コストコの全員時給制の背景にある同一労働同一賃金 日本で浸透するか?

コストコが、アルバイトのみならず管理職以外の正社員にも全員時給制をとっていることで注目されています。その理由は、時給金額が全国で統一され、賃金が高水準であることです。

コストコは、アメリカ発祥の大型会員制の倉庫店という特徴をもっています。時給水準が高い理由として、アルバイトでもかなりの重量の商品を運ぶ業務があり、ハードワークであることがあるようです。人材の応募を集める戦略として、他社よりも高水準が模索されたものと考えられます。

とはいえ、これまでの日本型企業にはみられない抜本的な制度であることは確かです。背景には、「同一労働同一賃金」の思考があるようです。

同一労働同一賃金の問題は、先の参議院選挙において、多くの政党が「同一労働同一賃金」を公約にあげていました。2016年3月23日から、政府の「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」において活発に議論されているところでもあります。

従前から、同一労働同一賃金は議論として浮上していますが、果たして現実的に実現可能なのかは疑問視されてきました。コストコの制度が浸透していくのか、同一労働同一賃金の問題を含めて考えたいと思います。

同一労働同一賃金は、職務の内容が同一または同等の労働者に対しては、同じ賃金を支払うべきという考え方です。そこで、前提として、これまで日本企業で浸透してきました、年功や職能の属性基準と異なる職務の同一・同等を図る適切な尺度が必要になってきます。

同一労働同一賃金は、コストコの例のように、正規従業員と非正規従業員の待遇格差の是正にあると言われていますが、アルバイト、パート、正社員、限定正社員など、まさに多様な勤務形態が普及している中で、職務内容を図る統一的な尺度を構築することは、企業にとって高いハードルになることが予測されます。

また、「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年6月2日閣議決定)では、「正規か、非正規かにかかわらない均等・均衡待遇を確保」と謳っており、職務内容の同一等による同一の賃金という厳密なものではなく、「均衡」を目指していることが窺えます。

仮に、同一労働同一賃金が制度として企業の労務実務に組み込まれた場合、「均衡」がとれているのか否かが、紛争の種となることも予想されるところです。非正規従業員は、法的救済を求めにくい、キャリアアップ・能力開発の機会に恵まれていないなどの状況を踏まえますと、企業労務が混乱することも考えられます。

さらに、根本的な問題として、小零細企業の多くは、人材募集の際の賃金水準を最低賃金ぎりぎりに設定しなければならない経営状況にあることも事実です。

地方は都心部と異なり、最低賃金の水準が低く、賃金も低い傾向にありますから、コストコのような制度は、現実的に困難かと思われます。仮に、コストコの制度を導入した場合に、賃金水準の高い従業員に合せて設定することは、人件費の増加に結びつくこともあり得るため難しいところです。

他にも、紛争解決の際に、賃金同一(均等・均衡)の立証責任や疎明の問題、企業単独で、相対的な職務評価を適切に実行しにくいなどの問題も考えられます。

先の検討会においては、ガイドラインの策定なども掲げられているところですが、大多数の企業において、自社の職務とリンクさせてコストコのような制度を導入することは容易ではないと考えられます。

しかし、コストコの思考は、先駆者的な役割を果たしていると言え、同一労働同一賃金と併せて今後の日本における受け入れ態勢をみていく必要があります。




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