環境省の除染ガイドラインが短期保管を前提に図面の作製を規定していないことも大きな要因の一つとみられる。

除染により福島県内で生じる汚染土は最大2200万立方メートルと推計され、国は双葉、大熊両町に整備している中間貯蔵施設に運び込む予定だ。現場保管や仮置き場での保管は3年程度としていたが、中間貯蔵施設は地権者の反発などで整備が遅れ、現場保管などは長期化している。このため除染済みの土地への住宅建設に向け、建設業者などから埋設場所の問い合わせや詳細な図面の請求が増加しているという。

だが、環境省のガイドラインは除染前後の線量測定を自治体に求めるだけで、作図を含めて土地所有者への通知規定がなく、自治体の対応はばらばらだ。福島市は毎日新聞の取材後、ようやく寸法入りの図への切り替えを検討し始めた。

一方、福島県内のある自治体は、保管の長期化を予測し、埋設場所を明確に示した方がいいと考え、当初から寸法入りの図を住民に渡していたという。自治体がどれだけ住民目線で対応を考えているかも問われている。




http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20160829k0000m040114000c.html